第28話 前 出ってて
声が出ない。喋ろうと思ってるのに声が全然出ない。カイル君と友達になりたいのに…。なんて?
何か喋っとかないと。
「…」
声が出ない。お母さんじゃないのに、なんて? カイル君の話を聞こう。聞かなけれな…。
カイル君はお父さんの訓練が苦しいと言ってる。そうか、そうだったのか。カイル君みたいなお金持ちも悩みがあるのね。かわいそう。
「あの」
「はい!」
「えーと、マッサージとか、あ、ごめんなさい、ごめんなさい」
声が出た! 私はカイル君がかわいそうと思い始めったら声が出るようになった。こうやって私はカイル君と仲良くなった。
お母さんとカイル君のお母さんがティータイムが始まったら、私はカイル君と遊ぶ。そんな毎日が楽しかった。
そんな日と言っても全然長く続かなかった、というより、カイル君と知り合った日からの三日目、私はお母さんに頬を何回も叩かれて、頬が真っ赤になってた。だから、部屋から出ないように言われた。カイル君には悪いけどこの日は会えないと思った。そして、カイル君が来てくれた。
「ケイリちゃん、いる?」
「カ…」
返事してどうする? どうせ会えないから。
「どうしたの?」
「ごめん、なさい。今日は、会えない、の」
「どうして? 病気?」
カイル君は私を救えない。救う? 誰を? 私? 私は幸せなのに、どうして?
「カチャ」
え? ちゃんと鍵閉めたのに、どうして? あ、ここ、カイル君のお家だから。
「どうした? その頬」
「なんても、ないの」
「何てもないことないだろう。ひどい、例えケイリがなにか悪いことをしたとしても、そんなに叩かれなくても…」
何? 私を憐れんでる? 同情はやめて! 私は幸せだから!
「出ってて」
「ケイリ?」
「出ってて」
「どうしたの?」
「出ってて」
カイル君はもう二度と私と遊んでくれない。でもまあ、どうせ引っ越すから、別に仲良くならなくてもいい。
その夜、まどろみの中でカイル君の声を聞こえた。そして、お母さんが私の部屋に入っちゃって、寝てる私の右腕を掴んで、私を持ち上げて、頬を叩き続けた。
「やめてよぉ! ケイリがかわいそうだろう!」
「部屋から出ちゃダメだってあれほど言ったのに」
「ごめんなさい」
「あなたって子は!」
痛い。これは多分、カイル君が私に暴力を振るわないように頼んでだ。
「おばさん。やめてよ、僕が勝手に鍵で部屋に入っただけだ」
「そうだったのか。でもカイル君は私の息子じゃないから叩けないよね。だから」
「おばさん、やめてーっ!」
「このこと、あなたのお母さんに教えたらケイリがどうなるか、分かってるよね」
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