義理チョコの意味
カゲトモ
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「懐かし」
レンタルしていたのは昔よく観ていた映画だった。初めて見たのは高校生の時だったと思う。その時も映画館じゃなくてレンタルして観た。その映画がリアルタイムでやっていたのはもっと前だったから。
設定はどこにでもありそうなラブストーリー。男が一目ぼれした女にアピールして、ライバルと戦って、なんだかんだあって結局結ばれるような。って、ハッピーエンドのラブストーリーの骨組みは、大体そうなんだろうけど。でも、それが他の映画と違っていたのは、その映画がミュージカル映画だってことだ。
最初見た時の衝撃は忘れられない。なんだこの映画は! ってワクワクしたのを覚えている。まず一目ぼれした瞬間に歌い出しているし、いつの間にかデュエットしているし、ライバルと戦う時もダンスしながら歌っているし、結ばれた時も手を取り合って歌っているし。めっちゃ歌う。
現実世界だったら絶対笑ってしまうはずなのに、映画の世界ではとてもすんなりとそれを受け入れられて、むしろそれが普通くらいの感覚で。喜びも怒りも嬉しさも恐れも、全部その歌や踊り、仕草で分かる。
インスピレーションを高める為にいろんな芸術や舞台、映画、本なんかを出来るだけ見るようにしているけど、舞台上のオペラやミュージカルとミュージカル映画はまた違う。
画面に大きくキャストが映るからか、ダイレクトに気持ちが伝わってくる気がする。眉や唇の小さな動きや、細やかな声の響き方で彼や彼女がどう思っているのか良く分かるし、入り込みやすい。
なーんて考えていても、結局は好きだから好きなのだ。画面の向こうで喜びを歌い上げている彼の演技が。
「忘れられないよ、僕を見つけた君の瞳を♪」
この映画に登場する曲は全部覚えている。だって好きすぎてサントラを聞きまくっていたから。だからつい、同じように口ずさんでしまう。
「忘れていないよ、僕の名を呼ぶ君の声を。だから聞かせて、何度でも。その可愛い唇で♪」
なーんて。でもあの頃は恥ずかしくて誰にもこの映画が好きだなんて言えなかったな。だって男子高校生がラブストーリーの、しかもミュージカル映画が好きって。バカにされたら嫌だろ。今まで生きて来て一番好きだって思えた映画の事を。
「ふぅ」
映画も終盤に差し掛かり、ライバルとの決着を見届けてから小休憩。今日は既に一本、映画を観終わっている。ちなみに全部で三枚借りてきたから、この映画が終わったら晩酌の準備をして最後の一本を飲みながら観る予定だ。映画三昧の休日。うーん、悪くない。
「チョコ、甘いだろうから濃いめのブラックにしよ」
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