stage 49 超越神力のエビデンス -Kazu side-

『プラーナ通信~第七号(前編)~ 』 

超越神力ちょうえつじんりきのエビデンス①~


カズ「こんにちは。しばらくお会いできなかった間にずいぶんと出世されたようで・・・。これからは"マンジュシュリー"とお呼びしなければなりませんね?」


ヒロ「アッハハハハ。冷やかしはやめてください。今までどおりでけっこうです」


カズ「それでは本題に入る前に、お隣に座る素敵なレディをご紹介願えますか?」


ヒロ「はい。事前にうかがっていたテーマがテーマなだけに、今日は専門家を同席させたいと思います」


アルチャナ「はじめまして。私はシャンバラ国のAI 量子コンピュータ部門を受け持つアルチャナと申します。最近、"ラクシュミー"などという不釣合なホーリーネームをいただきました。どうぞよろしくお願いします」


カズ「不釣合どころか、まさに女神の名にふさわしい美人で驚いております」


アルチャナ「お誉めにあずかり光栄です」


カズ「さっそくですが、シャンバラ信者がかぶるヘッドギアによって検知された"ヴァジュラ"についてお聞かせください」


アルチャナ「プラーナ通信さんは科学雑誌ではありませんので、なるべく簡潔にお話させていただきます。シャンバラ王が人間の脳波の完全解析に成功したニュースはご存知ですね?」


カズ「もちろんです。各界に衝撃が走りました」


アルチャナ「ヴァジュラとは我々が医療機関と協同で行った最先端の脳波検査で探り当てた未知のエネルギーです。その性質に、私は並々ならぬポテンシャルを感じております」


カズ「・・・・・」


アルチャナ「ここからは量子論が絡んでまいりますのであえて詳細は述べませんが、ヴァジュラこそがB.S.世代の人間がと決めつけ、研究を怠ってきた(超能力)の正体です」


カズ「超越神力・・・。個人的には大変興味深いジャンルですが、量子論はハードルが高すぎますね」


アルチャナ「"量子論が分かったと思っているうちは分かっていない"」


カズ「はぁ・・・」


アルチャナ「フフフッ。そう皮肉られるほど、量子論は複雑怪奇な学問です。あなたのようなオールドタイプには理解不能でしょう」


カズ「アッハハハハ。辛口だなぁ。でも、アルチャナさんほどの科学者に言われると清々しい気さえします。話を元に戻しましょう。小耳に挟んだところ、教団には飛び抜けて高いヴァジュラを発生させる信者がいるとか?」


ヒロ「非常に重要な個人情報なので素性は明かせませんが、該当信者のヴァジュラは一般信者のそれに比べて1000倍以上の値をマークします。また、こういった現象はトランスジェンダーに限って見られることも分かってまいりました」


カズ「・・・・・。そ、それは面白い・・・。何故だと考えますか?」


ヒロ「まだまだ推測の域を出ませんが・・・。我々は"0と1が重なる量子コンピュータと多様な性が重なるトランスジェンダーの相性はバッチグー!"との仮説を立てました。一切の差別を否定するシャンバラ王の御心でしょう。有り難い・・・。なんと有り難い・・・。バッチグー、グー、グー!!」 


カズ「・・・・・」


アルチャナ「・・・・・。マンジュシュリーの説明を補足すると、一口にトランスジェンダーと言っても色々なタイプが存在します。私の所見では、高いヴァジュラを発生しうる信者は解離性同一症(多重人格障害)の疑いが濃厚です」


カズ「なるほど。一人の人間の中に複数のパーソナリティを内包する方々ですね?私の身内にもいますよ。ふとしたはずみで人が変わったようにブチ切れるMtFが・・・」


アルチャナ「いいご親戚をお持ちですね。トランスジェンダーこそがシンギュラリティに対応できる超人類。ひょっとするとサイコミュ兵器を巧みに操るニュータイプかも・・・。ウフフフッ」


ヒロ「バッチグー、グー、グー!!」

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