朝起きたら女の子になっていたので親友彼女のライバルになります

@oriron

第1話 朝起きたら女の子になっていた

 ある朝目が覚めると、身体に違和感を感じた。

 気になって洗面所まで来てみると、目の前には一人の女の子。

 あれ、おかしいな……鏡の前の女の子も同じ動作をするぞ。

 つまり、これが俺?


 理由? そんなもん知るか。いや、思い当たる点はいくつかある。


 一つ。

 職場の女性が優遇されまくるので、女はこんなところが良いよな会議を飲み会で開いた。


 一つ。

 いくら仕事が忙しくてもつるんでいた親友が、彼女が出来てから遊んでくれなくなった。なので近所の寂れた神社に酔った勢いで文句を言った。


 一つ。

 レストランで女性限定サービスばかりが目立ち、あげく大好きな甘いものが女性限定で食べられなかった。



 出来事事態はそれぞれ大したことでもないが、それが積もり積もってこんな事態になったのかもしれない。

 やりそうなのは、あの神社の神様か?


「とりあえずは、この現実をどうするかが問題だな……」


 思わずつぶやいてしまったが、いつまでも鏡とにらめっこしているわけにもいかない。

 今の俺の格好は、いつもの寝間着のままだ。


 男のときはゆったりとして着心地が良かったスウェットも、今だと首元がユルユルで胸の膨らみが少し見える。


 袖なんかは、腕も短くなったせいか指先が出るくらいだ。

 こういうのを萌え袖って言うんだっけ? 

 見る分では可愛いと思っていたが、実際になると動きにくくてしゃーない。


 ズボンにいたっては、ウエストが細くなったせいか腰の部分で支えてる感じだ。

 下着も同じく。しかし、なぜか女性になった今のほうが窮屈に感じる。

 ちょうど洗面所なので脱ごうとしたところ、その理由に気づいた。


「んしょ……あれ、そうか。やけに引っかかると思えば」


 最初は朝に起こる男性特有のアレのせいかと思っていたが、今の俺にはそもそも前に引っかかるものがついてない。

 しかし、後ろにはあったらしい。

 ズボンを脱ごうとすると、お尻の部分でスウェットのゴムが限界まで伸びてしまう。

 しかし、ズボンが脱げないとなると、いつまでもこの裾の余ったズボンを履いていなければならない。

 そして何よりも。


「このままじゃ……トイレ、行けない」


 これは非常事態だった。

 そもそも、尿意を感じてトイレに起きたのに、ズボンの裾に足を取られて転んだのが始まりだ。

 そして起き上がるときに、手が短い、頭から何かフサァ……と降りてくる、といったような違和感に、洗面所まで来た。

 女になっていたことも衝撃だが、今は迫りくる尿意が限界まで達している。

 せめてズボンさえ脱げればトイレに駆け込むのだが。


「あともうちょい……うっ……力を入れると……いや、ここは前から手を入れてズボンを伸ばせば…………うひゃぁ! ぁっ、まって、あっ……」


 男の時では決して体験できなかった未知の感覚に驚愕した隙に、どうやら下半身のダムは崩壊してしまったらしい。

 ぺたんと女の子座りをした俺は、じわじわと生温かくなる感覚に自然と涙が溢れてくる。


「っ! ……ひっく! ……せめて、風呂場に」


 こんな身体になったこともそうだが、これからのことを考えると情けなくて不安に押し潰されそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る