第67話 ちびレオの退屈

※お久しぶりちびレオちゃん回です! あと取り敢えずギャグ詰めれるだけ詰め込んでおいたのでカオスです。





 アミメキリンとつなぎは再びモコモコに身を包みゆきの中を歩く。

 ゆきやまちほーで温泉にゆっくり入らずひたすら雪の中を歩くのはこの小説くらいでは無いだろうか。よしんばあるのであればもっと温泉を有効活用して欲しい。


「吹雪いてても、毛皮があれば平気ですね」


 ボロボロだったつなぎも一晩寝てすっかり元気になっていた。当小説では寝れば全快するシステムを取り入れております。さくばんはおたのしみでしたね。


 という話は置いておき、どうにもここ最近のゆきやまは普段にも増して一層天気が崩れやすく、二人は吹雪の中を進んでいた。ズ・ティはもう少し調べたいことがあることと、二人を守る為にも洞窟に残ったのだが。


「ズ・ティの話ではこれを温泉の地下にある浄化施設にセットして、海に流せば良いって話だったけれど」


 アミメキリンが懐に抱えているのは石油分解菌のフレンズが詰まったボトルである。あんまり乱暴に扱うといけないのでシェイクしてベストマッチとかは出来ない。


 ある程度の検討をつけ、ただひたすら前に進んでいるとやがて見覚えのある物が見えてきた。


「あ、あの時のかまくらがありますよ」

「あの時……」


 レーティングギリギリだったあの時。


「アミメキリンさん、せっかくだから一休みしていきませんか?」


「うーん、私あんまり疲れてないんだけれど……」


 悪天候の強行軍が続きだいぶタフになったアミメキリン。


「ちょっとだけ! 休憩するだけですから!」


「ちょっ! 近い近い!! なんか邪な気持ち混じってない!? まぁ天気も荒れ気味だし、ここ通りすぎると何にもないから休憩していきましょうか」


 そう言ってかまくらに近づく二人。しかし、何かに気が付いた。


「待ってください、声が聞こえませんか?」


「誰かが中にいるのかもしれないわね、でも一体誰が……」


 かまくらに近付き聞き耳を立ててみると、やはり誰かの声が聞こえてくる。


「はぁ……はぁ……」

「もっと……もっと……」



「誰か知らないけれど何やってんの!?」


 荒い息づかいと声に思わずツッコんでしまうアミメキリン。彼女がそこで見たのは────





「はい! あと15秒ですわよ!! あと15秒しか腕立て伏せ出来ないですわよ! 出しきる、最後まで出しきる、休まない、筋肉を追い込むのですわ!!」


 声を荒げるシロサイと


「ふぅ……はぁ……はぁ…………はぁ……!」


 汗だくになりながら腕立て伏せをするハシビロコウ


「3、2、1、0! いかがでしたか? しっかりと行えば5分で筋肉を追い込むことが出来るのです。筋肉は、裏切らない!」


 二人が筋肉体操していた光景であった。



「あら、アミメキリンさんお久しぶりです」

「久しぶり……はぁ……はぁ……」


 何食わぬ顔で挨拶してくる二人。


「な、なんでかまくらの中で筋トレしてるの?」


「それは勿論、寒いからですわ! 寒い時は運動して体を暖めるんですのよ!」


 それにも限度があるのではないかとアミメキリンは思った。そもそも汗かいたら後で大変な事になるのではないだろうか。


 という心配もあるのだが、そもそもの疑問がある。


「二人とも、一体何が目的でこんなところに?」


 つなぎの問いかけに、シロサイとハシビロコウは顔を見合わせてから答えた。


「それは─────」




「「家出したちびレオを探しに来た!?」」


 アミメキリンとつなぎが思わずハモる。

 ちびレオを忘れている人はへいげんちほー最後の方を参照くだしあ。

 


