ピクシーの魔法

カゲトモ

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「おーっす、兄さん」

「ん、おぉ久しぶり」

 店の前を掃除していたら、ダウンを羽織った小柄な人物が後ろから声を掛けてきた。その両手には重そうな袋が携えられている。

「え、この時間から買い出しなの?」

「ちょっと忘れ物を頼まれちゃって」

「ったく、お前のとこの魔女は相変わらずだな」

「あっそんなこと言ったらマザーに怒られますよ」

 そう言ってニシシ、いう言葉がよく似合うくらい楽しそうに笑う。相変わらず、コイツも元気そうだ。

「今日はサプライズをお願いされていて、でもマザーったらすっかり準備を忘れていたみたいで」

「サプライズか、楽しそうだな」

「マジックバーですからね、うちの店ならではのサプライズが色々できますよ」

「さすがウィッチ」

 マジックバーウィッチは同じ飲食店街に店を構える、マジックが楽しめるバー。オーナーの黒崎さんは通称魔女と呼ばれている。いや、本人の前では誰も呼ばないけど。

「黒崎さんは元気にしてる? 最近見かけないけど」

 この間の一斉掃除の時も参加していたのはコイツだったし。

「元気ですよ、相変わらず。ウィッチって感じで」

 魔女と呼ばれているのは、何もマジックが使えるから、だけではない。俺が高校を卒業してマスターに弟子入りした時からウィッチはあるし、黒崎さんはあの時から変わらず綺麗なままだ。怖いぐらい綺麗って感じの。美魔女、ってやつ? 文字通りだけど。

「ピクシーも相変わらずだけどな」

「その言い方、バカにしてますね?」

「まさか。変わらずちっこくて可愛いってこと」

「ちっこいってゆーな!」

 ぴょん、と飛び跳ねてダウンの中の制服が揺れる。同じようなベストスタイルなのに、女の子が着るとまたちがう色気があると言うかなんというか。小柄なくせに胸だけ大きいのはけしからん。

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