2

後日改めて、病院で詳しく検査した。




ギリギリまで、私は僅かながら期待感を抱いていた。



きっと何かの間違いだろう。

ひょっとして機械の故障だったでは。


そう思わなくては、不安を拭いきれなかったのだ。



しかし、思い通りに事は進まない。




「検査の結果ですが…」


間違いなどではなかった。


検査結果が書かれた資料をこちらに見せながら、医師が詳細を話していく。


右耳、高音域低音域共に正常。

左耳、低音域正常。


左耳、高音域は…。

「ほぼ聴こえていないようですね」



隣で母が不安げに眉を下げた。



思いの外、私はもうあまり驚かなかった。



学校での聴力検査が一度目、今回で二度目だったからだろう。




ここで受けた検査は、今まで学校で受けてきたものとは異なっていた。


通常行うのが、左耳の高音域、低音域、右耳の高音域、低音域の4パターンだとすると、今回私はもっと沢山もっと時間をかけて調べられた。


例えば、始めは音を小音量で流し、徐々にボリュームを上げていく中で、いつ気付くことが出来るか。


例えば、ヘッドホンから人混みを模した雑音を流し、その状態で音を聞き取れるかどうか。




その都度、嫌という程思い知らされたのだった。


どれを行っても、必ず左耳だけは高音域だけは全く聞き取ることが出来ない。本当は音を流していないのではと思わず疑ってかかる程。


私にとってもはや無音でしかなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る