杉三長編 硝子の棺
増田朋美
第一章
硝子の棺
第一章
杉三の家。
食事をしている、杉三と、藤吉郎。
インターフォンが鳴る。
杉三「あれ、誰だろ。」
と、玄関に移動する。
杉三「はいはい、どなたですか。」
声「影山杉三さんでいらっしゃいますか?」
杉三「誰だ、丁寧に改まって。」
声「ちょっと、お願いがあってきました。」
杉三「どうぞ、開いてますよ。」
声「失礼します。」
杉三「だから、敬語なんて使わなくていいんだってば。悪いけど、上がってきてくれる?」
声「はい、ありがとうございます!」
と、ガチャンとドアが開いて、一人の青年が入ってきた。少しばかり、普通の人とは様子が違っていた。
青年「影山さん、僕を、弟子にしていただけないでしょうか!」
杉三「はあ、藪から棒になんだ?」
青年「だから、弟子にしてほしいと言っているんです。」
杉三「なんの弟子?僕は、教えることは何もないよ。」
青年「杉三さんは、着物で日常を過ごしているでしょう、だから、その着物を作ってみたいんですよ。」
杉三「ああ、和裁ね。僕はあいにく馬鹿だからね、教えることなんか何もないよ。だったら和裁学校に行けば?」
青年「いや、それができれば、お宅まで来ることはまずありません。僕には、そういうところへはいけない事情がありますので。杉三さんは、訪問着も仕立てることはできるそうですね。だったら、教えてくれたってよいのではないでしょうか。僕も将来は、そういう事ができるようになりたいんですよ。」
杉三「まあ、確かにそうなんだけどね、それは誰に聞いたんだ。」
青年「はい、お隣の蘭さんからです。」
杉三「蘭?」
と、そこへ戸が開いて、蘭がやってくる。
蘭「杉ちゃんごめんね!僕がちょっと口にしたばっかりに!」
杉三「ああ、蘭のお客さんだったのか。」
蘭「そうなんだよ。杉ちゃんの事を口にしたら、すぐに立ち上がって、こっちに来たわけ。」
青年「はい、いてもたってもいられなかったのです。」
蘭「そうだけど、いきなり杉ちゃんの家に押し込んで、弟子入りを志願するのは、マナー違反じゃないの?」
杉三「まあいいや。とにかく、彼の話を聞こう。上がってくれ。」
蘭「杉ちゃん、いいのかい?」
杉三「だって、理由があるなら聞いたっていいと思うけど?」
蘭「杉ちゃんも、優しすぎるな。」
杉三「当り前だ、蘭のお客さんであれば、必ず何か傷ついているのは、当たり前の話だからね!ほら、上がってくれ。」
蘭「ああ、とうとうあげちゃった。」
杉三「馬鹿吉も中にいるし、蘭も入れば?」
蘭「わかったよ。」
青年「お邪魔します。」
青年は、蘭と一緒に中へ入る。
食堂。
杉三「とりあえずそこに座ってくれ。はい、お茶。」
青年「はい。」
と、椅子に座る。
藤吉郎「こんにちは。」
青年「どうもです!あなたは、杉三さんの相方でえーと、お名前が、」
藤吉郎「木本。」
青年「そうですか。確か下は、藤吉郎さん。」
杉三「馬鹿吉でいい。馬鹿吉で。」
蘭「ああ、一度教えただけなのに。」
杉三「よく覚えているな。記憶力いいんだねえ。じゃあ、君の名前なんて言うの?」
青年「佐藤由紀夫と申します。」
杉三「佐藤由紀夫さんね。よろしくね。で、どうして僕のところに弟子入りしようかとおもったの?」
由紀夫「いや、事情があって、就職できなかったからです。」
杉三「へえ、事情って?」
由紀夫「はい、ちょっと、人には言いにくいわけなのですが、どうか、弟子にしていただけないでしょうか。」
杉三「だめ。弟子入りするんだったら素性が全部わかってから弟子入りしてもらう。」
由紀夫「はい、、、。じゃあ、言いますけど、あんまり漏らさないでくださいね。」
杉三「大丈夫。みんな口の堅い人たちだから。僕も蘭も。この馬鹿吉も。」
