夢物語 ~奏~

上橋愁也

小説さよならドビュッシーより「純白のセレナーデ~ドビュッシーの調べに乗せて」

真っ白な雪がこの町に舞い落ちる

純白の季節が来た  すべて彩る季節


大切な人たちを失くした

誰も恨めないただの事故

そしてひとりぼっちになった

それでも受け止めてくれる温もりがあった

その温もりさえもやがては炎の中に


新しく生まれ変わった自分 生きなければいけない理由

一歩踏み出せばよかったが 家族を絶望さしたくなかった

束の間の幸せもあっという間に過ぎ去った

どれだけ悲しい運命を行けばいいのかわからなかった


この世界の孤独に身を呑まれて

与えられた運命ほど残酷になる

自分として生きることもできない日々に何度涙を流したことか

いつか光が見えるのだろうか


新たな道を見つけた

一瞬だけでも自分になれるような気がして

その期待だけは自分を裏切らなかった

やっとたどり着いた光

もう絶対に手放さない


自分がだれなのか気にせずにも

流れる音楽が自分を形作った

ただひたすらに奏でた

もうそれだけでよかったんだ


この世界はとても悲愴で

せっかく見つけた生きる意味さえもあっけなく奪われる

どれだけ苦しかったことか

それなのに何故


それでもやっと見え始めた光を

奏で始めた音を

すべてを救えると届いた願いを

もう離さないと誓った

遥か彼方に消えてしまったすべての始まりも

もう何も恨まない

新しい時分に出会えた

もとの自分に戻れた


この世界はとてもひどくて

切なくて冷たい運命だけで

それでも生きる意味は

道を進んでいく希望は

必ずあると知った

だからもう止まらない


やっと放った月の光を

月の向こう 遥か彼方に届けられる日がいつか来ると

その日のために自分の意味を

強く奏でている

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