第102話 この『言い訳』が思い浮かぶか?(不動産会社が決済手数料を上乗せする小ネタ)
私は家賃保証会社の営業ではなく、単なる管理(回収)担当者だ。売上がどうの、新規獲得がどうのは──あまり興味が無い。私の数字ではないからだ。全く、見下げ果てた会社員だ。それでも10年以上働いている。しかしそれだから感じる事なのかもしれない。
家賃保証会社の用意した『銀行引落をする会社』が引落をして毎月の家賃を支払います──というお部屋の契約をしました。普通の話。
個人的に全く理解できない点がある。
私は偶に『99%が納得しなくてもそれでも言い張れる理屈』を考える。
例えば私はいままでのお話で『契約者が夜逃げした。部屋の使用は無い。残置された家財道具は撤去。明渡は完了』と書いた。日常業務。
では『何で撤去できるんだ?』と追及されるとする。
相手が納得しないかもしれないが『これこれこうだからこうしました』という理屈は言う。一分くらいは理があるようには、回答できる。
もっとも、本音をいうなら『夜逃げしたから撤去』など、どこまでいっても泥棒だ。でもやってる。それが私の仕事だから。正しいと思った事など一度も無いけれども。自己正当化の理屈だけは用意している。
そんな私でもどうにも『なぜそんなカネを取るんだ?』と問われて『言い訳』が見つからないものがある。
それが家賃の引落の決済手数料の『上乗せ』部分。全部が全部ではないのだが、家賃保証会社の一部(といっても相当な数だが)が行っているもの。正確に書くなら、そこから不動産会社が『上乗せ』する部分のカネだ。
家賃保証会社が不動産会社に提供する商品。家賃は契約者の口座からの引落。引落そのものは決済代行会社に委託する。
その決済代行会社から呈示される引落の決済手数料が、仮に300円としよう。
300円で引落はできる。つまりあなたの家賃が5万円なら、毎月『家賃+決済手数料』で50300円が引落される。ここに問題はない。
300円が適当かはともかく、決済代行会社の商品だからだ。そういうシステムを構築したのだ。対価は支払うべきだ。
話はここから。家賃保証会社はその商品を売る際に『300円に上乗せできる。その分は不動産会社のバック』。そういうセールストークで商品を売る場合がある。それなりの数。
ヒドい不動産会社だと500円を決済手数料に乗せる。つまりあなたの口座から毎月50800円引落される。500円は不動産会社へ渡る。もちろんそんな事実は入居者には知らされない。
私は偶に『99%が納得しなくてもそれでも言い張れる理屈』を考える。
不動産会社は何も提供してない。ただ商品を導入しただけだ。何もしていない。
『500円を取れる理屈』が、私には思い浮かばない。
別の例を挙げよう。家賃保証会社の商品を使った不動産会社にはバックが入る。保証料の**%──割合は様々。
この場合、不動産会社がバックを受け取る理屈は『家賃保証会社の商品を売った手数料』。
何割の人間が納得しているのかはともかく『そうなっている』。
おかしくないか? 使いたくて使ってるんだろう? 家賃保証会社の商品を。入居者に費用を負担させて。
以前にも書いたが私は本来的には家賃保証会社などこの世に必要無いと思っている。同時に、現在の法律下では──不動産会社はともかく──家主は家賃保証会社を『そりゃ使うしかないよね』とも考えてる。
ちなみに私は一度も家賃保証会社と契約した事がない。ずっと賃貸物件に住んでいる。そして今まで転勤や転居を人よりたぶん多く経験しているのに。
契約したくないのだ。家賃保証会社で働ていているくせに。
少し前の楽待新聞からの取材で答えたが『最初の保証料はともかく、延滞しない人間の年間保証料まで入居者に支払わせるのはおかしくないか?』と思ってもいる。不動産会社か家主がせめて半分を払っては?
ここで『じゃあ家賃保証会社が半分まけてあげろよ』といわれると、ちょっと厳しいなと思う。なぜならその『延滞しない人間』からの保証料が家賃保証会社の収入源だから。
これは私が以前働いていた消費者金融も同じだ。結局『ちゃんと払っている人間』からの収入で食っている。ちゃんと払ってない人間には、コストばかりかかる。
もちろんこの世は資本主義。カネを集める行動は基本的には咎められるべきではない。
そうはいっても私には、不動産会社が決済手数料に『自社へのバックを乗せる』──これを『正しいです』と強弁できる理屈が、思い浮かばない。
仮に1件200円を決済手数料に『乗せる』として、2000件の管理戸数があるのなら1ヵ月で40万円。1人分の人件費にはなる。それは、欲しいだろう。しかしそれでも──そんな方法で? 良いのか?
少なくとも入居者にとっては全く得が無い。本当の物件所有者たるオーナーにとってもだ。
貴方にはこの仕組みを肯定できる理屈が、思い浮かぶだろうか?
※私は特定企業をどうこう書く気はないです。でも、あんまり『カネカネカネカネ』している不動産会社さん。いつかオオゴトになる前に、ちょっと立ち止まった方が良いと思いますよ。今更立ち止まれないんですけどね。
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