心臓の声
雨吹 零
舞い込む面倒事
全く……、ふざけるな。
私は面倒臭い事は嫌いなんだから。
私は今病院にいる。
下校中、家の前で急に意識を失い、倒れたらしい。隣に住んでるお婆さんは買い物に行こうとしたところで私を見つけ、急いで病院に連絡した。私が救急車で運ばれている時、病院から連絡を受けたある人物 は、急いで仕事を抜け、家から最寄りの病院まで血相を変えて車で向かって来ていた。病院についてすぐ、私は意識を取り戻した。私はナースコールで看護師を呼び、レントゲンやら診察やら色々させられた。それらが終わり、落ち着けた時に今に至るまでの経緯を病室で花を生けていた看護師のお姉さんに説明してもらった。そして私は人選ミスしたことを悟った。そのお姉さんは何度も何度も「お婆さんには心から感謝をしなさいよ?」と言ってくるのだ。私はそのお姉さんが鬱陶しくて、早く仕事に戻ってくれないかと思っていた。その瞬間、勢いよく横扉が開けられ、反動で扉が半分閉まりそうになるのを右手で止め、静かに中に入り込んだ。そして、ゆっくり右手を上げた。次の瞬間、私は左頬を打たれた。私と看護師は言葉が出なかった。1、2秒後、私に説教を垂れていた看護師が悲鳴をあげた。
私は、叩かれた私よりも気が動転している看護師を無視して、目の前の人物を睨んだ。視線に気付いたのか、その人物も看護師から目を逸らして私を見た。数秒間叫んで気が済んだであろう看護師が人を呼びに病室を出て行った。その間も私達は、微動だにせず互いを睨み合っていた。急いで来たのか、入ってきた医者や看護師達は息を切らしていた。深呼吸をしてから一番偉そうな見た目の医者が言った。
「貴女は、どちら様ですか?」
その人物は一度瞬きをしてからゆっくりと振り向いて言った。
「私はこの子の母親です。」
あー、面倒臭い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます