28
火月
新しい世界
格段に広がってきたネット社会。
今や日本人のほとんどが携帯電話を所持し、いつの間にかスマホに置き換わってしまっている。
パソコンも一家に一台かと思いきや、一人一台の時代である。
誰もがインターネットに触れられるようになった今、SNSという存在が大きくなっている。
かくいう私もSNSに依存していたりもする。
スマホひとつで全国、はたまた世界中の人たちと交流ができるのである。
楽しくないわけがない。
そして、SNSを利用している人たちならば少なからずこの感情を共有できるのではないだろうか。
「ネット上でちやほやされたい!」
過去の自分もそうだった。
いや、今もというべきか。
日々面白いことを探し、ネット上にその情報を拡散し、みんなの注目を浴びたい。
そのような感情を持ち合わせない人でも、そういう人たちがいるということは否定できない事実であると認識しているだろう。
当時、俺は専門学校生だった。
中学を卒業し、携帯電話を与えられ、ネット上で自分のコミュニティを広げることに必死であった。
もちろん学校生活も楽しかったさ。
男たちだけで馬鹿やって、遊んで、時には真面目に勉強して。
だが俺はSNSにはまっていた。
最初は友人の紹介でなんとなく登録しただけであったが、やっていくうちに徐々に楽しくなってきた。
共通の趣味を持つ人がネット上にはたくさんいるのだ。
最初は右も左もわからなかったのだが、そのSNSの仕組みを理解していくうちに、好きなアーティストのサークルを見つけ、そこに参加した。
今までリアルの世界において、こんなにも大勢と同じ趣味を語り合うなどほとんどしたことがなく、とても新鮮な気持ちだった。
今でも付き合いがあるほど仲良くなった友人もできた。
携帯電話一つで広がる世界がある。
そう思った。
ここまですんなり事が進んだように思えるが、実は俺はシャイな人間だ。
顔も分からない人とそんなに簡単に仲良くできるわけがないだろう。
「共通の趣味」という話題があり、その話題のおかげで会話が盛り上がり、仲良くなることができる。
キッカケが必要なのだ。
あとはネットに対する慣れだろうか。
「ネットはこわい」
という人も最近は減ってきたが、実際今でも怖いことには変わりはない。
だがそれも慣れである。
対処法さえわかってしまえばそこまで怯える必要はない。
SNSにおいて変な人や怖い人と出会ってしまったならば、その時点で関係を切ってしまえばいいし、運営側に通報すればその相手のアカウントを停止するなり罰則のようなものを与えることもできる。
そんなに簡単に関係を切れるということ自体が個人的には怖いと思ったりもしているのだが。
一度関係を築いた人とは、どんなに細くとも関係を残しておきたいと思ってしまうのでね。
前置きが長くなってしまったが、ここから俺が経験したことを話そうか。
冒頭でここまでSNSについて話したんだ。
SNSで知り合ったとある人物との話に焦点を絞っていこうと思う。
俺と、
彼女の、
これまでを。
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