しんりんちほー 選ばれし円卓のメシ達と秘密を暴く##7(アミメ7)

第28話 有罪、具材、自由自在

※新章突入です。裁判は作者の力量不足でカットなのです。逆転裁判を求めてる人は今すぐアミメロジックで検索するのです。





「はあ、はあ……」


 どれだけ走っただろう、どれだけ飛んだだろう。しかし、一向に辿り着く気配は無い。

 体力も気力も限界である。

 少しだけ、走る速度が緩んだ。疲れが、自然とそうさせてしまったのである。

 その瞬間、後ろから激しい声がかかる。


「オラオラ休んでる暇は無いですよ! ぐうたらしている飛べない豚はじゅるり!です! 脂がのってて美味しそうですからね!!」


「ひいい!」


 慌ててがむしゃらに走り速度を戻す。


 ここに安息は無い。痩せるまで、再び飛べるようになるまで出られない太った鳥達の行き着く終着点。


 いまだにここ、ミミーズ・バード・キャンプから生還した物はいないのだから。




────────────────────────────




「やっと辿り着いたわ……」



 アミメキリンは何とかとしょかんに辿り着いた。文字が読めない為、森の問題はガン無視である。


「つなぎ、大変な事になっていなければ良いけど……」


 前回へいげんにて、ちびレオ騒ぎで逮捕されてしまったつなぎ。しんりんちほーへ行く前に聞き込みをして、彼女に落ち度は無いことが分かった。


「証拠とかは無いけど……」


 裁判、というものを少し聞いたことがあるアミメキリンは、彼女の無実を証明するためには証拠が必要だとは理解していた。


「だからちびレオを連れていこうとしたんだけど、ライオンとヘラジカがまだ連れ回すには早いって言って、しかもどっちもちびレオの側を離れたくないから着いてきてくれなかったのよね……」


 とほほ、と項垂れるアミメキリン。


「でも、名探偵ですもの! 証拠なんか無くったって裁判を乗りきって見せるわ!」


 そう決意し、勢いよくドアを開けるアミメキリン。すると、そこには────




「僕が…………やりました…………」


「有罪なのです」

「確定なのですよ」



 もう裁判は終了してしまっていた。しかも、有罪判決であった。


 あと、三人はなぜかくるくる回る中華テーブルに座り、椅子も回る椅子でぐるぐる回って遊んでいた。



「………………この程度じゃ驚かないわ、いつもの事だもの」


 神やけもマ、魔法少女にセルリアン化したライオン。アミメキリンはとんでもハプニング体制がだいぶついていた。

 どんなことでも動じない精神は非常に大切である。




「あ、アミメキリンさん」


 つなぎは彼女に気が付き、手を降った。


「皆心配してたわよ、ちびレオも私のせいじゃないかって凄い気にしていたし」


 額を片手で抑えて、アミメキリンはため息をついた。


「ああ、その事は……一応今お話がつきました」


「罪を素直に認めれば軽くしてやると言ったのです」

「嘘はつきませんよ、我々は賢いので」


 ならば認めなければ罪が重くなると言っているような物である。これがしほーの闇とかなんとか。


 つなぎは続けて申し訳無さそうに話す。


「それに、セルリアンは服を着ていません。服の様に見えるのも体の一部。僕はいたいけな少女を騙して直接肌に触れる様なことを……」


「丸め込まれてる、丸め込まれてる!」


 ボディタッチの件を執拗に責められたのであろう。ヘラジカとライオンとちびレオは気にしていないと言っていた。フレンズは皆、女の子なので、お互いに邪な気持ちを抱くことなんて無いのだ、うん。


「そんなわけで有罪は確定したので次は処分についてです」


 博士は中華テーブルを右左に回しながらそう言った。DJコノハだYo。


「話を聞いてみたところ、そこのヒトに関する情報を集めているとの事。ですのでここは……」


「「りょーりです」」


「へ?」


 つなぎは良く分からず首をかしげた。


「罪を犯したフレンズには、皆の役に立つことをやってもらうのが決まりです」

「私達が食べたいという訳ではないですが、ヒトにはりょーりで貢献してもらうことにしているのですよ」


「りょ、りょーり……ごくっ」


 アミメキリン少し興味が出てきた。かばんのパーティで出てきた物は中々の美味しさだったからだ。あと絶対自分たちが食べたいだけだ。


「料理するだけで良いんですか?」


「うーん、基準は難しいですが……」

「どんな完成度のものでもりょーりすれば罪は許してあげるのです。そして、私達が以前食べたりょーりよりも美味しい、と判断すればヒトに関する我々が持っている情報を教えてやるのです」


