第8話 仲直り

多分私が正しい、けれど、今が考えべきなのは、誰が正しいよりも、どう仲直りするのだ。しかし、カイル兄さんは私の言うことを全然聞いてくれなかった…多分、私はわかままだと思ってる…はぁ、私が謝るしかないみたい。けれど、私、何か間違ったことをしたかな?


していない、よね? そもそも、カイル兄さんが悪いの、この弓があったこそ、ダンジョン主を倒したのにね。それが、モブの話を聞いてだけで、あんな…


それにさ、杖で良かったじゃないか? 私、確かに魔法使いに成れる程の魔力量はないけれど、弓の才能があるとは限らないでしょ、だったら…


やめよう、こんなことを考えでも意味ないから、それより…そうね、この弓はゴミだったわ、新しい武器を買ってくれれば許す…うん、言えるはずもない…


でもさ、カイル兄さんは私の言うことを聞いてくれない、無理に仲直りする必要があるの? そうね、村での生活が素晴らしかった、カイル兄さんと喧嘩したことは一度もなかったな…どうして? カイル兄さんは変わったの? いや、違う、カイル兄さんは今も優しい、もっといい武器を買ってあげたかっただけ。


あーあ、お父さんもそうだったな、町で面白そうな物を買って、お母さんにあげたら、お母さんに無駄使いしたと叱れられることがよくあったな。お母さんは実用性が高い物しか興味ないのに、お父さんはああいう物しか買わないよね。結局、お父さんはお母さんを言い訳にして買いたい物を買っただけ。


カイル兄さんも同じだ、私に一番いいものを買ってあげたいと思ってるでしょけど、でしょけれど…


はぁ、戻りましょ…


「あ、店主さん」

「嬢ちゃん…彼氏が君を探しに行った」

「そう…ですか…あ、彼氏じゃ…」

「すまない、すまなかった」

「店主さんが、謝ることでは…」

「いや、俺がちゃんと説明するべきだった、でも信じてくれ、あの弓は売れない商品であって、欠陥品ではない」

「うん」

「あっ、これ貰っとけ」

「これは? 」

「ほの気持ちだ、それより、彼氏探さなくでいいのか? 」

「彼氏、ではない、よ? 」

「そう? お前さんのこと、えらく心配したけど」

「あ、うん」

「まあ、お前さんが走り出した時、彼は追いかけなかったが」

「そう、か…」


カイル兄さんって、結構ヘタレなんだな…この旅で、カイル兄さんのこと、色々知ったね…


「ケ、ケイリ」

「カイル兄さん…」

「心配した、すごく…」

「それはまあ、ケイリはきっと村に戻ったってさ、止めるのが大変だったよ。でもまあ、見つけてよかった」

「ケイリ、ごめん、ケイリはあの弓が好きだな」

「うん」

「ケイリ、許してくれないか? 」

「許すって、そんな、私も…」

「いや、ケイリは間違っていないよ、悪いのは僕だ」


これで一件落着、かな?


「そうだ、店主さん、魔法の弓の強化パーツはあるのか? 」

「あるとも、魔法石で魔力を貯めれば、いざの時、魔力が切れでも攻撃出来ない状況にならない。この魔力ブースターを付ければ、射程も威力も上げるよ、勿論、安くしてやるよ、これくらいでどうだい?」

「おいおい店主さん、それはないと思うけど? こっちは酷い目に合わせたからもっと安くするべきじゃない? 」


メイさん…やめたげてよお、店主さん、かわいそうじゃない…


「はぁ、分かったよ、持ってけ、泥棒」

「あと、防具も買わなくではな」


防具は重いからつけたくない。


「あの、なるべき、軽い防具を…」

「ああ、それなら、これはどう? 」

「魔法石? あ、また売れない商品じゃないだよね? 」

「あ、売れない商品だ、でも、お嬢ちゃんならそんな偏見は持たないよね」

「はい」

「ケイリって騙されやすすぎ…」

「そうじゃ…」


確かに騙されやすいかもしれないけど、それでいいだと思う。 どう言えばいいのか…例えば、多くの人は、親が決まった相手を拒む、親に決められた相手は自分の運命の人のはずないと決めつける、けれど、親が決めた相手が運命の人の確率はゼロじゃないでしょ?


こう言う考え方をする人って多いよね、えーと、悪い人は悪いことをする、だから悪いことをする人は必ず悪い人。役に立たないものは売り残る、だから売り残りは全部役立たず。この考え方はバカな考え方だと思う。


物事もちゃんと自分の目で見るのが、私のやり方なの。


「はぁ、ケイリはバカだな、騙されたら、また私達の前から居なくなるのか? 」

「メイ! 」


メイさんにそう思われていたのか? 酷い…でも、私が悪い、ちゃんと言いたいこと言えなくて、あの場から逃げ出したから…


「仕方ないやつだな、ケイリは…でもまあ、これからは私がついているから、もう騙されることはないでしょ。おい、店主さん、いつでも返品出来るよな? 」


メイさん、やはり、口は悪いけど、悪い人ではない。


「はあ、ケイリちゃんならいいよ」

「ありがとう」

「あと安くしてくれ」

「充分安いだろう! 」

「こんなに買ったからもっと安くして! 」

「わかった、安くしてやるよ、お前は二度と来んな! 嬢ちゃんはいつでも来て、ビップだから」

「あ、ありがとうございます」


どんな物も、使い方次第で役に立てると思う、何より、作った人と、売ってくれる人が、こんなに喜んでくれるから…

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