第148話 人生いろいろ
仕方ないから今日2回目の「エッヘン」で二人を黙らせてゲーム再開したのだが・・・何故か結婚後、俺の方が絶好調になりお金がどんどん増えていく。しかも株やお宝グッズもどんどん手に入るし、ウハウハだあ。
藍も唯もランクアップして更に高給取りになったけど、何故か急に不幸な事が続いてるし、しかも『生命保険』とか『自動車保険』とかを持ってないのに怪我とか交通事故を起こすから出費も増えている。俺の方は子供が増えすぎてこれ以上は乗せられないから仕方なくピンを横にして乗せている程で毎回二人から出産祝いを受け取っているのに、二人とも子供はゼロだ。だから藍は「アユさんも拓真君の子作りに付き合いすぎて腰を痛めないかしら?」とか皮肉たっぷりに俺を揶揄う始末だが、唯は笑って誤魔化すしかないようだ。
特に唯の凋落ぶりが目立つ。まるで十代、二十代の頃は飛ぶ鳥を落とすほど勢いがあった超人気女優が結婚を機に潮目が変わったかのように人気が落ちて行ったようだ。藍の方は給与収入、臨時収入以上に派手な出費や突発的なイベントでの出費が目立ち始めて、二人共ジワジワと資産を減らし始めている。唯の方に少し焦りが出てきて、ゲームなのに結構気合を入れてルーレットを回している。
「おりゃあ!・・・えーと『5』だから・・・なにい!税金の滞納を指摘されて追徴金70万ドルってどういう意味なのー。今月のお給料全部パーどころか大赤字じゃあないの!マジで勘弁して欲しいわよ」
「あらあらー、唯さんも最近は不幸続きねえ。そんな事では私に追いつかれるわよー・・・えーと、私は『6』だから・・・はあ?詐欺の被害に遭って80万ドル失うってどういう事なの!勘弁してよお」
「じゃあ、次は俺だな・・・『6』か・・・なになに、子供手当が出た。子供一人につき2万ドルってことは16万ドルゲットだぜ!いやあ、お二人さん、すまないねえ」
だが、いくら俺が後半好調とはいえ、前半の差が総資産の差になって逆転は厳しい状況だ。唯は既にトップでゴールインし、1着賞金を手にしたうえで高見の見物だ。藍は「ゲームだから一発逆転の勝負はしないわ」と言ってあっさりゴールし、総資産で唯を下回ったまま2位に甘んじている。となると、俺も3位のままゴールして・・・いや、それでは面白くない!ゲームであるからこそ最後の勝負だ!!
「唯、俺は最後の勝負に出るぞ!」
そう宣言して俺は最後の最後にギャンブルエリアに入った。俺が選んだギャンブルは・・・オーソドックスにカジノのルーレットだ!
唯を逆転するには・・・ほぼ持ち金の全てを賭けてルーレットで10倍に増やせば・・・これなら逆転だ!俺の狙いの数字は末広がりの『8』!ここに止まれば俺の逆転勝利だ!
「どりゃあ!」
俺は気合を入れて回し始めた。藍はクールな目をしてルーレットを見ているが唯は興味津々とルーレットを見ている。
徐々にルーレットが遅くなっていく・・・『2』『3』『4』・・・もうちょっと、もうちょっとだ、まだ止まるな・・・『5』『6』『7』・・・よし、止まれ!『8』・・・ルーレットが止まりそう、いや『9』に行きそうだ。頼む、止まってくれ!
ルーレットは針に引っかかるような状態で、針の先端が『8』と『9』の間くらいで止まったが、針先は『8』に入っている!
やった、これで俺の勝ちだ!!
”ドン!”
あれ?・・・今、床を叩いたのは・・・えーーーー!!!今の衝撃でルーレットが動いて『9』になっている!!
「おーい、誰だあ、ワザと床を叩いたのは?」
俺は藍と唯を見たが二人共俺に視線を合わせる事なくわざと口笛を吹いて斜め上を見ている。これじゃあどっちが犯人か分からないぞ。
「あらー、拓真君も運がないわねえ。きっと地震よ」
「そうそう、今のは地震ね。自然災害に文句を言っても始まらないわよ。それに『地震保険』はゲームに無いわよ」
そう言って二人は顔を見合わせてニコッとしている。
や、やられた・・・この二人の連携プレーで俺は結局最下位確定だ。
「まあ、仕方ないかあ。これはゲームだからな」
そう言って俺は最下位のままゴールし、最終的に開拓地送りになる事だけは避けられたが、ほぼ資産ゼロの状態だ。これがリアルだったら悲しいがゲームだからいいかあ。
「たっくん、今日は楽しかったよ。また何かのゲームを三人でやろうね」
「そうね、たまにはいいかもね。あ、でも、あんまりイチャイチャしすぎないでよ」
「はいはい、俺も気を付けるよ」
「たっくん、じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
そう言って俺は藍と唯と別れた。
今日は朝から色々あった。それでもある意味俺はホッとした。藍と唯も何とか仲直りしてくれたようだし、何より、俺の人生も破滅寸前だったのが回避できた。
まさに『人生いろいろ』。俺のリアルの人生はこれからもゲーム以上に波乱含みの展開になりそうだな。
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