第20話 前 ただいま
「ただいま、店主さん」
「お帰り、お嬢ちゃん…ちょ、どうしたの? その腕」
「ああ、これですね。折れちゃいました。結構痛いんですよ」
「早く手当をしないと」
「硬化の薬のお陰で開放骨折になりませんでした」
「まずは固定…棒…そう! 杖で」
「あはっ、店主さんジタバタしすぎます」
「お嬢ちゃん、大丈夫なのか? 普段より早口になってるけど?」
「あはは、私は全然大丈夫ですよ」
「あ、そうだ! 上級回復魔法を入れたワンドがあった。取って来るから」
あはは…勝てなかった…強くなって、ダンジョン主を倒して、カイル兄さんを追うはずだったのに…詰んだな、おしまいだ。
「今麻酔をかけるから」
あんなに矢を打ったのに。やはり私は何も出来ない。
「それで大丈夫だ。お嬢ちゃん、何があった? どうして腕が折られた?」
「ああ。近くにある、ダンジョンの、ダンジョン主を挑んだけど、負けました」
「嬢ちゃん! eランクのギガントモンスターを一人で挑んだのか?」
「この一年で、私は強くなりましたと、思いましたけど、カイル兄さんも、きっと強くなってる、と思います。それじゃあ、いつになっても、差が縮まないと、思います。せめて、一人で一年前に、私達が倒した、あのダンジョン主を、倒したら、自分の実力を、証明出来ると、思いまして」
「そんな無茶な…」
だって、寂しかった…眠らない夜、暗い部屋でひとりぼっち。そんな時はいつもカイル兄さんのことが思い浮かぶの。時々後悔するの。お荷物としてでも、あのままカイル兄さんの側に居るべきだったかなって…カイル兄さんはもう、私のことをなんとも思わないじゃないかって思うの。そう思うと、一層寂しくなる…心が穴があいたような…寂しいさが… だから、私は一刻も速く自分の実力を証明したいの。
「無茶では、ありません。私も、eランクの、冒険者なんだから」
「バカ!ランクは個人なものではなく、チームのだ! それに、あいつはゾンビだ。弓との相性が悪い」
「そうです。幾ら攻撃しても、全然、倒れないです」
「出血しないからな。筋を狙うべきだ。魔法の弓なら簡単に狙えるはずだ」
「狙わないように、したから」
「え、どうして?」
「それは、前回は、これで、簡単に倒したから…」
「嬢ちゃんは命知らずだ、全く…それで、魔法耐性はちゃんと付けたのか?」
「はい。魔法と対温度差ローションで」
「ああ、あの痒くて全く使えないローションか」
「はい。マジックコートの上に塗ったら使えるようになった」
「お! 頭いいな! 今度セットで売ろう」
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