第124話「完全武装、百鬼夜行」
「グエエエエエエエエエエ!! 」
鳥の巨大霊体が鳴き声を上げる、迎え撃つは安倍みちかによる私設攻撃部隊。
「攻撃開始! 撃て! 」
ロケットランチャー(個人携帯対戦車弾)による一斉射撃、これらの弾頭には思業式神の札が張られており。
物理軟化等による霊力の物体強度侵食を防ぎ、直接的なダメージを与えた。
「式神部隊! 前へ! 」
続いて式神部隊による攻撃、霊体に対し霊体で取り付いて、急所の捜索と核になっていると思われる部分を切除。
祈祷による散霊で本体の拡散と消滅を行う作戦だ。
百鬼夜行と称される式神達は、鳥の巨大霊体の体にまとわり付き噛みついたり引き裂いたりと。
鳥の解体を行うように羽根をむしり始める!
「ギュオオオオオ!」
鳥の巨大霊体はまるで怪獣の様な鳴き声を上げると、妙に大きな胴体から、ボロボロになった教団亡霊達の方舟の一部を露出させて......反撃の姿勢を見せる。
「高温の熱源を確認! 注意されたしじゃ! 」
上空で観測している憑依プラモデル(ヴァリアントドーマン)の頭目の声......その声に反応した、安倍みちかが指示を出す。
「術者は後方に下がれ! 」
そう号令をかけた直後......
鳥の巨大霊体から無数の光の筋が解き放たれる!
そう......久遠坂シラが使っていたプラズマレーザーである!
解放された鳥の巨大霊体のプラズマレーザーはシラの時の比ではなく、一本から枝分かれして......稲妻の様に散開し!
取り付いていた式神達の札を焼き払い、振り払ったのである!
「奴の攻撃も、こちらの式神の霊力防御を突き抜けるのか......! 式神部隊散開! 」
鳥の巨大霊体から離れる式神達。
一瞬で十体あまりの式神が焼き払われ、後方の術者もその反動で倒れ、救護班が駆け回っていた。
「個人携帯対戦車弾(ロケットランチャー)、次弾攻撃開始! 撃て! 」
再び物理攻撃による牽制が始まる、だがレーザーによる迎撃が成され爆発、発射された五発の内の、一発も着弾が確認されない!
「......ここにおいて実体部分の防衛と来たか、だが対戦車ライフルでなら突破出来よう......」
安倍みちかの指示が降りる、軍用トラックであるハンヴィーが、後方に待機していたのか背後のトンネルから現れた。
「破魔矢ならぬ破魔弾と言った所だ、弾頭は式神で霊力付与が成されている......食らえ! 」
射線の確保で人々が道を空ける、安倍みちかが手を降ろすと、ベテランのスナイパーが引き金を引く!!
鉄火が弾ける激しく豪快な射撃音!!
大橋に響く程の乾いた音が残響する。
鳥の巨大霊体が大きく仰け反った!
「着弾確認じゃ! 効いておるぞ姉上! ......ってあれは何じゃ? 」
頭目の着弾確認報告の通り、鳥の巨大霊体の実体部分は火花を散らし、プラズマの熱が大きく漏れだしていた。
......だがそれと同時に何か不穏な動きを見せる。
何かを"収納"していたのか、背後にコンテナの様なパーツを開けていたのだ。
「よし! 再度攻撃開始、携帯対戦車弾装填! 撃...... 」
安倍みちかが止めと言わんばかりの攻撃指示を出そうとした瞬間......背後の攻撃部隊に異変が起きていたのだ!
「うわあああああ! 何だこれは! 敵襲! 敵襲だあああ! 」
背後の部隊達が驚きの声を上げる!
橋の下から五十程の数の"大量の小型飛行物体"の群れが、強襲したのである!
しかもそれぞれが"殺傷能力"を持っているのだ!
「橋の下に伏兵を潜ませていただと! 待避! 全軍待避だ! 」
安倍みちかが叫ぶ!
伏兵である小型飛行物体は、まるで小さな"パーツの足りない歪な人形"に見えるドローン群で。
虫の羽根やプロペラ等と、飛行する姿に統制は全く取れていないが......
一体一体が「ファントムニードル」や「ファントムスラッシュ」と言った、物理透過攻撃能力を持ち。
そして更にザジ達亡霊の様なバリアを持ち、狂暴性を持って人間に襲い掛かったのである!
