第13話 ギラティネ戦
魔物の死体だらけ、ギラティネの幼体1匹だけで生態系にこんな影響を与えるんだね…うん、どうやら、ギラティネは近くにいるね。そろそろ作戦を説明しないと。
「あの、カイル兄さん、そろそろ作戦を」
「おお、いいな、ケイリ、聞かせて」
「ちょっと待って、作戦なんて本当に立てる必要があるのか? 私達は自分の実力を試したくてこの依頼を受けたでしょ。お互い、パーティでの役割もちゃんと分かれてないし。もうちょっと経験を積んでからにしよう」
一理あるけど、違うでしょっ! ギラティネはそう簡単に倒せる相手じゃないでしょ。
「カイル兄さん…」
「ごめんな、ケイリ、実は僕も自分がどこまでやれるのか、自分の限界を試して見たいんだ」
そうか、必死に考えた作戦が無駄になったわけか…でもまあ、でもまあ…なに? はあ…あ、いや、でもまあ、私の作戦の要は私なの、だから、私が攻撃の機会を作ればいい。
私の作戦は、私が囮になって、ギラティネをこのバリアワンドのバリアにぶつけさせる。あ、このバリアワンドは前に、店主さんがほんの気持ちと言って私にくれたもの。
えーと、つまり、メイさんの召喚獣でギラティネを囲んで、私がギラティネの前に出て攻撃を引きつけてタイミングよくバリアを展開する。ギラティネがバリアにぶつけて、硬直してる隙にメアリーさんとカイル兄さんが攻撃を仕掛ける作戦なんだか…
メイさんの召喚獣のサポートがなければ囮になるのは難しい。何より、作戦説明なしで前線に出ったら、カイル兄さんの気が散る。
もう一つ問題がある、ワンドは魔力なしで魔法を使えるのだか、限度がある。このワンドは、10秒しかバリアを展開することが出来ない。だから、攻撃される瞬間だけバリアを展開するのが一番長い持ち出来るのだが…でも、説明書によると、バリアを展開するのに、2秒くらいはかかる…あ、やはりサポートなしじゃ難しいかも。でも、やるしかない…
ギラティネに出会える前にイメージトレーニングしよう…
生物は動くものに反応するの、だから、うん。
「みんな、気をつけろ」
ギラティネ、図鑑の絵と同じ、キッモカッコいい系だな。幼体なのに長さは3メートルくらい。
カイル兄さんとメイさんが前線に出た、メアリーさんは後ろで詠唱してる。そして、カイル兄さんの剣はやはりギラティネにダメージを与えられなかった。
「カイル兄さん! 」
「大丈夫、心配しないで、奥の手がある。メイ、援護して」
「援護? いやよ、私の召喚獣はギラティネにダメージを与えるから」
じゃあ、私が頑張らないとね。
「ちょ、ケイリ、何をする? よせっ! 」
あ、こっちに来た、焦らない、イメージトレーニング通りに、2秒、今だ! よし、上手くバリアにぶつけさせた。
「みんな、チャンス」
「おう」
カイル兄さんは双剣をハサミにした、なるほど、剣の形がおかしいわけだ。カイル兄さんはハサミを殻の隙間にハサミ挿しごんで、殻を剥く。
「みんな、氷の牙」
「アシッドレイン…」
アシッドレインって、ちょ、メアリーさん…とりあえずギラティネから離れよう。
結構ダメージを与えたようだ、殻が剥かれて、酸も傷口に沁みた。痛そう…
あ、もしかして、ギラティネにダメージ与えなれないのは私だけ? あ、いや、カイル兄さんが殻を剥いた傷口に矢を撃ち込めば…
「ギィィィーっ! 」
うわー、すごく暴れてる!
「マーーイクっ! 」
犬、あ、いや、狼さんが噛まれた。これは、毒を食らったな。
「回復薬…え、マイク、どうしたの? おい、カイル、マイクの傷口から紫の液体が…」
「多分毒だ、メイ、解毒薬持ってない? メアリー、メイの援護を頼む」
「分かった」
「私は持ってない、メアリーは? 」
「ない」
「そんな…どうすれば」
解毒のワンドは持ってるけど、三回しか使えないから、カイル兄さんと私のために取っておきたい…それに、借り物だし…はあ、仕方ない、狼さんに使うか…じゃないと、カイル兄さんの為に使う時に、メイさんに怒られる…
「ケイリ、これはまさか」
「うん」
「まさかケイリが…礼を言う」
誰も私が解毒アイテムを持ってるなんて期待しなかった、だから私に聞かないのだ。もっと役に立てば期待されるのかな?
「ケイリ、お前また! 」
「カイル、お前もだ、集中して! ケイリ、先のあれだな、行け! 」
カイル兄さん、心配しなくていいから。
「カイル、下がって」
「…」
「カイル! 」
「ケイリ、危ないんだ、無理しないで」
「大丈夫、任せて」
さあ、来なさいギラティネさん、その怒り、私にぶつけて。
先と同じタイミングで展開するんだ。
「ちょ、え!? 」
フェイント!? しまった、バリアを展開するのが早かった…ダメだ、ギラティネは私を狙ってる、カイル兄さんに攻撃されても相手にしない。どうしよう? ワンドの効果が切れた。
「ぐはっ…」
「ケイリーっ! 」
痛い、うわ、ち、血と…紫色の液体が…
「ケイリ、しっかり! 」
「カイル、お前もしっかりしろ! 回復薬またあるでしょ」
「あ、そうだ。ケイリ、これを飲んで」
まだ痛い、回復薬はただの応急処置なのか。あとは解毒、あ、これで解毒ワンドはあと一回しか…
「おい、ケイリ、解毒を頼む」
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