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後日改めて、病院で詳しく検査した。
ギリギリまで、私は僅かながら期待感を抱いていた。
きっと何かの間違いだろう。
ひょっとして機械の故障だったでは。
そう思わなくては、不安を拭いきれなかったのだ。
しかし、思い通りに事は進まない。
「検査の結果ですが…」
間違いなどではなかった。
検査結果が書かれた資料をこちらに見せながら、医師が詳細を話していく。
右耳、高音域低音域共に正常。
左耳、低音域正常。
左耳、高音域は…。
「ほぼ聴こえていないようですね」
隣で母が不安げに眉を下げた。
思いの外、私はもうあまり驚かなかった。
学校での聴力検査が一度目、今回で二度目だったからだろう。
ここで受けた検査は、今まで学校で受けてきたものとは異なっていた。
通常行うのが、左耳の高音域、低音域、右耳の高音域、低音域の4パターンだとすると、今回私はもっと沢山もっと時間をかけて調べられた。
例えば、始めは音を小音量で流し、徐々にボリュームを上げていく中で、いつ気付くことが出来るか。
例えば、ヘッドホンから人混みを模した雑音を流し、その状態で音を聞き取れるかどうか。
その都度、嫌という程思い知らされたのだった。
どれを行っても、必ず左耳だけは高音域だけは全く聞き取ることが出来ない。本当は音を流していないのではと思わず疑ってかかる程。
私にとってもはや無音でしかなかった。
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