少し未来のプロローグ(王国サイド:スターリングラード)

「竜騎士はまだか!?」


 ハインツ百人長は体を震わせた。まるでお守りのように腕に抱く『相棒』をみやる。

 楽な仕事のはずだった。帝国を打倒したという謎の国家を討伐せよ。

 半分死人の病人とはいえ、あの巨大な帝国が倒れるなど信じられなかった。

 帝国を打倒するのは祖国以外にないのだと信じていたからだ。


「ぎゃああああああ」


「ミハイル! くそっ!」


 勅命を受けスターリングラードなる都市へと進発した50万人の軍隊。


 相棒をもう一度みやる。その相棒は――『火縄銃』といった。


 王国が開発したばかりの最新鋭の装備である。この火縄銃を使った三段打ちで同盟や連合を打ち破ってきたのだ。


 必勝だと思われた。なのに――。


「なぜなんだ! なんで奴らは『銃』をもっているのだ!」


 小癪にも敵も銃を装備していた。性能はこちらの方が上だと信じていた。信じないと心が折れそうだった。


 いや、もう気付いている。性能はあちらの方が明らかに上だ。こちらが1発撃つ間に100発は撃ち返してくる。

 間断のない銃声に士気は崩壊寸前である。


「竜騎士が来たぞおおお!」


 そのとき歓声が上がる。王国軍を象徴する最強の部隊――ドラゴンライダーたちがやってきたのだ。

 空を悠々と飛翔してく竜騎士の群れをみて、ハインツは胸をなでおろした。どうやら勝てそうだと。

 そして、次の瞬間彼が見た光景は……。


 奇妙な音を響かせた鉄の鳥の集団が竜騎士を撃墜していく姿だった。


「われわれは一体何と戦ってるのか! あれこそ教国の言う地獄の軍勢だというのか!?」


 叫んだ直後、轟音が響く。全身を殴られたような衝撃を受けると、ハインツの意識は暗転した。

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