第138話 答えが見付からない

 俺は唯が部屋を出て行った後、とりあえずTシャツだけは新しい物に替えたが、その後はずっと一人で考えていた。

 お互いの合意があったとはいえ、俺は唯の将来の可能性を潰したのではないか?俺の軽はずみな行動が唯の人生を目茶苦茶にしたのではないか?そう思うと頭がフラフラしてきた。

 いや、唯だけではない・・・この状況を父さんと母さんに打ち明けた時に、この二人はどういう反応をするだろうか・・・怒るかな?いや、間違いなく怒るだろうな・・・俺のこの後の高校生活がどうなるか想像も出来ない。俺自身も自主退学を選ばなければならないかもしれない。いや、間違いなくそれしかないだろう。

 それと・・・藍はどうなる?

 藍はと信じてるから今でも自分を見失わないでいられる。でも、その俺が唯を選んだとしたら、しかも俺の子を宿していると知ったら、藍はその場で壊れるかもしれない。


 俺は本当に唯が好きなのか?

 最近はずっと考えているが、唯は俺がいる事で安心感を、いや、間違いなく今の唯は俺に依存しているような気がする。

 だが、俺は逆に唯との関係に疑問を持ち始めている。正直に言うが、唯を抱いたのはあの時の1回だけでない。先週の土曜日の夕方と日曜の午前にも・・・その時に唯は「自分の中にある不安感を払拭したいから」俺を求めているんだって俺の腕の中で言っていた。でも、先週の時もそうだったが俺は唯を抱くと不安感に襲われるのは一体何故だ・・・一方ではやりたいと思っている俺がいるけど、もう一方では怖いという俺がいるのは間違いない。

 俺は唯の誘いを断る事が出来ないのに、怖がっている理由が分からないから余計に不安になる。俺は本当に唯が好きで付き合い始めたのか、という所にまで遡ってみても答えが見付からない。

 いや、俺が安心感を得られるのは・・・駄目だ、この事を言ってはいけない、それを言ったら俺は俺自身を止められなくなる・・・確実に佐藤きょうだいは崩壊する!


 そう考えると、俺は全然寝付けれなかった。日付が変わるくらいまではずっと天井をみたまま考えていたが、いつの間にか俺は寝ていたようだ。ただ、眠りは非常に浅かった。全然寝たような感じはない。むしろ、ずっと起きていたかのような感じだ。


 ただ、もう6時だ。そろそろみんな起きているはずだ・・・俺も起きよう、そう思って俺は起き上がり、下へ降りた。

 降りたら丁度藍がパジャマのままコーヒーを片手にテレビを見ていた。たしか今日の父さんと母さんは休みだから朝はノンビリするような事を言ってたからまだ起きてこないのも不思議ではない。それでも間もなく起きてくるとは思うが・・・まあ、藍がこうやってコーヒー片手にここでテレビを見てるのは普段の休日の朝の風景だから別におかしくない。ただ・・・唯はいなかった。

 藍は俺が来たことに気付いて

「あら、おはよう。珍しいわね、休みの日なのにこの時間に一人で起きてくるなんて」

「い、いやあ・・・昨夜はちょっと寝苦しくて・・・」

 いや、これは嘘だ。本当は唯から衝撃の内容を告げられたのでよく眠れなかったというのが正しいが、これを言うと藍に追及されそうだったから俺は嘘をついた。

「・・・拓真君、ちょっといいかしら?」

「ん?・・・何か相談か?」

「まあ、相談と言えば相談だけど・・・唯さんの事で」

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