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「それがお前の良さだって。最近はどうなの? マジック上手くなった?」

「あっあぁ~まぁ、それなりには」

 ちらり、と視線を外したところをみると、そんなでもないのかもしれない。彼女はまだこの世界に入って日が浅いから。

「でも前に見せてもらった時、ちゃんと出来ていたじゃん。俺感動したもん」

「へへ、兄さんがそう言ってくれるなら嬉しいですけど、まだまだですよ。マザーからは甘い甘い言われますから」

「そうなの?」

「まだ失敗することもあるし、お金を頂けるような腕前では」

「黒崎さんが厳しすぎるんじゃ?」

 黒崎さんは魔法みたいにマジックをするから。

「マザーはプロのマジシャンだったから」

「え、プロだったんだ」

「そうみたいです。今でも昔のファンの方が来店されたりしますよ」

 へぇ、知らなかった。だからあんなに感動するようなマジックが出来るのか。

「もっとダイレクトにお客さんを喜ばせたくてバーを開いたんだと言っていました。マザーはお酒も大好きですし」

「確かに」

 マジでか、ってくらい飲んで行くからな、あの人。

「あたしも早く、マザーみたいな素敵なマジシャンバーテンダーになりたい。だから頑張る、マジックもお酒も」

「おう、頑張れ」

 バーテンダー一本の俺ですら日々勉強の毎日だ。定番の変わらないカクテルもあれば、流行で変わるものや新しいものもどんどん出てくる。それはきっとマジックでも一緒だろう。

「応援してる」

 だから俺たちはそれに答えられるように頑張るしかない。この道に踏み込んだのだから。

「はいっ」

「んじゃ、また店に顔だすわ。黒崎さんにもよろしく言っといて」

「はーい、待ってますよっ」

 そう言って後ろで一つに結んだ髪をピョンピョンと跳ねさせて、ピクシーは小走りで去って行った。両手に下げた重そうだった荷物をマジックみたいに軽やかに持って。

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