前田式翻訳『わが闘争』

前田薫八

家庭の中の両親1

 今思うと、それは幸運なことであった。運命がブラウナウ・アン・インという土地に私を生んでくれたことが、だ。


 この小さな町は、二つのドイツ人の国家の国境に位置している。その二つの国家の再合併は、私たちのような若い世代の生活を豊かにしてくれると考えられた。


 ドイツ、オーストリアは偉大なる大ドイツに戻らなければならない。しかも、それは経済的な理由からではない。決して、そう、決してそうであってはならないのだ。


 たとえこの合併が経済的な視点から見て重要ではないとしても、たとえそれが有害であったとしても、それでもこの合併は行わなければならない。一つの血は、一つのドイツ国家に集まるべきなのだ。


 ドイツ国家は私たちの子孫をひとつの国家にまとめあげない限り、植民地政策に対する正当性を失っているのだ。ドイツがドイツ人を最後の一人まで引き入れるが、日々のパンすら保証できなくなったとき、困窮により、国外への領土拡大という道徳的な権利を得るからだ。鋤が剣になり、そして戦争の涙から将来の世代のためのパンが育つのである。


 だからこそ、私はこの小さな国境の町が偉大なる使命のシンボルのように思っている。

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