 つなぎに拒否権は無かった。


「分かりました…… で、何を作れば良いんでしょうか?」


 博士と助手は互いに顔を見合せ、頷いた。


「やはりここは……」

「カレーを作って貰うのです!」




 その後、アミメキリンとつなぎの二人は図書館の本を読んで参考になるものを探していた。


「あんまり厳しい条件じゃなくて良かったわね」


 アミメキリンは本を読むつなぎの肩に手を置いた。


「ええ……しかしカレーとは、懐かしい単語です。多分フレンズになる前に何かしらつながりがあったのかもしれません。まぁ、食べたことがあるだけかも……」


「それで、作れそう?」

「ええ、まぁ作るだけなら」


 つなぎは立ち上がり、欲しい本だけ持って残りの本をしまうと部屋を出る。


「次は食材チェックですね」


 博士達が置いていってくれた食材に目を通す。


「にんじん、玉ねぎ、じゃがいも……肉以外の基本的な素材は揃っていますね」


「なら大丈夫ってことかしら」


「……逆に言えば食材で勝負できないということです。くそっ、こいつは難題だぞ……」


「ねぇつなぎ口調変わってない?」


 アミメキリンが恐る恐るつなぎに近づきながらそう言った時、つなぎが何かを手に取った。


「なんだこれはぁ!!!」


「ぴゃあああああ!!!」


 アミメキリンはガチビビりしてしまい、尻餅をつく。


「カレー粉……カレー粉だとぉ!! これでは誰がやってもあまり変わらない! 材料の調理の仕方や具材の切り方等で変わるとしても、前作った人間がどう作ったか分からない以上、オーソドックスなカレーにまとめざるを得ない! しかも甘口! 僕を馬鹿にしているのかぁぁぁ!!!」


「し、してないと思うわ! だから落ち着いて! カレー粉に親でも殺されたの!?」


 実はアミメキリンは博士と助手が、レシピ通りに作れば美味しい物が出来るように準備してくれているのを知っていた。そうしよう、とこっそり話しているのを聞いたのだ。


「アミメキリンさん、少し外してください。食べさせてあげますよ、本当に美味しいカレーをね!」


 そう言ってつなぎはアミメキリンを厨房から追い出し、バタンと扉を閉めた。


「だ、大丈夫かしら……」


 厨房からはガリガリゴリゴリといった音と、ダメだこれでもない! といった叫び声が響いてくる。


 これは長引きそうだと感じ、アミメキリンはとしょかんの探索に向かう。


 結局、つなぎが厨房から出てきたのは翌朝になってからだった。




 朝靄が残る中、一同は再び中華テーブルの前に集っていた。


「昨夜は頑張っていたようですね」

「期待して良いのですか?」


「勿論です、こちらにありますよ」


 つなぎはガラガラとワゴンで料理を運び、博士と助手の前に並べ、被せてあったクローシュ(料理に被せてある銀のボウルみたいなアレ)を取る。


「お待たせしました、つなぎの本格インドマサラカレー、です!」


 そう、つなぎは自分の記憶に微かに残るスパイスの知識を総動員し、カレー粉ではなくスパイスからカレーを作ったのだ。


「おお……凄い良い匂いがするのです」

「じゅるり……食欲をそそる香りです」


 ちなみに、マサラはまっしろはじまりのいろ、ではなくスパイスという意味で特にスパイスたっぷりなカレーをマサラカレーと言うとか言わないとか。


「このとてつもなく芳醇な香り、その秘密がこちらの僕秘伝のガラム・マサラです。ガラム・マサラはたくさんのスパイスを配合した物でカレーの仕上げに使うのですが、これの出来が香りをかなり左右するために苦労しました。実は隠し味にコーヒーを少し……」


「話が長いのです……もぐ」

「早く食わせろなのです……はぐ」


「もう食べてるじゃない!!」


 アミメキリンの突っ込みもよそに二人は大きく掬った一口を口の中に放り込み、よーく味わう。


「いかがですか?」



「…………ああああああああああああ!!!」

「…………が、がらいいいいいいいい!!!」


 机の上にあったコップの水だけでは足りず、水汲み場に直行する二人。


「そんなに辛いのこれ……ぺろ……うわ辛っ……」


 アミメキリンもドン引きの激辛使用であった。そもそも甘口食べてるフレンズにスパイスたっぷりを食べさせてはいけない。


 まぁつまるところ、つなぎごときがかばんちゃんに敵うわけが無いのであった。

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