「うわああああああ!! 」
周囲に叫ぶ声が木霊する!
拳銃等で応戦するが、的が小さく苦戦は必死だ。
「まさか奴の体内に格納されていたモノなのか? しかもあやつらは......! 」
上空で驚愕する頭目が怒りを露にする!
「マジで許せんのじゃ! あの亡霊の小僧共は人を斬れんのじゃが、それを誇りにしておった」
「だがあやつら平気で人を斬りつけておる......小僧らの亡霊達に対する冒涜じゃ! 」
頭目の眼下の防衛圏では、術者達が襲われ道端に多数倒れ、まるで惨劇の様子!
携帯対戦車弾の部隊も沢山の小型飛行物体(以下ドローンファントム)に襲われ、更に弾頭が霊力で起爆し暴発。
これにより負傷者多数発生、大橋の防衛圏が完全に崩壊した。
「なんと言うことだ! N型の体内で工場の様に"アレ"を生産していたとでも言うのか! 」
ドローンファントムは続けて、悔しがる安倍みちかにも襲い掛かる。
四方八方からニードルによる攻撃、死角から刃物による攻撃。
そして彼女には、その攻撃対象の正体が見えていた。
「吸収した亡霊を使役して、まるで尖兵の如く扱うとは......なんて奴だ」
安倍みちかが刀を抜き放ち、虫を払う様にドローンファントムに応戦する、だが......バリアが強靭なのか一撃では落としきれず。
ジリジリと敗走していく。
「私一人で十体程倒せたか......」
式神"六合"の力もあって、何とか無事で住んでいる安倍みちか......
だが残り四十余りの全てを相手するほど、無茶は出来ない。
「シャアアアアア!! 」
再び術者を守ろうと六合が吠える、ドローンファントムに食らいつこうと顎を震う!
しかしそれで一体は倒せても、その隙に次々と攻撃がやってくる。
「くっ、六合では小さな相手には不利か! 」
数による強襲......六合が死角から攻撃を大量に受けると、式神の札が切られたのか、姿が消えていった!
「くっ......」
式神の消滅の反動で、額から出血する安倍みちか。
ここで再びドローンファントムによる強襲がやって来た。
生身の安倍みちかには、大変危険である。
「させるかああ! 」
ここで頭目の加勢が入る!
歪なドローンファントムの胴を、頭目のヴァリアント・ドーマンが小烏丸セイバーで一文字に斬り付ける!
歪な空飛ぶ殺人人形がプラモデルに打ち倒される、奇妙な構図である。
「ご無事ですか? 姉上!! 助けに参りました! 」
雲の上の存在位、憧れの姉上を助けに入った頭目。
これが生身ならどれ程に嬉しい事かと、霊体のまま感激の涙を流していた。
「ありがとう......みちよちゃん! あなた実はプラモデルの方が強いんじゃないかしら」
ごもっともである。
「当主様! 頭目様! 」
頭目の部下、黒服達が車で迎えにやって来た。
「乗って下さい! 」
憑依中の頭目を抱え、安倍みちかは逃走経路を得た。
黒服が拳銃で応戦しながら、その場を離れる。
何とか安全を確保すると、安倍みちかが携帯無線を使っていた再び指示を出す。
「防衛圏は速やかに後退、近くのジャンクションで再び陣を構え迎え撃つ、戦える者を集めよ! 」
......しかしここで無線は意外な応答が返って来る!
「こちらうずしおライン防衛隊、応答願います! 道路封鎖を突破されました! 」
「一般車両がそちらに向かって進行中! 」
安倍みちかはその報告に驚き、困惑する!
「こちらは安倍みちかだ! 馬鹿者! 何故入れた! こちらは緊急事態だぞ! 今は我々では一般車両は止められん! 」
再び無線からの返答が来る!
「申し訳ございません、当主様! その車両が強い霊力を放ってまして、我々ではとても止めるのが無理です! 」
その場で無線を聞いていた、安倍みちかも頭目も黒服も、目を丸くして驚いて、再び無線に語りかける。
「うずしおライン防衛隊......それは、どんなクルマだ......」
無線の向こうから返って来る答え。
それは......
「車種はわかりません......でも、その大きな......」
「「 "キャンピングカー"です!! 」」
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