第70話「金銭ブルジョワVS霊力ブルジョワ」

 運営チームのプレイヤー達がボディを持ち寄ってプレゼンの舞台に上がってきた。

 何やら余り見かけないタイプのボディを持ち出している。


「アメトイと言ったらアーミメン(軍人フィギア)だろう!」


 そう言うとイカにも厳つい逆三角形のムキムキ軍人人形が、ぞろぞろと憑依状態になって準備を完了していく。

 そしてアメトイフィギアの上にアーマーが被せられ、どんどん武装が激しくなっていく。


「!?」


 二依子が反応する、相手のボディがどういうものか理解があるようだ。

 次々装着されるボディアーマーと自動小銃で身を固めた屈強な軍人フィギア達、二依子はどこかロボっぽい印象の風格が感じ取る。


「気がついたかね?これはロボアーミーメンさ!」


 ダニエルがリーダーアーミーメンのボディに憑依して答える。

 潜水服の様な外殻と背中には何やらタンクのようなパーツを背負い、バルカン砲やロケットランチャーに繋がってる。


「なんてこと!経費で落としてアメトイの大人買い!しかもカスタムパーツは自社の新機軸の霊力タンク!」


 二依子があまりの豪勢な使用に呆れていた、そして壊したらアレおいくら万円の被害になるのか、創造したらゾッとしている様だ。


「霊力タンク?アレが?」


 ザジはロボアーミーメンの背中のボトル状のタンクを見て言う。


「そうだよザジ君!あれがボディの霊力量を1.5倍まで増設可能なパーツなんだよ!課金仕様でしかも特注品!ガチ勢専用パーツ!」


 二依子が恨めしそうにパーツを見て言う、如何にもバランスぶっ壊れパーツであると言う嘆きの念が伝わってくる。


「あのパーツの登場以来、ビルドの選択が広まった代わりに使わないプレイヤーの、”人権そのもの”が無くなったわ(泣)」


 ザジはその話を聞き、ふと自分たちがキャンパーで使っていた霊力の詰めた箱(キューブ)を思い出した。


「ユナ!飛行船に霊力補充用の箱が備蓄してたはずなんだけど……」


 するとひょっこり二依子のカバンに潜んでいた、我らのヒロインだったはず()であるユナが顔を出す。


「ホホホ!そんなこともあろうかと!この私目が持ち出しておりましたとも!」


 なんとも抜け目の無い越後屋の様なクマが、自身のバックパックから四角い箱を出して言う。

 そしておもむろにザジにパス。


「対抗できるかもしれない!俺達が補給用に使用している霊力箱だ」


 唐突にザジが持ち出してきた装備に二依子が困惑している。


「ザジ君?何それ?どういうパーツなの?」


「単純に霊力を詰め込んでいるだけのパーツだけど?」


 二依子の表情がにやけ顔に変わり始める……


「どのくらいの霊力?ザジ君の尺度で何パーセント?」


「マトリョーシカ一体分だから……大体半分位(憑依プレイヤーの二体分)」


 二依子のにやけ顔が止まらない、ザジはこの表情を過去にユナで見た記憶があった。


 笑うという行為は本来攻撃的なものであり

 獣が牙をむく行為が原点である



「戦闘開始!」


 運営チームのロボアーミーが五体、それぞれが増設された装備と連動する武器で攻撃を開始する!

 手に持ったマシンガンは信じられないほどの精度で作成されたミニチュアマシンガンで、打ち出す弾も霊力で加速する機構を自動化までに突き詰めた、実に殺意の高い仕様となっている。


 カードリッジタイプの霊力増設器から射出に使う霊力が供給されており、本体の霊力は使用しないため。

 本体は回避と防御に専念出来て、相手の大技の隙をついたりするなどの抜け目の無い戦いが可能になる


 対してポゼ部の面々は、ザジはともかく菊名が通常のプレイヤー仕様であるため真っ先に狙われる可能性が高い。


「愛華!どうする?チェンジして霊力量を増やす?」


「駄目だよ!菊名ちゃん……それでも一体倒せたら他の敵が隙をついてくる、カードリッジのタンクだけを先に狙って無力化を計らないと!」


 菊名のフィギアボディがライフルを取り出すと、おもむろに先頭のロボアーミーの背部に在るタンクを狙い打ち合う!


 互いに防御と攻撃が繰り出され、防御を打ち破る為に菊名がスキルの仕様を提案する。


「アストラルショット!」


 愛華のアプリから宣言されたスキルは、射出されたニードルに物理透過スキルを混ぜたもの、霊力の防御をスキルのパワーで弾き飛ばし、アーミーの装甲を打ち抜く物理透過で内部ダメージを穿つ仮想ファントムショットである。


 防御の余裕があるアーミー側は、ボディが対射出スキルに徹底しており物理透過スキルが付いたニードルでも装甲の厚さで致命傷を避けることが出来る……が


「!」


 そう、ニードルはボディに直撃せず、肩口を掠めて背部のタンクを打ち抜いていたのであった!


「よし!これで一体は無力化できたようなものね」


 ロボアーミーは仕様がタンクの性能に頼り切っており、自力の攻撃には射撃の一つも行うのに過剰に霊力を浪費する、つまりタンクを狙えば大きく火力が低下する。


 だが……


「カードリッジ!リロード!」


 破壊されたタンクの代わりのタンクが準備されていたようで他のロボアーミーが持ってくる。


「あああ!なんてブルジョワなの!パーツ抽選ガチャでも中々出ないパーツをホイホイ交換しないでよ!」


 菊名が歯痒い表情で運営チームを見ていた、愛華も嘆いている様子。


「もう一回破壊して隙を作る!」


 菊名が霊力の余剰し考慮しながらライフルの弾をリロードしつつ狙い済ませる、狙う標的は補充タンクを持ってくるアーミーである。


「補給させない!」


 射出されたニードルは補給タンクの方に吸い込まれるように飛んでいく……が!


「!」


 補給アーミーが盾のようなパーツを出すと、それは霊力でコートされおり、菊名が放ったニードルをあっさり弾く!

 その盾は霊力タンクが付いており、常時霊力バリアを帯びた強力な武装の様だ。


「何そのチートパーツ!」


「まずいよ菊名ちゃん!もう霊力がだいぶ減ってる!」


 菊名のボディの霊力は枯渇し始めているようだ、ここで愛華とのチェンジを選択するか判断を迫られる。


「二人ともこれを使って!」


 ここでザジ達の霊力箱が二依子から投げ入れられる、ご丁寧に即興で持ち運び式の3Dプリンターを使いマウントパーツを製作した徹底ぶりだ。


 即座菊名が背部に接続する。


「センパイ?付けたけどこの部品何なの?……って」


 突然菊名が霊体もボディものけぞる様に震え始めた!

 愛華もその様子にビックリしている。


「ほあああああ!何これ霊力みなぎるううううう!あふれてるぅぅぅ!」


 亡霊でも一杯になるくらいの霊力が補充され菊名のボディが火がついたように力が湧き上がったのだ!





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