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こう見えてお菓子作りも出来る系オネェのミケは、本命がいる年には必ず手作りチョコをプレゼントしていた。今年は?
「イツキちゃんにあげたの?」
「え」
「違うの?」
だって今気になっているのはイツキちゃんだろう? ノンケの女の子だけど。
イツキちゃんは行きつけの居酒屋のバイトちゃんで、ミケが一目ぼれした最初は男の子だと思っていたノンケの女の子だ。
長年ゲイとして生きてきたミケにとってはノンケの女の子を好きになったことにかなり混乱していて、好きになってもいいんだと納得はしていたけど、今でも多分、飲み込めてはいないんだと思う。
「あげてないわよ、さすがに」
「え、あげてないの」
「だって急に、何の前触れもなくオネェがチョコあげたら怖くない?」
それは怖いかもしれないけど。
「女の子なんだから、怖がらせちゃ可哀相でしょ?」
そう言って眉根を寄せてミケは笑った。そう思うのは、女子にどう接していいか分からないからだと思う。だって今まで女の子はそう言う対象ではなかったのだから。
恋をしたからなのか、それとも未知の領域だからなのか。これではミケの多少強引な恋愛術は役に立たなさそうだ。
「でも、イツキちゃんは怖がらないような気がするけど」
「なんで?」
「なんでって、俺ら顔見知りじゃん。客として店にも行っているわけだし」
「や、でも急に渡されたら、え、なんでって思うじゃない。なんで急に私にだけくれるのってなったら怖いじゃない」
それがどっちの“怖い”なのかは分からないが、バレンタイン当日は定休日で仕事もなかったんだから、飲みに行ったついでとかで渡してきたら良かったのに、とはさすがに言えなかった。ミケにはまだハードルが高すぎる気がするから。
「まぁ焦ることはないんじゃない? ゆっくり進んで行けばいいじゃん。ミケのペースで」
「・・・うん」
「まぁとりあえず、今度イツキちゃんに会ってこいよ」
「えっ、はなちゃんも来てよ」
「なんでだよ」
「あたしたち友達でしょ!」
なんだかんだミケとは腐れ縁でここまで一緒に過ごして来たし、そろそろ不幸な恋愛は終わりにして幸せな恋愛をして欲しいなんて、一丁前にも思っているわけで。
「しゃぁねぇなぁ。ミケのおごりっていうならいいぜ」
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