第157話「アイドルとのっぺらぼう②」


 アンキャナーはシラの姿で地下帝国を見て回ったが、祭りの事はよくわからない様子。

 それを聞いたザジは現状を考えて語る。

 

 「ディルムンは人間の憑依体を呼び込んで遊んでもらう祭りです、色んなルールで遊ぶアトラクションです」

 

 アンキャナーはそれを聞くと感心したかのように、頷いて言う。

 

 「確かにそれなら霊力を貯めるに最適だろう、効率が良くない様だが......面白いと思う」

 「コンテンツというのは寂れるのも早い、よって飽きが来ない工夫が必要だろう」

 

 「そうですね......フフフ(早くボディの事を聞き出さないと......)」

 

 アンキャナーとの会話に慣れるザジ、危うくそのまま役に成りきり過ぎて女の子になってしまいそうである。

 アンキャナーはそのまま大通りを歩く、そして途中で高台に移動するべくエスカレーターに乗る。

 ザジ(子)も追ってエスカレーターに乗った。

 

 行き先はまるで夜景のように綺麗な街灯の光る光源の海。

 

 地下帝国が広く一望出来る高台。

 アンキャナーはここで何かを思い出す様に呟いた。

 

 「素晴らしい都市だ、私の故郷を思い出す......」

 

 「故郷ですか? ここと同じくらい大きいんですか? 」

 

 アンキャナーの呟きにザジ(子)はつい反応してしまう。

 アンキャナーは続いて呟いた。

 

 「そうです、私の故郷は最も人間の都市を真似ていた、人間に近い位の有機霊体投影ボディを作り、まるで人間に成りきる程に精巧に再現されていた......」

 「故に自身こそが新人類だと信じて止まない位......」

 

 「へ、へええ(何か凄い事を暴露されてる気がする......)」

 

 アンキャナーの唐突な話の降りの対応に困るザジ、だがボディの情報にたどり着くなら聞き流せない。

 

 「私の本当の霊体はその素体の有機型投影ボディが姿として反映され、このような"のっぺらぼう"なのですよ」

 

 「ああー! なるほど、自身の生まれがそのなんとか素体だから、霊体もそのままなんですか......へええ......(あれ? それじゃあ、この人って人間じゃなくない? )」

 

 アンキャナーはここでザジの霊体の表情が見れないのが災いしたのか、怪しまれている素振りも読み取れない様子。

 

 「あああ、すいません、つまらない身の上話ですね......ザジ子さんは何か私に聞きたい事でも有りますか? 」

 

 正にわたりに船、ザジはついにボディの事を聞くことが出来る。

 ホッとしたザジ(子)はボディの入手先について聞く。

 

 「その......シラの姿のボディは何処で手に入れたのですか? 」

 

 アンキャナーはそれを聞かれると、特に気にせず語りだし始めた。

 

 「噂でシラが以前、この都市に潜入したと聞きまして、彼がここでの仕事を終えた際に置いていった"サブボディ"を勝手に使わせて貰いました」

 「......その内部に取り付けたあった"霊体送信システム"をハックして私が乗り移ったんです、特に彼に交渉したわけではないんですよ」

 「どうしてそんな事を聞くんです?」

 

 アンキャナーの答えにザジ(子)は教団の関連性が薄いと思ったのか安心すると、アンキャナーの言葉に対応すべく理由を切り出した。

 

 「シラはとある教団の方々だったと思うんですが、私はその教団の人にあまり良く思われてなくて......その貴方も仲間ではないかと警戒して後を付けたんです、......すいません」

 

 アンキャナーは「ああ、そうだったのか」と言う様な身振りをすると、会釈して紳士的な顔をシラで投影して答える。

 

 「なんと......! それは失礼した、あの教団のモノたちに怨恨の有る方だったとは......」

 「ですがザジ子さん......」

 

 アンキャナーはようやくザジ子が自分を追ってきた本当の理由を知った、そしてここでとても重い......

 

 含みのある言葉を語る。

 

 「ご安心下さい......」

 「貴女の脅威であった"久遠坂シラ"とその意思を共にした者達"天国教団"は......」

 

 アンキャナーはシラの顔で、その"とある顛末"を言う。

 

 「全滅しましたから......」

 

 

 ******

 

 「とまあ......色々ありまして、フォッカーさんとカンチョウは会社で引き込もって下さい」

 

 キャンパーメンバーの集まる霊力投資会社では、儀式から帰ってきたユナがザジ以外の全てのクルーに札の事、未来の事を説明していた。

 補助を行う為に紀伊も付いてきている様子。

 ここでフォッカーが困惑して言う。

 

 「なんつーか......一気に謎が進んだなあ、俺のスキルで世界が将来的にヤバい? 」

 

 「全くもって迷惑極まりない、私のスキルとフォッカー君のスキルを採用する未来霊とか、御目が高いのか節穴なのかわからん! 」

 

 フォッカーとカンチョウは憤慨せざる終えない様だが、それよりも未来霊がディルムンでスキルを回収することに驚いているようだ。

 

 「で......ユナちゃんの札って何処から出てきたん? 箱には札は無かったんやろ? 」

 

 話の中でねぱたが気になっていた事を語る。

 紀伊がその部分について語る。

 

 「時間を超えて何かを送り込むとすれば、"観測"が成されるタイミングが妥当であると思われるのです、つまり札の箱が"空いた時"が時間干渉の"ポイント"になっていて......」

 「本来無かった札をあった事にして、世界線を修正し引き寄せたと見るべきなのです」

 

 ねぱたの率直な感想はこうである。

 

 「うわ......めんどくさ過ぎへん? 本当は札を無くしてた"この世界線"のユナちゃんをおもいっきり巻き込んだ訳やん」

 

 「そうですね、でもそれは崩壊後の世界での脅威であって、これからの崩壊自体の原因は教えてくれなかった......」

 

 ユナは未来の自分が結果だけを伝えていて、"崩壊そのもの"の原因を語らなかったのが気になっていた。

 ラマーが話を切り出す。

 

 「つまり、もっとこう......世界の崩壊が自然災害とかそんなモノで、どうあがいても止められないモノだと言う意味かもしれないね」

 

 ラマーの意見にユナも納得しながら語る。

 そして彼には残酷な禁止令が下る。

 

 「そうですね......そうかもしれないです、そういうラマーさんもFXで資産を崩壊させる予言を貰ってるのでポジション持つのはしばらく禁止ですよ? 」

 「FXがダメだからってバイナリーオプションとかにも走らないで下さい、デモ口座でも弄ってしばらく禁止です」

 

 「未来のバカああああ!! 」

 

 ラマーは溶かして無いのに溶けた顔をしていた。

 

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