第144話 仲直りのボードゲーム
唯が差し出したのは『人生いろいろゲーム』だ。俺が幼稚園か小学校1年生の頃に買ったボードゲームだが、客間の押し入れに入ったままになっていたのを藍か唯が見つけて持ち出してきたんだろうな。
「そうだなあ、たまにはいいかあ」
そう言って俺も賛成し、俺の部屋で『人生いろいろゲーム』をやる事になった。
『人生いろいろゲーム』も最近は色々な物が出ているし、年々趣向を凝らした物が出て根強い人気を誇っているみたいだが、二人が気にしてないなら俺も問題ない。それに、多分最初に言い出したのは唯だ。恐らく唯が俺にも藍にも迷惑を掛けたから、その意味でも、また仲直りの意味でもボードゲームをやろうと言い出したのは容易に想像がつくから、黙って唯のやりたいようにさせてあげるのがいいと思った。
このゲームは先にゴールした方が勝ちという訳ではない。最終的な所持金が多い人が勝ちだ。途中のポイントでどういう選択をするのかでも変わるし、ルーレットの数によって決まる場所もあるから運にも左右される。
俺の駒ともいうべき車の色は青で唯は黄色、藍は赤の車だ。最初は一人しか乗ってないから、俺の車には青いピン、つまり男しかいないし、藍と唯の車には赤いピン、つまり女しかいない。
このゲームは銀行家が必要だが、藍も唯も俺がやるように言ったので最終的にこれは俺がやる事になり、俺は銀行家兼プレーヤーだ。誰から始めるかはルーレットの出た目の多い順にやろうという事になり、俺から回したがいきなり『1』を出したから藍と唯に大笑いされた。結局、藍が『5』、唯が『7』を出したから、唯→藍→俺の順番で進める事になった。
「じゃあ、唯からいくわよー」
そう言って唯がルーレットを回し、『4』が出たので唯は車を4マス進めた。
「えーと、なになに・・・迷子を家に送り届けたらご褒美に500ドル貰えた。ラッキー!」
「じゃあ、次は私ね。えーと『6』だから・・・テストで満点を取って褒められ1000ドル貰えた。あらー、まさに私ね。誰かさんとは大違いね」
「悪かったな。どうせ俺は藍にも唯にも遠く及びませんよーだ」
「たっくーん、ゲームとリアルをくっつけて僻んでも仕方ないから早くルーレット回してよー」
「はいはい・・・また『1』かよ!・・・えーと、寝坊して学校に遅刻して親に怒られた。500ドル支払う。なんだこりゃあ!?」
「あー、拓真君、いい加減にお義母さんに起こしてもらう癖を直しなさいよー」
「そうだそうだ、高2にもなって自分で起きれないなんて最低だぞ」
「はいはい、すみませんでしたあ!」
とにかく俺は運が悪すぎる。駒の進み方が遅いだけでなく、悪運続きとしか言いようがないほどで出費が膨らむ一方だ。まるでリアルでの悪運続きをゲームにも引きずっているようだ。それに引き換え唯は絶好調でリアルでの悪運続きを取り戻すかのように支払いが無い好調ぶりだ。藍は良くも悪くも普通だが少しずつ増えていき、堅調といったところだ。
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