蘭「杉ちゃんは、いつも誰かに話しちゃうだろ。」
杉三「そんなことは関係ない。じゃあ、聞かせて。」
由紀夫「はい、僕は、十八からずっと入院していたんですよ。」
杉三「へえ、君はいま何歳?」
由紀夫「三十歳です。」
杉三「じゃあ、何年いたんだろう。僕は、計算ができないので。」
由紀夫「十二年いたんですよ。」
杉三「そんなに?」
由紀夫「はい。」
藤吉郎「どこが。」
由紀夫「どこがって?」
藤吉郎「痛いの?」
由紀夫「痛いじゃないんですけどね。」
蘭「心臓とか、そういうのですか?」
由紀夫「それでもないですよ。結果として、二十代は一度も病院から出たことがありません。恥ずかしながら。」
蘭「そんなに悪かったんですか。」
由紀夫「ええ、悪いのかいいのか僕はわかりません。でも、家族が帰ってくるなといっていたので、結果として十二年、病院にいました。病名、教えましょうか。皆さんこの病名を聞いて、すぐに追い出しても不思議はないと思いますが。」
杉三「気にしないでいいよ。もったいぶらないで言ってしまいな。そのほうがかえって楽だ。こっちも。」
由紀夫「じゃあ言いますよ。僕は、統合失調症。まあ、聞いたことはあると思いますけど。」
蘭「昔の精神分裂病とおなじですか。」
杉三「そうなんだ。でも僕は一切気にしないから、僕にはなるべく本当のことを言ってね。」
蘭「確かに、精神分裂病では、就職は難しいだろうね。それで、和裁をやろうと思っても不思議はない。そういう人で、伝統文化が好きな人は確かに多い。」
杉三「安心しな!和裁というもんは手さえ動けば誰でもできる仕事だからな。定年もないし、怖い上司に遭遇することも少ないよ。まあ、僕も和裁技能士の資格持っているわけではないけど、それでもたまに依頼をされることもあるし。役に立たないことは絶対にない。」
蘭「まあ、着物を着る人は、今は少ないから、仕事にありつくまでが大変だけどね。」
杉三「でも、着物を着たい人は大勢来ると、カールおじさんが言っていたことがあるよ。それに、和裁ができたら、店を構えなくても、依頼されることもあるからね。よし、じゃあ、早速やってみようか。」
由紀夫「本当ですか!じゃあ、弟子にしてくれますか!」
杉三「弟子じゃない。友達だ!」
藤吉郎「よかったね。」
由紀夫「ありがとうございます!じゃあ、近くに部屋を借りるなりしますので、、、。」
蘭「部屋を借りる?」
由紀夫「ええ。ちょっと前に、退院してきたばかりで、今は実家に住んでいるんですよ。でも、男がいつまでも親の近くにいてはいけないでしょ。だから、安いアパートでも借りますよ。」
蘭「しっかりしてるね。それで、分裂病になるとは、ちょっと信じられないな。」
藤吉郎「待って!」
蘭「何を待つんです?」
藤吉郎「ある。」
蘭「もう、単語だけ言われてもわからないじゃないか。何があるというんだ。もっとさ、しっかり、文章を作ってから発言してよ。」
藤吉郎「部屋。」
蘭「部屋なら、アパートかマンションを借りれば、部屋なんていっぱいあるだろうが。」
藤吉郎「部屋。」
蘭「それだけじゃわからない。」
藤吉郎「部屋。」
杉三「わかった!うちに空き部屋があるから、使っていいよ。」
藤吉郎「そう。」
蘭「そうって、部屋という言葉を三回繰り返しただけじゃ、何もわからないよ。だから苦手なんだ。」
杉三「まあいいじゃないか、通じれば。とにかくね、うちで居候してくれて全くかまわないから、ここで、ゆっくり過ごしてくれ。」
蘭「確かに、ここら辺のマンションは家賃も高いしね。それに、きっと君のような経歴では、障害年金くらいしか、収入減はないと思うから、まあ、それでマンションで暮らすことはまずできないでしょうからね。それだったら、杉ちゃんの家で暮らしたほうがいいかもしれないね。」
