土魔法に栄光を!
已己巳己
プロローグ
「オギャー!オギャー!」
その日、とある屋敷で元気な産声が上がる
「ああ、奥様!元気な男の子でございます!」
年老いた老婆が、赤ん坊をお湯で洗うと清潔な白い布のような物で包み込み、赤毛の綺麗な女性へと渡す。
「ああ……私の可愛い坊や……会いたかったわ」
目の前の綺麗な女性は絵画のモデルの様な見惚れる程美しい笑顔を浮かべる。
俺は何かを喋ろうとしても
「あー うー」
と言葉にならない言葉しか喋る事が出来なかった。
勘の良い方ならお分かりだろうが、その赤ん坊と言うのは俺だった。
どうやら俺は……小説でお馴染みの転生とやらをしたようだった。
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俺が、転生(仮)を受けてから数日が経った。
俺は宛がわれたベビーベッドらしきものに寝そべりながら状況を整理していた。
まず、俺は赤ん坊になる前は日本でフリーターをしている一般的にオタクと言われる部類の20歳の男だった。
学生時代の成績は中の下くらいで特に体育は下の中という運動オンチで 他の学校ではどう表現しているか分からないが俺の学校では技術(小学校でいう所の図工にあたるもの)や家庭科は常に上以上という典型的な好きなことなら得意と言うタイプだった。
友人は数多く居たが彼女は出来たことが無く、学生の頃好きだった人に告白して
「ごめん、いい友達だとは思うけど恋愛対象としては見れないの」
と、ありきたりな言葉でフラれてしまった。
その後、今後も良い友達で居ましょう?とフォローされたが告白した後でいつも通り振る舞えるはずもなく、そのまま疎遠になった。
今思えば、それも青春の一つだろう。もっとも、それ以降は気になる人が居ても告白できないと言うチキン人間になってしまったが、オタク仲間とバカやってるのも楽しいのでそれはそれで不満は無かった。
そんな俺がなぜ転生したのか?
転生の理由としてはフィクションでよくあるのは、神の不手際で寿命を残したまま死んだり、神の気まぐれで選ばれてチート能力を貰い転生とかが一般的だな。後は、普通に死んで転生か……
特に幼女っぽい神とかテンプレな白鬚生やした神には出会っていないので普通に死んで転生だろう。
死んだ理由については心当たりがある。
俺はアパートの2Fの一室に住んでいたのだが、その日は雨が降っていて階段で足を踏み外しそれ以降の記憶が無い。
気づいたときには既に赤ん坊になっていたので、おそらくそれが死因だろう。
何ともあっけない人生の終わりだったが、まあ現実には車にひかれそうな女の子を庇ってとかどこぞのラノベのハーレム系主人公のようにかっこよく行かないだろう。
逆にトラクターに轢かれて死亡とかの方がネタになったかもしれない。
まあ、死んでしまったものは仕方あるまい。
赤ん坊からとは言え、また人生がやり直せるのだから良しとしよう。
誰もが一度は妄想したことがある、記憶を保持して小さいころからやり直すが実現したと言えばむしろ得だろう。
だが、問題は赤ん坊からやり直しているということだ。
「アルバー。良い子にしてた?ご飯の時間よ」
と、そこへ丁度良く件の問題がやってくる。
ドアを開けて入ってきたのは、例の赤毛の美人が入ってくる。
状況から判断するとこの人が俺の母親らしかった。
顔は西洋人っぽい顔つきで俺をアルバと呼ぶことから少なくとも日本でない事が分かる。
俺は英語が壊滅的で微塵も分からなかったのだが、今は日本語と同じように普通に理解が出来る。
まあ、これは俺が転生したからとかそういう風に考えている。
分からないのはいくら考えても分からないので適当な結論で自分を納得させるのが一番である。
「それじゃあ、たくさん飲みなさいね?」
母親らしき女性は、俺を抱き上げると胸をはだけさせる。
いくら母親とは言え、見た目は若くて美人なねーちゃんが胸を無警戒に露出させると言うのは童貞の俺には刺激が強い。
とはいえ、精神は肉体に引っ張られるとかいう法則があり、それは俺も例外ではなく赤ん坊としての本能が勝ち、母乳を飲み始める。
しかし、理性が無いわけではないので俺自身は赤ちゃんプレイという感覚でしかなく食事の時間やおしめを替えるときなどは羞恥プレイ以外の何物でもなかった。
せめて離乳食辺りになってからスタートしたかったと居るかどうかも分からない神に恨みごとを言うのだった。
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