162話
「「「優勝おめでとー!(ですわー!)」」」
大武闘大会が終わった後、表彰式もそこそこに俺達は宿に集まって祝勝会を行っていた。
アルディやフラム達も優勝したらしく、エレメアの言っていた通り全員優勝となった。
「それにしても、君達って本当に強いねー。アルバ君はこの街の英雄だから納得だけど、アルディちゃんやフラムちゃんまで優勝するなんて思わなかったよ」
祝勝会に同席していたフォレが食べ物を頬張りながら話しかけてくる。
「以前の私達なら優勝は出来ませんでしたわね……。ここまで強くなれたのは、ひとえにエレメア様達のお蔭ですわ」
「エレメア様?」
フラムの言葉にフォレが首を傾げながら尋ねる。
ああ、そういえばフォレは会った事が無かったな。俺は、エレメア達についてかいつまんで説明する。
ちなみに、リズに関しては元
迂闊にそういうのを話して面倒なことに巻き込まれても困るからな。
「へー、五英雄のエレメアが師匠なのか。どうりで強いはずだよ」
「自分で説明しててあれなんだけど、よくあっさり信じるね」
「だって、そう考えればアルバ君達の強さも納得できるもん」
俺の言葉に、フォレはそう答える。
まあ、そういうもんか……。
「アルバアルバー! これ美味しいよ! 食べて食べて!」
俺達が話している間も無邪気に飯を食っていたアルディが、フォークに肉厚なコロッケを刺して突き出してくる。
「ん……あ、本当だ。美味しい」
差し出されたコロッケを口に入れると、口いっぱいに濃厚な肉汁が溢れだす。
味的には牛肉コロッケに近いだろうか。元々庶民派の俺には、馴染のある味でかなり美味しい。
「フラム達も食べてみなよ!」
「はふはふっ……確かに美味しいですわね」
「うん。これは、最近食べた中でも断トツだね」
俺の反応を見て気を良くしたアルディは、フラムやフォレにもコロッケを食べさせる。
二人も、俺と同様に美味しそうにコロッケを食べる。
さりげなく間接キスをしたので、内心ドキリとするが誰も気にした様子は無かったので考えないことにする。
その後、俺達は会話を楽しみながら食事をするのだった。
◆
「ちょいとごめんよ」
俺達が食事を始めてからしばらく経った頃、入口の方から小柄なお爺さんが入ってくる。
確かこの人は……、
「何か御用でしたか? 市長さん」
そう。この人は、表彰式でも出会った市長さんだった。
「いやなに、改めてお祝いをと思ってね」
市長さんは、俺の問いに対し笑顔で答える。
表彰式でもお祝いの言葉を掛けてくれたのに、わざわざ此処まで来るなんて物好きな人だ。
「……君達は確か、世界中を旅しているんだったね?」
「ええまぁ……色んな物を見て周りたいですから」
「そんな君達にプレゼントがあるんだが受け取ってくれるかい?」
市長さんのプレゼントという言葉に俺達は顔を見合わせる。
「プレゼント……ですか?」
「ああ、これなんだがね」
市長さんは、そう言うと笑みを浮かべながら懐から一枚の封筒を手渡してくる。
「これは?」
「それは、魔導船の権利書だよ。君達に魔導船をプレゼントしようって訳さ」
「ま、魔導船ですの⁉ し、しかし私達は賞金も頂いているので流石にそんな高価な物は……」
フラムの言う通りだ。俺達は今、三人合わせて三億の賞金がある。
それに加えて、魔導船なんていうブルジョワな乗り物まで貰う訳にはいかない。
一体、この人は何を考えているのだろうか。
「いや、ぜひ受け取ってほしいんだよ。君達……特にアルバ君にはこの街を救って貰った大恩があるからね。君達が居なければ、この街は下手したら消滅していたかもしれない」
「だからって……流石にはいそうですかって、素直に受け取れないですよ……」
「えー、折角くれるっていうんだから受け取っても良いんじゃないの?」
「そーだよ、アルバー。このおじいちゃんがくれるって言うんだから貰っちゃおうよ」
俺とフラムが遠慮していると、フォレとアルディが提案をしてくる。
「そちらのお嬢ちゃん達の言う通りだよ。これはこの都市の住人全員の気持ちだからね。受け取ってくれると助かるよ」
ぐぬう……そう言われると受け取らないわけにもいかないな。
「……分かりました。有り難く頂戴いたします」
俺はそう言うと、市長さんから封筒を受け取る。
「それで肝心の魔導船なんだが、クバサ皇国にあるからそこで受け取ってほしい」
「クバサ皇国?」
「此処から西に行った所にある国だね。確か、魔導船の造船技術が発達した所だよ」
俺の問いに対し、フォレが答える。
「うむ。どうせ送るなら最高の物をと思ってクバサの職人に依頼していたんだ。おかげで完成に時間が掛かって、権利書を渡せるのが遅くなってしまったという訳だ」
わざわざそこまでしてもらっていたのか。
なら、ますます受け取らない訳にはいかないじゃないか。
「そこまでしていただいて申し訳ないです。高かったですよね?」
「なぁに、感謝の気持ちに金額は関係ないよ。それだけの事を君達はしてくれたんだから」
俺の言葉に市長さんは笑顔で答える。
「封筒の中に、依頼した職人の名前も入っているから後で確認すると良い。それじゃ、用事も済んだことだし私は行くよ」
「もう行くんですか?」
「ああ。なにぶん、私も忙しくてね。それじゃ、私はこれで」
市長さんはそう言うと、手を振りながら宿から出ていく。
「……それにしても、魔導船だなんて凄いですわね」
市長さんが立ち去った後、フラムがため息を吐きながらぽつりと言う。
「そうだねー。でも、これで移動範囲はグッと広がるな」
今までなんだかんだで後回しにしていた里帰りも出来るな。
ぶっちゃけ、今回の賞金で買おうかなと思っていたのでラッキーといえばラッキーである。
実を言うと、魔導船自体の値段はピンキリで冒険者でも買えるようなのだと何千万リラとかだが、公共の乗り物として利用されている規模の魔導船だと普通に億単位だ。
あえて話題には出さなかったが、今まで出会った冒険者の中にも安いながらも魔導船を持っている冒険者は居たりする。
まあ、地球でいう所の自家用機とかそんな感じをイメージしてもらえればいい。
その後、俺達は今後の方針についてなどを話し合うのだった。
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