第30話星

夜が、あけない。月は、消えた。月食だろうか。

星が出ている。やたらに。


ガリレオ・ガリレイの、望遠鏡があれば、夜空をながめられる。

天がまわっているのか、足下がまわっているのかだって、わかる。

星空は、天文学者むきの、満点。

少女は、少女たちは、みちをすすむ。草原。草の音。ぼんやり明るい。

つちぼたる。ひかっている。


静寂。カンテラを持った、ディオゲネスが、あらわれる。道を、やってくる。犬を、わんさか、つれて。


ディオゲネスが、杖をついて、やってくる。犬たちが、ほえる。

ディオゲネスは、何も言わずに、少女の、先に立って、すすむ。人を導くように。


犬たちが、いなくなる。吠え声が、遠くから、する。


猫が、火を吹く。なにか、やってくる。ディオゲネスの、すすむほうから。


怪物が、あらわれる。でかめの。つまり、見上げるように、大きい。

ゴヤの絵にでてきそうな、怪物。ボッシュが描きそうな、すがた。ごちゃついている。昼間だったら、ごてごてと、色が、ついていただろう。あいにく、月すらない。くらがりに、たつ姿は、くらく、そびえる。


ディオゲネスが、杖をふりあげて、怪物を、なぐる。


ひるむ。怪物。ぐちゃぐちゃした、そいつ。

たまごのからみたいな、なんかが、われる。

植物みたいな、手か足だか触角だかが、折れる。


どこから、声をだしているのか、しらないが、叫ぶ。その、悪夢。悪夢の、ボッシュ的、ばけもの。

ディオゲネスが、杖で、めちゃくちゃ、なぐる。

どこからか、血がでる。怪物の。はらわたやなんか、よくわらない、いろいろ、でる。ちいさな、流れ。はらわた、から、骨、血管、ぐちゃぐちゃ。ながれる。


鳥。鳥たちが。いっぱい、われた、たまごから、はばたく。偽物の、鳥。

かわせみ、きつつき、・・・。

木の実が、破裂する。木の実みたいな、果物みたいな、頭みたいな、ぶぶん。とびあがって、ディオゲネスが、ぶんなぐった、杖で。

犬みたいに、かみついた。ディオゲネス、哲学者が。

かみついたのは、よくわからない部位、しかし、いやな、ガスが、噴出した!


すかさず、ぶちぶちの猫が、ひをふく、飛んでって。ぬけめない!

ガスが爆発!


・・・・・・・・・・


あたりいちめん、ぐちゃぐちゃ。少女は、木のかげから、いちぶしじゅうを、みまもっていた。


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