第2話 3月7日
梅の花 散る 弥生。
ふいに呼び出された、夕暮れの公園。
ベンチで ぽつり、ぽつりと歯切れ悪く
とりとめのない話をしだす、
伏目がちな彼方。
目を合わせない、何時もと違う様子に
不安が募る。
「ねぇ、どうしたの?」
…。
此方を向いた彼方は、決意を秘めた目に
私を写した。
・・・。なんだか怖い。
聞くのが 怖い。
「僕は…。××という病気にかかっている。
明日 入院するんだ。
命が、もうすぐ散る・・・ 桜が咲く前に。」
耳を塞いだ。
視界はぼやけて みえない。
嘘だと言って、お願いだから。
「ホワイトデーにお返しできないから…
知ってたんだ。 君の気持ち。」
告げずに終わってしまうの?
私の恋心は
風だよ 僕は 君の傍を駆け抜けた風 僕を忘れて…'
目を伏せた彼方。
なおも何か言おうと口を開きかけ…
「風には 包んでくれる風もあるんだから!!
あったかい風だってあるんだから…!!!」
突然、大きな声で遮った私に
ビックリしたように目を見開き、それから微笑んでくれた。
綺麗で 儚くて・・・ 抱きしめてくれた。
私の頬と、彼方の肩が 濡れていく
さよなら…
囁きが 耳を掠めて 消えていく。
季節は巡り、私はあの人と同い年になった。
思い出すと 今でも潤みだす瞳 涙が零れそうになって、
見上げた空は ぬけるような 青さをたたえる。
桜がもうすぐ咲くだろう
あたたかい風が 吹いているから
巡り行く季節 置いてきた... 箔對店主 @hacutai-tenshu
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