第135話「かくして方舟は去った」
「「 全員退避!! 全力で自分を守れ! 」」
カンチョウが叫ぶ! それもその筈、球体から起こった爆発は凄まじいものであった。
「 !! 」
熱波の爆発は高速道路の周囲のコンクリートや鉄骨を焼き、赤く染める程の熱量を出し。
ザジ達キャンパークルーが慌てて防御バリアを張って受け止めなければ、全員丸焼けで蒸発する可能がある位だったのだ。
破壊の波が消えると焼け出したアスファルトの真ん中に、発電機と思われている球状の機械が割れて転がっていた......
「みんな無事? ウチはちょっと表面焼けたわ」
「俺もだよ、また修理しないと......ワオン(小声)」
ねぱたとフォッカーが互いに無事を確認。
「俺達も同じく! 」
同様に最後のトドメを刺した、カンチョウ達の安否が確認される。
「俺も焼けたけど無事だ、だけど酷い有り様だなあ......」
最後のザジの安否が確認されると、全員が胸を撫で下ろした。
「よかった、蒸発したかと思いました......」
「怖いこというなー! 」
皆の安否確認は、ユナの縁起でもない言葉に突っ込む、ねぱたの言葉で締め括られた。
......
煙と熱が周囲を彩る、その中を球体に向けて小さな影が飛んでいる。
「結局......この丸い機械は一体なんだったんだ? 」
アスファルトが焼けついて燃える......ザジが火山の様に様変わりした道路に驚きながら、霊力でゆっくりフライトしつつ球体に近寄る。
「 ......? 」
球状の機械に近寄ったザジ、しかし発電していたであろうその球体は、割れた卵の様になっていて、中身が漏れていた。
「中身が見える......なんだろう? アレ......」
ザジが凝視した時には、球体の中身はまるで淡雪の様に消えていく......
だがザジにはそれがはっきりと何か感じとれた。
......そう、それは。
「霊糸回路......! 」
亡霊が作る霊糸回路が入っていたのである。
そしてその回路は、最後に意外な行動を起こしていた。
光を放っていたのである。
「!? 回路から上に向けて、光の筋が......どこかにテレパス(遠距離霊声)を送った? 」
そう......消えていく回路は最後に何か通信を送ったらしく、役目を終えて消え去ったのである。
******
戦いが終わり、ザジ達キャンパークルーはボロボロになったキャンパーに集まり、ザジの報告を聞いた。
「なるほど......ザジ君が見た霊糸回路はあの発電機の中で球状に練り込まれて居たんだね......」
カンチョウはザジの報告を受けて考察を開始したが......
「なるほどわからん......最後のテレパスも、何処に送ったやら......」
チンプンカンプンである。
「仮にあれが霊糸回路で動く核融合炉だったとして、擬似的に行われた核融合のエネルギーなんて聞いたことがない......」
当然、この作品の空想上の産物である。
そう言えば見も蓋もないが、カンチョウには何か感じるモノが有るのか言葉にする。
「霊水炉......そう名を付けておく、あくまで仮名で......」
「名前付けただけやーん! 」
ねぱたのツッコミが入る通り、カンチョウの考察は仮名までで終わった。
「しょうがないじゃないか、専門家でも無いのに核融合とか......知っているのか! 何電!! って言われる様な知識は私には無いんだよ(切実)」
嗚呼、なんというぶっちゃけ。
物語の進行上、デウスエクスマキナ的知識の革命者が欲しい所だ。
だが「そんなものはない」というのが本作において定石となっている為、ご理解頂きたい。
そんなザジ達に近寄る影あり。
「お主ら大丈夫か!! 」
唐突に飛び込んでくるロボットプラモデル、陰陽師の頭目、芦屋みちよの操るヴァリアント・ドーマンである。
「頭目さん! 」
思わずユナが駆け寄る。
頭目は全員の無事を確認すると、笑みをこぼしてユナのヌイグルミボディにしがみつく。
「無事じゃったかー、吹き飛んでたらどうしようと思っておったわー」
「っと......そうじゃ! こうしておれん! 」
ユナの無事に喜んでいる頭目だが、以下にもこんなことしている場合じゃないと言わんばかりに、姿勢を改める。
「最初に言わねばなるまい......お主らに感謝している、姉上からも感謝の伝言を受けた、"よくやってくれた"とのことじゃ」
頭目はプラモデルのボディのまま、礼を言うと更に慌てて語りだす。
「後、もう1つ悪い知らせじゃ、陰陽師の総本山は今回の戦いで滅茶苦茶"面目丸潰れ"なのじゃ! 亡霊に助けられたとか陰陽師の風上にも置けんと荒ぶっておる! 」
「さっさとこの場にから逃げねば、お主らは物理的に成仏させられるかも知れん! はよ逃げるのじゃ!! 」
「えええええええ!! 」
頭目の報告を聞いてザジ達が驚愕、ここは逃げおうせねばとスタコラサッサと準備を始める。
「「 総員! 超 ☆ 撤退!! 」」
カンチョウの号令もヤケクソ気味で、クルーも準備に大慌てだ。
「カンチョウー! キャンパーにアイツの一部の機械が一杯引っ掛かってる! えんがちょー!! 」
急遽撤退の状況で混乱するクルー。
キャンパーには鳥の巨大霊体の機械部分が乗り上げておりカオスな内装になっていた。
「お主ら! あの球体持って行かんのか! 」
頭目が慌てるザジ達に訪ねると......
「いらない」
とラマーの返答が返ってきた。
「何でじゃ!? 何かお主らと因縁とか有りそうなんじゃが? 」
「もう"中身"がなくなってる......分析したくても時間が無い......アンタらにやるよ......」
と興味なさそうなラマーの返事が返ってきた。
「全員! 準備は出来たかー! イグゾー! 」
カンチョウの再度ヤケクソ号令が響き、キャンパーはガタガタと嫌な音を鳴らしながら高速道路を降りて山道を目指して走り去っていった。
******
「彼等は行ったか......」
ザジ達を見送った頭目の所に、別のロボットプラモデルが降り立つ。
頭目はその声に驚愕する。
「 その声は姉上!!? まさか姉上までそんな姿を!! 」
「気になっていてな......試しに作ってみた、即席だが悪くない......」
そしてその後ろには式神が追従していた。
......球体を運び出すためだ。
「これは我々で預かるとしよう、とても興味のある代物だ......」
「奴等を誘き寄せるには良い餌かもしれん......」
安倍みちかが号令をかける、式神達が燃える道路から運びだそうと行動し始めた。
「これが何か解ったら......ワシらはどうなるんじゃろうか......」
頭目は運び込まれる球体に異様な悪寒を感じ、不安な感想を述べた。
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