「そうなの、二人とも何か知っていない?」


 小首を傾げながら聞くハシビロコウ。可愛い。筆者はハシビロちゃんの目は前髪で隠れてて本当はぱっちりお目目説を支持しています。


「すみません、何も……」


「というよりも、何で家出したの?」


 あまりちびレオと関わる時間が長くなかった二人だが、あの面倒見の良いヘラジカやライオン達のもとから出ていく理由が見付からない。


「分からないのですわ。ヘラジカ様もライオンも魂が抜けたかのように気力を失ってしまって……」


「だから、私とシロサイで探しに来たの。ライオン軍からはツキノワグマが探しに出てくれてるんだけれど、見付からなくて……」





 ちびレオが家出した理由、それを語るために時間は少し巻き戻る。


────────────────────


「つまんない……」


 暇を持て余す獅子ここにあり。



 今日もへいげんちほーは快晴である。相変わらず盛況なけもマから少し離れ、へいげんちほーの端っこの方に、机や椅子が並べられた場所があった。文字通りの青空教室というやつだ。


 昨今の凶悪化するセルリアンへの対策、導入されつつある様々な文化の伝搬、そしてちびレオの教育……それらを行う為に試験的に設立されたのがこの施設(?)である。今日もオーロックスとアラビアオリックスが教壇に立っている。



 その名も……




「「ライオンへいげん大学のここが凄い!!」」



「学生数10人以上!!」

「へいげんとじゃんぐるに4つのキャンパス!!」

「創立3日!!」

「ヘラジカ軍とコラボレーションした授業!!」


「「へいげん魂ィ!!」」


 そう、ライオンへいげん大学である。ちなみにヘラジカへいげん大学もある。


 ジャングルにはジャガウーソまほう!学校があり、アンインブリッジ先生と名乗るずんぐりむっくりとした謎のフレンズがヤギの話術に対する防衛術を教えているとかなんとか。悪いことすると“僕はカワウソをつついてはいけない“とひたすら書き取りさせられるらしい。嘘です。



 そんな大学の授業が退屈でしょうがないのがちびレオちゃんなのである。


 思うままに遊びたい盛りのちびレオにとっては、座ったまま話を聞くことが我慢ならなかった。ボーっとしてしまい、考えた言葉がポロリと口からでてしまう。


「ユキ、どこにいっちゃったんだろ……」


 とある夜に出会った一人の少女、ユキ。全力で遊んだ翌朝、さよならも言わずにいなくなってしまった彼女。ヘラジカパパとライオンママが探してくれたけれど、どこにいったのかわからなかった。


 元気を無くしてしまったちびレオの為に、皆気を使って沢山遊んでくれた。


 しかし、どうしても考えてしまうのである。ユキと一緒にこれらの事を遊んだら、もっと楽しいだろうと。こんなに沢山の楽しいことがあったのだと、教えてあげたい。

 小さい子どもにとって、自分と同じくらいの歳の友達はかけがえのない存在である。大人であるフレンズばかりの中にいては尚更だ。


「まだ、探していないところあるかな」


 ちびレオは勉強道具のひとつである、島のパンフレットを広げる。


「へいげん、じゃんぐる、こはん、しんりん、みずべ……」


 どこも探したちほーである。そして、ちびレオは気がつく。


「こっちの方はまだ探してない……」


 島の東側にあたるちほーはまだ手付かずであることに。


「ゆきやま……ここは、寒いからユキも行かなさそう……」


 居たとしても白の中に紛れて分からないかな、とちびレオは心のなかで笑った。


「……ここは?」


 やがて、ちびレオはとあるちほーの施設に気がつく。


「ここ、フレンズが沢山集まりそう。それに……」


 それに、セルレオンであった自分を助けてくれた二人のフレンズ。その片方がここに住んでいると言っていなかっただろうか。


 今すぐ探しに行って欲しい。しかし、さんざん探して貰ったのに、けもマやセルリアン退治による治安維持に忙しいヘラジカやライオン、その部下たちにお願いするのは気が引けた。

 じゃあどうするか、自分の思うままに動く体は、この世にひとつなのだ。


「パパもママも忙しそうだし、探すの下手くそだから……私が探しにいかないと!!」




 翌日、ライオン城は大騒ぎとなる。ちびレオがいなくなったのだ。置き手紙を残して。



『いってきます ちびれお』



 そう、ちびレオはちゃんと行ってきますの挨拶が出来る良い子なのである!