杉三「そうそう。あの空き部屋はどうせ、誰も使う人はいないから、いつまでもいてくれてかまわないよ。それに、ご家族だって、家にいてもあんまりいい顔しないんでしょ。だったら、うちに来てくれればそれでいい。三度の食事は保証する。」
由紀夫「わかりました。じゃあ、そうさせてください。住み込みで、弟子入りする生活なんて、夢みたいだ。」
杉三「あいにく、夢のような部品は何一つないけどね。」
由紀夫「そんなもの、必要ありません。ただ、和裁ができればそれでいいのです。」
杉三「わかったよ。じゃあ、道具、買いに行こう!」
蘭「杉ちゃん気が早いよ。確かに善は急げというかもしれないが。」
杉三「まさしく!じゃあ、手芸屋に行くぞ!」
蘭「僕が、タクシーを呼ばなきゃならないのね。」
由紀夫「いいですよ、蘭さん。番号を教えてくれれば、呼び出しますよ。」
蘭「よく気が付くなあ。」
藤吉郎「よかったね。」
由紀夫「わかりました、番号を教えてください。」
蘭「はい、これ。」
と、スマートフォンを取り出して、タクシー会社の番号を出す。
数か月後。
杉三の家、食堂。
由紀夫が、初めて縫った着物を、美千恵に見せる。
美千恵「へえー、こんなきれいに縫えるなんて、すごいじゃない。上手よ。」
由紀夫「ああ、ありがとうございます。」
美千恵「しっかり縫えているじゃあないの。柄だってちゃんとそろっているし。」
由紀夫「もしよかったら、差し上げましょうか。」
美千恵「まあ、でも、この年でこんな派手な柄は着れないわ。」
由紀夫「じゃあ、どうしようかなあ。」
美千恵「自分で持っておきなさいよ。こういうものは、一生の思い出になるわよ。杉三、あんたもよく指導したわね。」
杉三「いや、僕は教えただけだい。それに、馬鹿の一つ覚えなんだから。」
由紀夫「今度は袷に挑戦します。」
美千恵「ねえ、いっそのこと、和裁士の試験受けたらどうなのよ。ここまで上手にできるんだから、もしかしたら、独立できるかもしれないわよ。」
由紀夫「いや、僕は障碍者ですしね、、、。」
杉三「あれ、僕だって歩けないのに、こうして和裁をやっているぞ。」
美千恵「そうそう。そういうことはあまり関係ないわよ。こういう仕事は。それに、国からのお金で生活しているのは、やっぱり心苦しいと思うし。きっと、和裁の才能があるんだと思うから、いっそのこと、和裁でやって行ったら?」
杉三「そうだよ。こんな風にすぐできるんだから、きっと向いているよ。僕みたいな馬鹿じゃなくて、ちゃんと専門の先生に習ったら、絶対伸びると思う。」
由紀夫「でも、和裁の資格なんて取るのに高いんじゃないですか?」
美千恵「いや、最近の和裁学校は安いわよ。大学何かに比べれば。」
由紀夫「でも、毎日学校へ通うのも大変だしなあ、、、。」
美千恵「通信教育という手もあるわよ。それに、受講料だって、五、六万あればいいって聞いたわ。」
由紀夫「そうですか、、、。まあ、できるかどうかわからないですけど、やってみようかな。」
杉三「よし、決まりだね!じゃあ、いい通信講座を探してあげてよ。僕は、字が読めないので。」
美千恵「わかったわ。じゃあ、やってみようか。」
と、居間に置いてある、パソコンを立ち上げる。
杉三「寝食はここでしてくれていいからね。」
由紀夫「ありがとうございます!本当に感謝です!」
思わず涙を流してしまう。
数日後。本を読んだり、DVD教材を見たりして、一生懸命和裁の勉強をしている由紀夫。
やがて、袷の長着も仕立てられるようになった。
富士駅の改札口。
杉三「気を付けて行ってきてね!」
由紀夫「はい。頑張って行ってきます。」
杉三「あれだけ熱心に勉強したんだから大丈夫だろう。自信もって!」
