第40話「憑依バトラー②」


 「ポゼッションバトルのサーバー同期確認、ライブ中継開始!」

 

 二台の中継ドローンが飛び交う、これは両者で準備したものだ。

 

 画面には生放送の閲覧コメントが流れ、早くもフォロワーのカウンターが何百人と付いていく。

 

 「下剋上よ!星4報酬が美味しそう!」

 

 「菊名ちゃんまだ勝ってないってば!」

 

 ツインテールの生き霊少女がフィギアに憑依していて、三つ編みの少女と会話する。

 

 霊声はスマホから聞こえている様で、三つ編みの少女はイヤホンマイクを付けていた。

 

 対峙するチャラい男の生き霊も、憑依したプラモデルで会釈する。

 

 後ろに居る真面目なそうな弟もヘッドセットを付けて手を軽く上げて準備OKのジェスチャー。

 

 両者の視点中継ドローンが高く上がり、戦闘開始のエフェクトが生放送画面に派手に浮かぶ!

 

 

 

 

 「ポゼッションバトル!」

 

 「レディー!」

 

 

 「「ファーイト!!」」

 

 

 周囲に霊力の光が放たれ、バトルフィールドを形成すると…


 

 バリアの様なモノがスマホ操作の二人を守る。

 

 

 

 生放送の流れる沢山の歓声コメント襴、だがコメントの表示が収まる前に、双方の攻勢が始まった!。

 

 

 開幕からチャラ男(KIRIKU兄)のプラモデルがバズーカ砲を乱射!

 

 弾頭を事前に準備して霊力で打ち出し、信管の代わりに霊力スキルのパッシブコントロール起爆による圧縮空気の弾頭バズーカ砲の様だ。

 

 ちなみに人間に当たった場合は起爆しない。

 

 このバズーカが彼のメインウエポンであり、真面目なKIRIKUの弟がスキルツールで作り出した装備武器で戦うスタイル。

 

 序列14位という半端な存在感と、周囲に対する配慮溢れる人畜無害な装備から…

 

 人は彼を″無害王子″や″無害様″と呼ぶ。

 

 当然装備はKIRIKU弟のオーダーメイドばかりなもので、余りに頼りきりなバトルスタイルが好評で

 

 周囲からは″弟のHIMO(意味深)″と言われ、画面に映る度に赤い字幕が絶えず…

 

 今回もまとめスレやネタ動画の素材に大活躍している、話題の提供者だ。

 

 

 対する少女二人は、初手は回避の様子。

 

 言動の激しいツインテール少女が可動フィギアのボディを器用に操り回避しながら、装備したライフルで正面に来る弾頭に迎撃を試みる。

 

 

 「そんなモノが当たるわけないじゃない!」

 

 ライフル射撃でバズーカの弾頭を破壊!

 

 しかし弾頭の中から数本のニードルが…!

 

 「プロテクション!」

 

 後ろに居る三つ編み眼鏡の少女(以下愛華)が、スマホの画面のスキルパネルをタップ。

 

 ファントムバリアを彷彿させる霊力バリアが放たれ、ツインテール少女の生き霊が入るフィギア(以下菊名のフィギア)の周囲に展開!

 

 ライフルで破壊したバズーカの弾頭から出た、破片とニードルをブロック。

 

 

 「菊名ちゃん落ち着いて!いきなりダメージ受けちゃう!」

 

 「わわ!解ってるわよ!」

 

 愛華のデッキフォローはオールラウンドに対応しているようだ。

 

 「愛華、アストラルソードを頂戴!こっちから打って出るわ!」

 

 「うん、リキャスト長いから注意してね」

 

 菊名の言葉に、再び愛華がスマホの画面をタップ。

 

 菊名のフィギアが装備しているライフルの先端から銃剣が出てくると、これまたファントムスラッシュを彷彿させる発光を放つ。

 

 

 「でやああ!!」

 

 

 菊名のフィギアが可動枠を生かした棒術の様なモーションで銃剣を振り回す。

 

 「おっと!俺達にそんな反撃は当たらねえぜ…そおれ!バズーカを喰らいな!」

 

 KIRIKU兄の回避は煽りを含めたギリギリの見切り!

 

 そこからカカッとバックステップ射撃!

 

 「兄さん、弾切れだよ」

 

 何たるウカツ!この対応力(笑)が序列14位たる実力だ。

 

 「ジャックナイフ!バズーカ捨てて兄さん!」

 

 KIRIKU弟のスキルタップの支持通りバズーカを捨てると、二本のサバイバルナイフが腕のパーツから飛び出して装備。

 

 菊名フィギアの銃剣を受けられる様に、霊力の補助でナイフを増強させてから捌く。

 

 「ちっ!まだ一発もダメージが通らない!」

 

 菊名が焦りを見せる、これに対しKIRIKU兄はここぞとばかりにバックステップを連発!

 

 別のバズーカを装備箱から霊糸を使い絡めとり再び装備、バズーカで弾幕を作る。

 

 

 「ジリ貧ね、もうスキルのリキャストを待ってられない」

 

 「え!もう変わるの!愛華!」

 

 少女二人の会話が何か″奥の手″を含むと、KIRIKU兄が突っ込む様に割りに入ってくる。

 

 

 「おしゃべりの暇は与えないぜ!」

 

 十分に引き付けられたか、はたまた序列14位たるフラグか…

 

 KIRIKU兄たちは、見事に美味しいネタの神様に誘導されるのである。

 

 「ポゼッションアウト!」

 

 突然!菊名の霊力の爆発が吹き荒れる!

 

 「何いいい!こっ!これは」

 

 爆発でKIRIKU兄のプラモデルが怯む!

 

 「バトンタッチポゼッション!」

 

 

 「AIKA!」

 

 

 この言葉と共に、愛華の体が膝をついて倒れ、変わりに離れて倒れていた菊名の本体が立ち上がる!

 

 そしてツインテールの生身の少女が、倒れた愛華の手からスマホを取り。

 

 変わりに可動フィギアに愛華の生き霊が入り!

 

 ″チェンジポゼッション″のスキルが完了した!

 

 「行ける!スキルのリキャストも私の霊力で回復したわ!」

 

 

 菊名がスキルを確認する、愛華とは当然違うスキルが追加されている!

 

 「二人分の霊力でリチャージ完了!愛華!行くわ!」

 

 可動フィギアに入った愛華はライフルを捨てて、ボクシングスタイルで構える!

 

 目の前には当然、爆発で怯んだKIRIKU兄!

 

 「チェンジスキルかよおおおお!止めろよもおおおおお!うわああああ!」

 

 明日にも無害王子語録の更新が成されそうな悲鳴を叫び、凄まじい顔芸の霊体が浮かぶ!

 

 「あ、兄さんないわー…」

 

 サポートのKIRIKU弟が顔に手を当てると、その視界にはフラグの運命の女神に愛された兄の姿!

 

 

 

 「菊名、行くよ!」

 

 「チェンジ!ポゼッション!」

 

 「「ファイナル!」」

 

 「「スマッーシュ!!!」」

 

 可動フィギアからねぱたのファントムインパクト相当の豪快な一撃が!

 

 「!!?」

 

 不意を突かれた(?)KIRIKU兄のプラモデルの顔面を打ち砕いた!

 

 「ぐあああ!!」

 

 KIRIKU兄はキリモミでブッ飛んで頭から墜落!

 

 これが序列14位の慢心溢れる負けっプリである!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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