第10話 キモイは好き

「今日からみんなと一緒に過ごすことになる転校生、コイケ ミナさんです」

「うわー、めっちゃ可愛い。 俺、股間がムズムズしてきた」


「ちょっと、やめてよぉ、男子~。 トオルマジキモイ」

「お前、股間がムズムズしたことないの?」

「だからやめてって、キモイから」


「俺、お前といるといつもムズムズするぞ」

「!? キモイキモイキモイキモイ」



「あのさ、トオル」

「どうしたアイ?」

「転校生のミナちゃんと、私どっちが、その、ムズムズするの?」

「ん? なにが?」

「だーかーらー。 どっちが……。 その、股間ムズムズ……」


「うーんとね、アイの方がムズムズするかな?」

「ほんとぉ!?」


「アイは、俺といるとムズムズするか?」

「なに女の子に聞いてるの!? キモイキモイキモイ」


「あ、今、ムズムズした」

「キーモーイー」



「ようアイ。 今帰りか?」

「うん、吹奏楽部の部長って結構ハードなのよね。 トオルはどお?」

「うーん、後輩たちはいい奴ばっかだし、勝手にまとまってくれてるし、サッカー楽しいし、部長じゃないときとかわらないかな?」


「そっか……」


「じゃあ、俺、あっちだから」


「あの、トオル……。 私、あなたの事考えると胸がドキドキして、もう、どうしようもなくて」

「キーモーイー」

「……」


「うそうそ、昔のお返し」

「もう」


「そういえば、最近、言わなくなったな。 俺、お前に言って貰う為に色々頑張ってたんだぞ。 キモイっていうのがお前の愛情表現だと思ってたんだけどな」


「そういうことじゃないわよ……。 なにいってるの、キモイ」



素直に好きと言えない女の子。


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