(陸上部+帰宅部)÷2=佐藤良祐
六月。佐藤良祐は今日も家に帰る。陸上部員のいる前庭に背を向け、いかにも用事があるような雰囲気を漂わせる足取りで、誰よりも先に校門を抜けた。真っ先に山手線に足を踏み入れ、一息ついてからバッグの奥底に沈んだipodを手探りで探した。
「肘当たってんだけど」
「す、すいませんでした。」
チッ
道中でこんな人に絡まれたとしたら、少しは学校に留まるようになるだろうか。そんなことを考えながら、佐藤は渋谷駅のホームに逃げた。
七月。佐藤良祐は今日も部活に出る。廊下でだらだらと着替えを済ませて、窓から部員が集まっていることを確認してから階段を降りる。
「お前この前までほとんど来てなかっただろ。」
「いや、だって面倒くさいじゃん?」
「ふざけんなよー」
部活に出たは良かったが、その日はひどくキツいメニューだった。最後の方に至っては、下手したら最初のジョグのペースにもついていけないような状態だった。当然メンタルは傷つき、また来よう、とは思えなくなる。
午後4時43分。ああ、あの頃に戻ってしまいそうだ。
「一学期の部活はこれで終わりです。二学期まで部活はないですけど、家でもストレッチと筋トレは個別でやっておいてください。それじゃ、これで陸上部の練習を終わります。」
「ありがとうございました。」
明日どうするのか、これから自分はどうなっていくのか。二学期になれば体育祭がある。徒競走とリレーは絶対勝ちたい。とりあえず八月は毎日部活に出て、九月になってから考えよう。いや、でも面倒くさいなー。部活出ても速くなれるかなんて分かんないし、すぐ帰ってゲームしたいな…。佐藤良祐は悩みに悩んだ。そして一つ、思い立った。
そうだ、来週から夏休みじゃん。
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