────────────────────


「取り敢えずゆきやまでは見かけなかったわ、これ以上先に行っても遭難するだけだし、引き返す事をオススメするわ」


 そうアドバイスするアミメキリン。温泉もなくギンキタも居ないのでは迷った時点でアウトである。


「分かりましたわ、もしもちびレオを見かけたらへいげんへ戻るように伝えてくだサイ」


 つなぎが、外の様子を見て呟く。


「アミメキリンさん、何か吹雪止んできましたよ」

「本当ね、じゃあまた吹雪く前に出発しましょう」

「えっ! 全然休んでないのに~!」


 長引くかと思われたがすぐ止んだ吹雪。

 取り敢えず海洋汚染問題を解決しよう。そしたら、オオカミ先生がいるロッジにようやく到達できる。あんな事こんな事全部伝えて漫画にしてもらうのだ。苦労した旅も、それで全部大切な思い出になる。

 そんなことを考えながら、アミメキリンは再び歩き始めた。







 しかし、一難去るとまた一難がこの二人の旅路てある。アミメキリンとつなぎがそんな会話をしている間に、みずべちほーは大変な騒ぎになっていた。




 手がかりがなく迷宮入りかと思われた謎のヒトによるラッキービースト破壊事件、それが思いもよらない形で進展していたのだ。つまるところ、犯人が自分からその姿を現したのである。


 ビーチの側に設置された旧海の家的な建物。そこの中でオイナリサマは、正体不明の謎のヒトらしきものと対峙していた。


「つなぎはどこダ!! つなぎをだセ!!」


 黒い上下の合羽のようなものを着たその少女は、いきなりみずべちほーに現れるとつなぎを引き渡せと言い出した。捉えた人質と引き換えだと。


 あまりの唐突な登場に慌てるみずべちほーのフレンズ達。しかし、守護けものたる彼女は落ち着いていた。


「どちらにしろつなぎはここにいません。彼女が到着するまで、何とか時間を稼ぎましょう」


 オイナリサマは、あの手この手で機嫌を取りながら交渉を引き伸ばすことにしたのである。


 が、そんなに上手くいく訳もなく……


「そんなに慌てなくてもつなぎは来ますよ……ほらこのウニなんか美味しいですよ」


「もう腹いっぱい何だヨ!!」


 ガン!と料理が乗っているテーブルを蹴飛ばす。


「てめーらあんまり舐めてると人質がどうなっても知らないからナ!!」


 両手をワナワナと震えさせる謎のヒト。

 ちなみに出されている料理はサーベルタイガーお手製であり、味は絶品なのだ。


 料理が粗末に扱われている所をシェフは物陰から見てしまった。


「まさか、私の自慢のコース料理“ソバとウニとライチと茹でられしシマエビ“(お値段8ジャパリまん)が見向きもされないなんて……」


「仕方あらへんよ、満腹だったみたいやし……」


 クロヒョウが項垂れるサーベルタイガーを慰める。空腹は最高のスパイスであるがゆえ、満腹は美味しい食事の最大の敵なのだ。


 接待ナリサマと化したオイナリサマ、苦しい時間はまだ続く。


「そ、それならPPPの歌を……」


 食べ物では機嫌が取れないと察し、別の手段を取ろうとする。

 しかし、相手に悟られずに機嫌をとることは至難の技である。あまりにもあからさまなご機嫌とりに謎のフレンズは一喝する。


「遊びに来てるんじゃねエ!! ペンギン共のアイドルごっこに付き合ってられるカ!!」


 また蹴飛ばされるテーブル。殺気立つこっそり見てるファン達。中でも一際濃い殺気を放つ存在がマーゲイ。


「アイドルごっこ? は? さてはアンチだなテメー?」

「マーゲイ落ち着いて!! 私達気にしてないから!!」


 殴り込みをかけそうなマーゲイを嗜めるプリンセス。この場の緊張が限界に達しつつあることを察したオイナリサマは、話題を別の方向へ変えることにした。


「そ、そもそも本当に人質なんか取っているんですか……!?」


 オイナリサマのその言葉に、ニヤリと笑う謎のヒト。

 

