第136話 えーーーーーーーー!!!!!!!!

 そう言うと唯は話し始めたが、ますます悲壮感漂う顔になってきた。

「・・・もしかしたら気付いたかもしれないけど、今日、お姉さんには、ううん、みんなにも先生にも本当の事を言えなかった・・・」

「本当の事?」

「・・・唯、本当は『ミス・トキコー』に出る気が無くてあんな事を言った訳じゃあないの。唯は『ミス・トキコー』に出場する資格が無いの」

「資格が無い?何の事だ?」

 俺は唯の言ってる言葉の意味が理解できない。いや、普段の唯の話し方とは全然違う。何と表現すればいいのか・・・あえて言うなら『言いたい事があるけど直接言うのをはばかっている』ような話し方だ。

「・・・たっくん、明日の予定は?」

「・・・何もなければ、いつも通り泰介の家に行くつもりだけど・・・」

「たっくん、明日の午前中は右手のギブスを外すから新札幌の病院へ行くけど、できれば一緒に来て。それで、その後に新札幌にあるタンチョウドラッグに一緒に行って欲しい・・・」

「タンチョウドラッグ?」

「うん・・・さすがに家の近くのタンチョウドラッグでは買いにくいから」

「山口先生のテリトリーでもか?」

「・・・仮に一緒にお店に入るところを目撃されても、お店で何を買ったのかまで調べるとは思えないし、そこまでやったらストーカーだよ。それに、いつものタンチョウドラッグよりはマシ」

「分かった。でも、買い難いってどういう意味だ?何を買うつもりなんだ?」

 俺はますますもって意味が分からないから唯に聞いたのだが、唯は沈黙してしまった。

 やがて、何かを決心したかのような顔をして、俺を見つめながら


「・・・く」


 えっ?何か言ったみたいだけど全然聞こえないぞ。最後の言葉が『く』というのだけは分かったが・・・。

「あのー・・・聞こえなかったんだけど・・・」

「・・・たっくん、唯、『アレ』が来ないの」

「『アレ』って?」

 とうとう唯は半分、いや、完全に泣き顔になってしまった。

 俺はなぜ唯が泣き顔になってしまったのか、マジで理由が分からない・・・。


「・・・生理」


「へ?」

 俺はこの言葉に固まってしまった。

 唯が言いたい事、それの意味するものは・・・


「えーーーーーーーー!!!!!!!!」


「しー!声が大きいわよ!」

「あ、ああ・・・スマン」

 この言葉を聞いて、その意味が分かって俺はマジで気を失いそうになった。いや、正直に言うが、既に俺自身が何をしていいのか分からず頭が混乱している。現実を直視できない自分がここにいる!

「・・・意味が分かった?」

「分かったも何も・・・クラスメイトだけでなく2年生、いや、先輩たちまで、いや、先生たちまで巻き込んで大騒ぎさせた原因を作った真犯人は・・・」

「・・・たっくん」

「・・・ですよねー」

 俺は正直、腰が抜けたどころの状態ではなかった。ハッキリ言って、心臓はバクバクしてるし、汗びっしょりになっていて、もう1回シャワーした方がいいくらいの状態だ。しかも、自分で言うのもなんだが焦点があってない。あきらかに動揺しまくりの状態だ。

 という事は・・・唯がタンチョウドラッグで買うという最後に『く』のつく物は・・・妊娠検査薬!!

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