第6話 過保護
あ、居たな、杖を持ってるゾンビが、多分あれがダンジョン主だね。
「おい、ケイリ、弓で不意打ちして」
「あ、はい、やってみる」
でも、どこを狙えばいいの? 頭? でも、アンデットはもう死んでるから、頭をねらっても倒せないじゃないの?
あ、魔法使いだったのね、では喉を狙って見よう。
魔法の弓なんだから、自動照準してくれる。まぁ、今の私の魔力では矢を五本しか作れないけど。
「えい」
ちゃんと喉に当てだみたい。
「喉か、なかなか良かったじゃないか、ケイリ。カイル、行くぞ! 」
「ああ、ケイリは此処に残れ! 絶対にここから出るな、絶対だぞ」
あ、知ってた、カイル兄さんはきっと戦わせてくれないってこと。
二人はどんどん仲良くなるんだね、私を差し置いて…
あたしも何かの役を立てれば…あ、ダメ、やらかしそうな予感がする、うん、ちょっと落ち着こう。
「カイル、気をつけて、氷属性の魔法が来る」
そんな、喉を潰したのに…
「寒い、指が…」
吹雪か、いけない、このままでは、カイル兄さんの指が凍ってまともに戦えない。
あ、杖だ、杖を落とさないと。そう、指だ、指を狙うしかない。
「ケイリ、よせ」
「え!? 」
あ、しまった、これ、あたし、狙われてる。あ、足が、動かない、死ぬ…
「ケイリ、逃げろ! 」
「本当に世話を焼ける、フィン、でってこい、あいつを噛め」
狼さん、助かった。ああ、足、引っ張っちゃった…
何処かに隠れようか、ここ、柱も多いし…でも、隠れる前に。
「カイル兄さん、あたしのこと、気にしなくで、いいから! 」
「ちょ、ケイリ」
「カイル、戦いに専念しなさい」
「あ、ああ」
さて、どうする? このまま最後まで隠れるの?
「たっく 、魔法使いなのに何でこんなに攻撃が重いのだ」
「カイル、守りの陣を展開するから早く来て」
「ああ」
「攻撃を休めるな、絶対に詠唱させるな」
「ダメだ、こいつ、攻撃しながらも詠唱出来る」
苦戦してるみたい、あ、この弓は、たしか、追尾するよ、ね。ひょっとして、隠れたまま攻撃出来るの? うん、やってみよう、行って、ダンジュン主の指に向かって飛べ!
「えい」
「ぐわぁ、何? 矢? まさかケイリ? 」
あ、カイル兄さんの肩に当たっちゃた、血が、そんな、私、どうしよう?
「ケイリ、余計なことはしないで、狼よ、全部でってこい」
「ごめんなさい」
「僕は大丈夫、大丈夫だからちゃんと隠れて」
カイル兄さんが私のせいで片手しか使えなくなった…メイも防御力が低い狼さんを守勢に立たせた、全部私のせいだ、もっと考えるべきだった…どうしよう、どうしよう、どうしよう。焦っちゃダメ、焦っちゃダメ…
『困っていらっしゃいますね 』
え、誰?
『わたくしの声、お忘れになりましたか? 』
あ、この声は…いや、召喚獣さん、私の心を読めるの? あ、読めますか?
『ええ、あなたが冒険者になりまして、嬉しかったです』
え、どうしてですか?
『あなた、わたくしを召喚しようとしませんからです。御覧なさい、今こそ、わたくしの力が必要かと存じます、いかがいたしましょう? 』
でも、指が…
『指より、彼の命の方が重要ではなくって? 』
それはそうですけど、あ、でも、状況はそれほど悪くないと思います。
『今回は爪だけにします、爪一枚であのアンデットを消して差し上げますよ』
でも、ここで召喚獣を召喚して、ダンジュン主を倒しでも、カイル兄さんは強くなれない、私は強い召喚獣を召喚出来ることもバレるし、それに、カイル兄さんは自分のために私が自分の爪を生贄に捧げたことを知ったら、きっと自分を責める。何より、私の価値は召喚獣だけ、そう思われたくないの。うん、まずはやれることをやって見ます。
『後悔しないことを祈りいたします』
先、矢は私が思った軌跡と違う軌跡で飛んだ、あれは恐らく最短のルードでしょ、矢が障害物を避けると思った私はバカだった。いや、違う、もっと色々実験すべきだった。でも考え自体は悪くない。
今度こそちゃんと考えよう、何か他に失敗する可能性はないのか? そうね、横から狙おう、これなら誤射しない。
今回は隠れてないで、ちゃんと狙わないと。
「ケイリ、また? ダメだ、隠れて」
「カイルお前いい加減にしろ」
無視無視、私もこのパーティの一人だ、足を引っ張るために、安全のところに隠れるためにここに来た訳ではない。
「えい」
今回はちゃんと成功した、あ、ボーッとする場合じゃない!
「杖拾わせないで」
「出来した、ケイリ」
これで、私がやれることはもうない、大人しく隠れよう。
「カイル、チャンスだ、行くよ」
こうして、私達は初めてのダンジョン潜りでダンジョン主を倒した、まぁ、メイのお陰だな。
「ケイリ、絶対に出るなって、言った筈だ」
「カイル、ケイリは良くやったではないか? 褒めたらどうだ? 」
怒らせたか…まぁ、心配させちゃったし、当たっちゃたし。まぁ、仕方ない、ここはメイに任せるか。
「ごめんなさい」
「いいか、ケイリ、今度無茶したら帰って貰うからな」
「カイル、お前いい加減にして、過保護しすぎだ。どうやら私はケイリを誤解したみたい、お前だったのね。ケイリはケイリなりに頑張ってるのに」
「メイ、でも…」
「でもじゃないよ、ケイリ、私は味方だからね」
メイと仲良くなった、メイって、結構いい人かも。
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