《ゲムトモ版》お隣さんと私

時計 紅兎

第1話 あの日の落とし物

小さい頃はいつも日常で夢を見ていた。


ある時友達と遊んでいると少し変わった鉄屑を拾った。


それはただのゴミだと分かっていた。


でも、それをただのゴミで終わらせるのが嫌で誰にも言わなかったけれどその鉄屑は“宇宙人がUFOを動かす為の鍵”なんだって私は過程したんだ。


ただ、それだけの事なのにすごく楽しく感じた。


いつか、公園で何かを探す少年と出会ってその子供は実は宇宙人なんだって。そのいつかを楽しみに思っていた。


そんな日は来るはずがないのに。


それから気が付けば10年以上経っていた。

それで偶然子供の頃の物を整理していたらその鉄屑が出てきた。今見ると当時より汚らしい鉄屑で私はそれをすぐに捨てようと思った。


でも、何だか子供の頃の自分を捨てる様な気がしてやっぱり捨てられなかった。


私はそれを持ったままコンビニに買い物に行った。その帰り道何と無くだけど当時それを拾った公園に行った。


公園って言うのは駐車場や空き地と違ってそうそうに無くなる事はない。でも、若干遊具なんかは変わってたりして違和感を感じる。


「こんにちは」

後ろから声を掛けられて振り向くとそこにはお隣さんがいた。

「こんにちは。お散歩ですか?」

私はそう挨拶をした。

極普通のお隣さん。お隣さんは少しはにかんだ様に

「散歩もあるけど探し物かな?」

と言った。

「意外と公園で物をなくすと出てこないんですよね…」

私は公園の子供たちを見ながらそう言った。

「まあ、それに僕がここでソレをなくしたのはずっと前ですから」

私はそう言われてハッとしてお隣さんの顔を見た。

お隣さんは不思議そうな顔をしながら私を見た。


私はポケットからあの鉄屑を取り出した。

お隣さんは少し驚いた様な顔をしていた。


「宇宙人って本当にいたんですね。しかも、隣に」

私がそう呟くと、お隣さんは一瞬目を丸くしたがふわりと微笑んで

「僕の探し物を持ってる持ってる人がいるなんてね」

と言った。


私はそれをそっとお隣さんの手に渡そうとした。でもそれと同時に服の裾を引っ張られた。


そちらを見ると10歳くらいの男の子がジッと私を見つめていた。

「それ、返して。ぼくのなんだ」

その子供はそう言った。

「え?でもこれは…」

私がそう言うとお隣さんが私の手からその鉄屑を取ってその子供に渡した。


「お隣さん?!」

驚いていると、男の子は可愛らしく笑うと深くお辞儀をして遊具の方へ走って行った。


「いいんですか?あれはお隣さんの大切な物じゃ?」

私が驚きながらそう言うとお隣さんは黙ったまま微笑んでさっきの男の子を指差した。


男の子は友達らしき子供たちと私達が子供の頃地球儀と呼んでいた遊具に飛び乗った。


そして、さっきの男の子はその鉄屑を中心の柱の上にそれを置いた。

すると、誰も押していないのに地球儀はくるくると回りだしてふわりと浮いた。


子供たちは嬉しそうに内側から手を振っていた。

そのままジッと見ていると地球儀はテレビの電源が落ちる様に消えてしまった。


「あれは、一体…」

私が唖然となりながらそう呟くとお隣さんは飄々と

「宇宙人だったんじゃないの?」

と言った。


私はその日以来どこの公園に行ってもあの遊具を見た事がない。


「ところで、お隣さんの探し物ってなんだったんですか?」

私は帰り道にお隣さんとコンビニで買ったうまい棒を食べながらそう尋ねた。

お隣さんは空を見上げながらはぐらかす様に

「子供心かな」

と言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る