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「あの、マスター、お聞きしてもいいですか?」

 しばらくしてシミズさんが手洗いに立った時、今度は男性が話しかけてきた。

「もちろんです、何でもどうぞ」

 短髪の髪がよく似合う、誠実そうな男性は真剣な顔をして言った。

「あの、上手く行くと思いますか?」

 え、何のこと? もしかして・・・?

「今夜、彼女に告白しようと思うのですけど、上手く行くと思いますか?」

 ついビックリして一瞬固まってしまう。それを見た彼は不安そうに眉を下げた。

「やっぱり俺ではダメでしょうか? 自分からは誘えないような軟い男は」

「今夜は彼女からのお誘いだったのですか?」

 って知ってるけど。

「はい。グループでは何度か遊びに行っていたんですけど、意気地がなくて誘えなくて。そうしたら彼女から誘ってくれたから」

「と言うことは何も嫌いではないと言うことではないでしょうか」

 女の子から誘ってくるくらいだぞ? 好きじゃないとできなくない?

「いえ、そうとも限りません」

「おや、どうしてですか?」

「だって、俺と彼女以外はいい感じの雰囲気なんで。だから仕方なく俺を誘ってくれたって言う可能性も捨てきれないと言うか」

 あー、なるほど。可哀相な子だから誘われたかもって思っているのか。そんなことないのに。

「そうでしょうか? シミズさん、とても楽しそうでしたけれど」

「えっ、そうですか?」

「ふふ、えぇ」

 つい微笑んでしまったのは彼もシミズさんと同じ表情をしたから。やっぱりこの二人、お似合じゃないか。

「二人で何話してたんですか?」

「わっシミズさんっ」

「私も仲間に入れてくださいよっ」

 大丈夫、聞かれてないよ。ちゃんとシミズさん帰って来るの見えていたから。

「男同士の秘密ですよ」

「えーなんか怪しいなぁ。ふふ、あ、グラス空いちゃいましたね。次、何にします?」

「俺カクテルはあんまり詳しくなくて」

「私も定番ばっかりだからなぁ。マスター、何かオススメお願いしてもいいですか?」

「もちろんですとも。お任せください」

 二人に真っ赤なカクテルを贈りましょう。今夜、どうか上手く行きますようにと思いを込めて。

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