由紀夫「自信なんかないですけどね。不安のほうがいっぱいですよ。」
藤吉郎「がんばれ。」
由紀夫「いやあ、どうかなあ、、、。」
藤吉郎「大丈夫。」
杉三「まあ、いざとなったら、運を天に任せるつもりでさ。これまでの集大成だと思って、思いっきり綺麗なやつをつくってこいや。」
由紀夫「はい、わかりました。では、行ってきます。」
と、改札を通って、ホームに向かって行く。
藤吉郎「大丈夫かな。」
杉三「大丈夫だよ。あれだけ一生懸命勉強してたんだから。そこら辺のチャラい学生とはわけが違うからね。本当は、そういうやつが活躍すべきなんだけど、なぜか、この日本では、そうはいかないようになっているのが、不思議でたまらないな。」
藤吉郎「そうだね。」
杉三「じゃあ、僕らも帰ろうか。」
数日後、杉三の家。
配達員「影山さん、郵便です。」
杉三「はーい、はいはい、はい。」
急いで戸を開ける。
配達員「はい、えーと、簡易書留ですね。住所がこちらなのでお届けしました。宛名は、佐藤由紀夫様になっていますが。」
杉三「送り主は?」
配達員「えーと、東京商工会議所様です。」
杉三「東京商工会議所、、、。あ、あの和裁のね!今呼んでくる、ちょっと待ってて!彼なら、僕のうちにいるんですよ。」
と、車いすで居間に戻る。
杉三「おい、通知が来たぞ!早く受け取れ!」
由紀夫「わあ、いよいよ来たか。あの時、ちゃんと縫えなかった箇所があったからなあ。」
杉三「そんなことは関係ない。さっさと受け取れ。」
配達員「はい、佐藤由紀夫さま。ご本人様でよろしかったですか?」
由紀夫「はい、そうです。」
配達員「わかりました。じゃあ、こちらですね。どうぞお受け取りくださいませ。」
由紀夫「ありがとうございます。」
と、配達員から、封筒を受け取る。
配達員「はい、確かにお渡ししました。」
杉三「ご苦労様。また来てね。」
配達員「はい。わかりました。次がありますので。」
杉三「また来てね。」
配達員は、急いで郵便車に乗りこんでしまう。
由紀夫「ついに来た。きっと不合格だ。もうだめですかね。」
杉三「とりあえず、中に入ろうぜ。」
と、居間に入る二人。
杉三「おい、馬鹿吉、通知が来たぞ。じゃあ、運命の瞬間だね。開けてみて!」
由紀夫は、杉三から鋏を受け取って、封を切る。
由紀夫「きっと、不合格ですよ。あんまり期待しないでくださいよ。二人とも。」
藤吉郎「そうかな。」
封筒を開けてみる由紀夫。そして、中に入っている書類を読んでみる。
杉三「僕らは文字を読めないんだから、声に出して読んでみてくれよ。」
由紀夫「な、なんだこれ!ど、ど、どういうことだあ!」
杉三「なんだ、何が書いてあるんだ!」
由紀夫「和裁検定試験、合格証書、、、。」
藤吉郎「よかったね!」
杉三「絶対そうなると思ってた!」
合格証書を落としてしまう由紀夫。
杉三「こら、せっかくの免状を落としてはダメだろう。」
由紀夫「わあ、すみません、これではやっぱりだめだ。」
藤吉郎「ちがうよ。」
杉三「来年は、もう少し上のランクに挑戦してみるといいよ。それで、何れは、一級を取ってさ、和裁の指導者になっちゃえ!」
由紀夫「いやあ、そんなことはできますかねえ。」
藤吉郎「できるよ。」
杉三「はじめっから、できないといって、あきらめちゃだめだ。そんなことは考えず、どんどん前へ進まなきゃ。僕みたいに文字が読めないわけでもないんだからな。これから、どんどん、自分の道を切り開いていってね!じゃあ、今日の晩御飯は、カレーを作ってお祝いだな!すぐに材料を用意しなければ。」
と、台所に向かって行ってしまう。
藤吉郎「おめでとう。」
由紀夫「ありがとうございます。まあ、まだまだ、和裁の世界ではひよっこのようなもんですが。」
