心理戦

白蔵 盈太(Nirone)

第1話 問題編

Q「ねえ、午後時間空いてる?」


A「どんな話?」


Q「いや、大した話じゃないよ。時間ちょっとでいいからさ」


A「ちょっとでいいなら、ゴメンここで打ち合わせお願いできない?」


Q「え?午後空いてないの?」


A「予定表は空欄にしてるけど、ちょっと急用入るかもしれないからわざと空けてたんだ」


Q「いや実はね、いま俺の方で立ち上げてる『DFプロジェクト』についてどう思うか、関係者から意見や要望を募ってんのよ。それでお前の意見も聞かせてほしいんだ」


A「それ全員に聞いて回ってるの?」


Q「いや、DFプロジェクトに少し関わりがあって、いいアドバイスをくれそうな人を何人か選んで回ってる」


A「それなら僕なんかみたいな下っ端じゃなくてさ、販売2部長とか、企画部長とか、全体を見てる上の立場の人に聞いた方がよくない?」


Q「いや、できるだけ現場の担当者の生の意見を聞きたいんだ」


A「うーん。でも、DFプロジェクトは担当外で正直よく知らないわ。よく知りもしない僕がそんな無責任に意見を言ったら、逆に担当者のお前に失礼だよ」


Q「そんなこと無いって。じゃぁ、DFプロジェクトを今すぐ進めるべきか、しばらく様子見するべきかだけでも意見くれない?

 DFプロジェクトはお前だって完全に無関係ってわけじゃないんだからさ、そんな『俺知らねえ』みたいな無責任な態度はやめてほしいな」


A「いや、よく知りもしない部外者が横から口出す方が無責任だよ。だいたい、お前んとこのトップの山本部門長はどう思ってんのよ?」


Q「DFプロジェクトもさ、色々大変なんだよ。みんなからアドバイスを頂いて少しでもよい方向に持っていけたらなぁと」


A「部門長に方針、確認してないの?」


Q「いや、だからさ、みんなからアドバイスをもらって……」


A「部門長の方針が分からないのに、部外者の僕が意見出すのは……それはさすがに……、ねえ、課長どうしたらいいですかね私これ?」


(課長、肩を震わせながら必死で笑いをこらえている)

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