第22話 前 近い道
「遠い道と近い道、どっちがいい?」
もちろん近い道でしょ。あっ…でも、なんて、いや、どうして、こんな馬鹿な質問を? どう考えても近い道でしょ?
「えっと、どうして、そんなこと、聞くのですか? いや、普通に、近い道に、すれば、いいんじゃない、ですか?」
「じゃあ、近い道にする?」
「あ、いや。質問する、理由が、知りたいです」
「はぁ。仕方ないか。近い道にすれば迷いの森を抜くるんだけど。まあ、それほど危険じゃないよ。何があったら責任は取らないけどね、一応選ばせたから」
「どんな危険が、ありますか?」
「迷いの森の魔獣はそれほど強くはないが、名前の通り迷いやすい。霧が濃く、何処に行っても同じ軽視景色。迷ったらこの森に出らず、一生彷徨う続けるだろう。だが、俺は一年かけて木に俺しかわかるマークを付けた。多分、この森を抜けられるのは俺だけだ。だから、俺は一人でもdランクになった」
それだ! 自分にしか出来ないことが見つけられれば、自分の価値を証明できる! そうね、カイル兄さん、メイさん、メアリーさんが出来ない、私には出来ることと言えば…回復? 以前、ギラティネと戦った時でも、解毒出来るのは私だけ。勘違いしてる人も多いのだが、どんな解毒剤でも、特定の毒しか効果がない。でも、解毒魔法は下級でも殆どの弱い毒に対応出来る。つまり、ワンドに魔法を自由にセットできる私はヒーラーとして活躍できる!
「では、迷いの森で、お願いします」
「え? あ、いや。先の話を聞いても、なお迷いの森に入ろうと思わなかったので。まあ、入る前に説明したのも初めてだ。普通、皆がもちろん近い道だろう、と即答するからな」
「えーと、要するに、迷いの森は危険だけど、ウィリアムさんについて行けば大丈夫なのでしょう?」
「まあ、そうだけど」
早くカイル兄さんに会いたいから。
「でも気をつけろ、はぐれたら探しに行かないからな」
「はい、分かりました」
そして私達は迷いの森に入った。聞いていた通り、霧が濃くて何も見えない。
「あの、霧を払わなくても、いいのですか?」
「霧を払う? そんなことしなくてもいい、俺には進むべき道がわかる。だいたい、お前はこの霧を払える手段でもあるのか?」
「あるには、あるけど、時間が、かかります」
「いいぜ。待ってやる」
ワンドに調整した下級風属性魔法を三つセットした。威力を控えて持続時間を伸ばした。魔物にダメージを負わせる程の威力はないけど霧を払える。
ウィリアムさんが紫色の光のランプで木を照らしてる。あれ?
「ウィリアムさんが、木に付けたマークというのは、もしかして、蛍光インクですか?」
「え?」
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