藤吉郎「おめでとう。」
由紀夫「何回も言われると、照れくさいですよ。」
ガチャンと音がして、美千恵が帰ってくる。
美千恵「ただいまあ。ああ、今日も疲れたわ。最近年を取ったなあって感じるのよね。あら、カレーのにおいが充満してる。どうしたのかしらね。」
藤吉郎「おめでとう。」
美千恵「おめでとうということは、通知が来たのね。つまり合格って解釈していいのかしら?」
藤吉郎「はい。」
美千恵「由紀夫さん、受かったの?」
由紀夫「はい、まぐれだとは思うのですが、合格いたしました、、、。」
美千恵「まあ、よかったじゃない!私からもおめでとうって言わなくちゃ。よかったわね。じゃあ、ケーキでも買ってこようかな。今日はお祝いね。」
由紀夫「いや、いいですよ、ケーキなんて。誕生日でもクリスマスでもないんですから。」
美千恵「いいえ、こういう時は盛大にお祝いしていいんじゃないの。じゃあ、杉三、今からケーキ買ってくるから、あんたはカレーを作って頂戴ね。」
由紀夫「いいんですってば。」
美千恵「ダメダメ。こういう時こそケーキは食べなきゃ。どんな感じのケーキにしようか?イチゴショートは苦手かな。女の子ではないものね。」
由紀夫「ああ、できれば、チョコレートとか。」
美千恵「チョコレートね。ガトーショコラみたいなそういう物が男向きになるかもね。杉三、頼んだわよ。それでは、ケーキ屋さんに行ってきます!」
美千恵は、外へ出て、ケーキ屋さんへ歩き出してしまった。
杉三は、台所でカレーを作り続けている。
杉三「今日のルーは、いつもよりも超高級なものを使ったぞ。商品名はわからないが、このルーが一番うまいんだ。」
と、ルーの箱を由紀夫に見せる。
由紀夫「杉ちゃん、これ、ホテルカレーじゃないですか。一般的な人には、なかなか入手しにくいルーですよ。」
杉三「そういうのか。商品名はどうでもいいが、これは一番うまいから、こういう特別な日にしか出さないルーだよ。」
由紀夫が、冷蔵庫を除いてみると、大量のカレールーの箱がぎゅうぎゅう詰めに入っている。
由紀夫「こんなにいっぱいカレールーが!」
杉三「当り前だ。カレーほど奥の深い料理はないと思う。今日の肉も、いつもの煮込み用ではなく、アキレス腱ね。」
由紀夫「そ、そんな高級食材、煮込むの、時間かかるでしょう。」
杉三「時間がかかればかかるほど、筋はうまいの。具材によって、大幅に煮込み時間が違うのもカレーのすごいところ。」
と、鍋に入ったカレーをぐるぐるとかき回す。
玄関の戸が開く音。
美千恵「買ってきたわよ。ただのガトーショコラではなんかつまらないから、ザッハートルテを買ってきた。」
と、ケーキの入った箱を、どしんとテーブルに置く。
由紀夫「ケーキの王様じゃないですか。そんなものを食べていいのかなあ。なんだか照れくさいどころか、申し訳ない気がしてきた。」
美千恵「何を言ってるの。主役がそんなに頼りないんじゃ、せっかくのザッハートルテが泣くわよ。」
藤吉郎「食べて。」
由紀夫「藤吉郎さんにそういわれたら、嫌でも食べなきゃなりませんね。」
藤吉郎「おめでとう。」
美千恵「さあ、お祝いの準備はできた?」
杉三「カレーができたよ。」
美千恵「じゃあ、席について、お祝いしましょうか!」
杉三がカレーの皿をテーブルに置いたので、全員席につく。
美千恵「じゃあ、合格を祝って乾杯!」
と、湯呑を持ち上げるが、
杉三「馬鹿吉はできないぞ。」
美千恵「そうか。ごめんごめん。それならどんどん食べちゃいましょ。」
杉三「そうだね。いただきまあす!」
と、カレーにかぶりつく。
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