「疑うのカ? イルカ共に命令してジャンジャンの身はこちらにあるんだゼ? おい! イルカ達!!」


 謎のヒトが手をパンパンと鳴らすと、何処に隠れていたのか4人のフレンズが彼女のもとに姿を現した。


「はい! ジャンプが大好きマイルカのマルカです!」

「同じくジャンプが大好きナルカですわ」

「ゆでたまご大好きバンドウ!」

「イッカクだ……お母さんはどこ……? ここ……?」


「自己紹介しろなんて言ってねーだロ!! そして3番目のバンドウイルカはおかしい!! イッカクにいたっては母親をファインディングしてるじゃねーカ!!」


 怒る彼女であるが、海のフレンズはゆったりゆらゆらマイペース、そんな激情もなんのその。


「まーまーいからないで! 私達イカじゃなくてイルカだからね!」


「落ち着くようにお歌を歌って差し上げますわ。素晴らしい~♪ 海の底~♪ 奏でるエコーのリズム貴方の為~♪」


 ミュージカル的な感じは出ない上、エコーはわりとフレンズ化したら使わなかったりする。あと魔女と取引しなくてもサンドスターがあれば足が生えるよ!やったねアリ○ル!


「うるせぇし面倒くせェ!! セルシップがサンドスター・ロウで操ってた海洋フレンズは有能だったのに何で私の操ったやつらはこんなに思い通りにいかないんダ…… おい! お前ら! さらってきたジャンジャンを連れてこイ!!」


「「「は~い」」」


 母を捜すイッカクを除いた三人が腕を縛られたジャイアントパンダを連れてきた。


「うわぁぁん! 捕まっちゃったですよぉぉ! おうちに帰してぇぇ!」


 ノーマルなジャイアントパンダの方を。


「パンダ間違えてんじゃねえかアアアアア!!」ツッコミパンチ!!


「ぺやんぐっ!?」


「ああ! まるかさんが謎の擬音と共にツッコミで吹き飛ばされましたわ!!」


「私は寝ている方のジャイアントパンダがジャンジャンだからって教えただろうがア!」


「だって両方寝てたんだもーん!! 仕方ないからどちらにしようかなてんのかみさまのいうとおり、できめたの!!」


「だったら両方さらってこいやアアア!!!」


「「「ごめんなさーい!!」」」


 何かこちらを放っておいてコントが始まったので、オイナリサマはこっそり人質回収を試みる。


(ジャイアントパンダ、貴方ならその手首を縛っているものを引きちぎれるのではないですか?)


 あいつらにバレないように、テレパシーを飛ばすオイナリサマ。返ってきた返事は情けないものであった。


(駄目ですよ~…… この手錠には私のパワーを封じ込める力があるんですよー……)


 よ~く見ると、縄ではなく布のようなもので縛られているのが分かる。


(それは、まさか……)


(そうですよ~、PPPライブ会場でしか手に入らない、直筆サイン入りPPPタオル……破ることなんて出来ないですよ~……)


(それ破ったらサイン入りタオル10枚あげますよ)


「奮っっっ!!!」バリィッ!


 ジャイアントパンダに迷いはなかった。


「こんな物で私を縛り付けることは出来ないですよ!! 人質がいなくなった今がチャンスですよ!!」


 謎のヒト達の方を向きなおしファイティングポーズをとるジャイアントパンダ。




「今からでも行ってジャンジャン拐い直してくるんだよあくしろヨ!!」


「なんでもう一回いく必要なんかあるんですか!!」


「お前が私に操られてるからだヨ!! いやなんで反抗出来るんだヨ!? サンドスター・ロウでしもべにしてる筈なのニ!? なんでエ!?」


「あ、あのー……人質脱出してますですよー……おーい……」


 しかして聞く耳持たずである。



「ああ……収拾がつくのでしょうかこれ……」


 オイナリサマの口から思わずポロリとこぼれたその言葉。アミメキリン達到着まで、あと30分ほど。頑張れオイナリサマ!!

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