stage 13 収穫祭 -Naoki side-

「さて、今日は祝うべき収穫祭だ。ひとまず物騒な話は止めにしよう。この瞬間を待ちわびたぜ。ナオキたちが来るまでは絶対に手を出さねーって決めてたからな」


「ハッハハハ。ジン、お前もなかなか良いとこあるな・・・」


「おーい!你准备好了吗?(準備はいいか?)」


テルマの剪定を済ませたジンが、頭上の通気口に向かって何かを叫んだ。


「你可以随时开始!(いつでもOKです!)」


奥から聞こえてきたのはヨンファの声だった。


     ※     ※


 本堂の真ん中に並ぶのは、食べきれないほどのラオス料理だ。


正面に鎮座する黄金の仏像が一同を慈悲の目で見守っている。


「それじゃ、これからパーティーをはじめるぜ!」


4人のグラスにビールが行き渡ると、興奮気味のジンが乾杯の音頭を取った。


「ドラゴンフラッグ流にやらせてもらうぞ!」


「おう!」


「福星拱照!(福の星が常に照らしてくれますように)干杯!」


その掛け声を合図に各自がビールを飲み干すと、ヨンファがのテルマを持ってきた。


「ナオキ、お前からいけ!」


「いや、それじゃ筋が通らねぇ。実際に危険な橋を渡ってんのはジンの方だろ?お前からいくべきだ」


「チッ!面倒くせーなぁ。そんなら兄ちゃん!あんたが初めに吸って正直な感想を聞かせてくれよ」


ジンに指名され、恐る恐るジョイントを受け取ったヒロは、クルタの脇ポケットからライターを出すと、そっとテルマの先を炙った。


     ※     ※


 3分後・・・。


「駄目ですこれは~。ふぅ~。駄目ですぅ~」


「兄ちゃん!なにがダメなんだ!乾燥が足りなかったか?それとも効かねーのか?オイ!白目むいてねーで答えろや!」


「おいおいジン、慎重にテイスティングしてんだよ。そんなに急かすなって。な?そうだよな?」


「・・・・・・・・」


「これはですねぇ~。申し分ありません。ぶっ飛びますよ・・・」


それを聞いた俺たちは、満面の笑みで拳をぶつけた。


「テルマってネーミングセンス、凄いですね~。突然降りてきたんですか?ナオキさんはチベット密教と縁があったんですよ。こいつは絶対に商品になります」


「そうか!嬉しいぜ。瞑想系っつーのが今一つピンとこねーがな。能書きはどうでもいい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る