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ケトルのスイッチを入れてコーヒーの準備。こんなにダラダラ過ごす映画三昧の休日だが、世間ではバレンタイン真っ最中だ。そして食卓テーブルには小山程度には盛り上がってくれたチョコの箱。こんなにチョコを貰うようになったのは悲しいかな、社会人になってからだ。学生の時はてんでダメだったのに。
あれだな、学生の時はやっぱりみんな照れていたんだよな。他の子にばれたら恥ずかしい、とかそんなアレだろ。多分。あの頃は義理なんてほぼなかったからな。基本、母さんからのチョコだったし、あと近所のおばちゃん。
だから今のこの小山のチョコは全部が義理である。悲し、くはないか、別に。特別な相手がいる訳でもないし。
「や、一個あるか」
ゴールドのリボンが掛けられたネイビーの箱を持ち上げる。手作り、ではなさそうだ。てか、作れるのか? 想像出来んけど。
「多分高いんだろうなぁ」
そう言うとこ、なんかずれてそうだし。あと蘭子さんのも絶対に高い奴。だって超有名店のチョコだもん。こっちは素直にマジで嬉しい、チョコ好きの俺としては。だってご褒美でしか買えないやつだし。
「そうかご褒美か」
いつもお世話になっている相手に対するご褒美。あー、なるほど。これなら長年の疑問だった義理チョコの意味も分かるな。働いた対価、みたいなもんか。
「納得納得」
なーんて。多分世の中の半分以上はお返し目当てだったりするんだろうな。俺の場合は大体がカクテルを作って返して終わるからそれでいいけど、基本的にホワイトデーは三倍返し、みたいなとこあるから。
「誰が決めたんだよ、それ」
男に対して理不尽だよな。義理だったら義理で返してもいい気がするもん。対等なもの返すとか。そうなるとやっぱりマシュマロ、とか? 対等って、何返せばいいんだ。
「あつっ」
テレビの前のクッションの特等席に座り熱すぎたカップをローテーブルに置いて、替わりに持って来た小箱を取る。誰から貰ったとしても、チョコはチョコに変わりはない。
箱を開けると六粒のチョコレートがキチンと並んでいた。やっぱり既製品か。
「どれにしようかな」
俺はいつだって食べたい時に食べたいものを食べる主義だ。だから一番好きなガナッシュ入りのチョコを一粒。
「あま」
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