第34話「正体」
「これがあの巨大霊体の本体?」
ユナがマジマジと見ている。
「どないしたん?霊国の主さん?普段はあの体から霊力もろてる分、一人になったら動くことも出来てないなあ」
「ヌウウウウウウ!」
ねぱたが煽る煽る、生首だけの状態で哀れな姿の元巨大霊体は悔しそうに見上げていた。
「ナイスやでザジ!コイツ首だけやったとかビックリや!」
「本当ですよ、首を切ったら本体外れた何て…コイツもしかしてフォッカー(付属品)さんですか?」
ねぱたとユナが遠回しにフォッカーをなじる。
「うわああああん!(合体してから良いとこ無し)」
フォッカー渾身の悲しみのジェスチャー!
「キャンパーのバリアに顔から突っ込んだ時に、チラッと霊体の姿がハッキリ見えたんだ…」
「首は全て霊糸の布で出来ていて、霊力の供給や熱砂利や兵を送るエレベーターシャフトみたいになってたんだね」
ザジが内部を考察してくれた、とてもガールズプラモデル姿の便利ヒロイン(男)
「常用手段なのかもしれん、同じような亡霊の集団コミュニティーが大型防衛バリアを張った場合の内部強襲プランじゃないか?」
カンチョウも考察に参加してくれる様だ。
「強襲したが俺達が思いの外奮戦してて、ねぱたやザジの復帰による長期化が想定を狂わせたか」
ドクも考察に乗ってくれた。
「ウチらは逃げれる背水の陣やからな、キャンパーの弱点付こうとして自ら弱点晒してもうたんやなプププ」
ねぱたがちょっと哀れみの顔(ゲス半笑い)で煽っていた。
ザジが考察を続ける。
「布のバリアは本来は首の一部で血管みたいなものだろう、土偶ボディを守る為に余分につけてたんだね」
カンチョウの合いの手が入る。
「うむ!我々で布を壊し始めたから次々首から取り出す、使い捨てを繰り返した結果…」
「首の守りが薄くなり、あんな膨らんだ喉になったと…なるほど私の視点では表面上の黒いモヤで何にも解らんかった」
ここでねぱたが決めを語る。
「ウチとザジが交互に殴っても布を引き出して防御する、ならあんな膨らんだ部分と同時ならどっち守るか決めらんとあかんやん」
ザジは語る。
「結果的にどっちも守りに入った、これはきっと過信なんだろうな…」
「プライドが許さないって奴だね」
ユナはしっかり締めてくれた。
巨大な顔は完全に周囲の黒いモヤが拡散し崩れ、大きさを失った首の霊体がハッキリし始める。
「アアアア…″穢レ″ガ、散ッテ往ク」
ユナがその言葉を聞いて真面目な顔で考察する。
「″穢れ″?!…凄いパワーワードを感じる!超物凄いヤバイものの様な…恐ろしい禍々しい何かを感じます!」
ザジはユナのその言葉を聞いて答える。
「…″穢れ″ってのは、一言で表すと霊的堆積物だ」
「霊体の垢とか霊糸のクズとか、霊力の残りカスが時間をかけ変色していった…言うなれば」
「ゴクリ…」
ユナが緊張する。
「う〇こだよ…(真顔)」
「「う〇こなの!!?」」
その場に居たクルー全員が後ずさる。
「何ですか!何なんですか!コイツもしかして、″巨大ハナクソ太郎″だったんですか!?」
「えええ!さっき殴った黒いモヤって……エンガチョー!」
ユナとねぱたが騒ぐ!
朝陽が高くなり、暫しの静寂が訪れる。
「本当に一体なんなんだろうなコイツは」
フォッカーが巨大霊体の首(以下首)の様子を見ながら困惑しているようだ。
いつの時代かもわからない、荒れた髪の毛、入れ墨の顔、冠みたいなものも見える。
「古戦場の霊だと思うよ、首を跳ねられた…しかも相当古い」
キャンパークルーも正体まではわからない様だ。
「貴様達ニハ、我ノ偉大サナド解ルマイ!」
「何年前の偉いさんやろ?国ごと亡霊になるとか斬新やなあ」
ねぱたの言葉にカンチョウが返す。
「国家統一以前の霊かもしれんね、奈良時代以前かその辺りとかは日本史でも統一出来てないんじゃないかな?」
「古っ!」
ねぱたが困ったリアクションで返す。
「さてと…」
カンチョウは考察をまとめ始めた…。
「?」
ふと、フォッカーが後方の巨大霊体の本体の様子がおかしいのに気が付く!
何やら体の中で発光が見える、ファントムスラッシュの様である。
「体の中で戦ってないか?アレ?」
ザジもその様子に困惑する。
「ウウウ何トイウ事ダ!」
困る霊体の首、その様子にフォッカーが突っ込む。
「オメエの国、クーデター起きてんぞ!」
突然のクーデターの発生に心折れたのか、首の霊体の表情が緩んでいる。
目的を聞き出すのは今かも知れない、ザジはそう思っていた。
「根の国とか言ってたが、神話では冥府を表すけど学者達は実在論が絶えないね」
カンチョウはブロックトイのパワードスーツからボディを降ろすと、終えた考察を並べる。
「だからこの場合は実在論と神話論の両方を取るべきだ、国ごと亡霊に成った霊王国」
「合点がつきますね」
ユナが関心する。
突然首が騒ぎ出す!。
「ソノ通リダ!」
「我ハ″根切リ″デ一族ヲ討チ取ラレタ、口惜シイ!」
「落チ延ビタ我ガ一族ハ、滅亡ノ前ニ土塊デ国代(くにしろ)ヲ造リ、埋メテ隠シタ!」
「根コソギ討タレタ後!、地ノ底ニテ国トナッタ!赦サヌ!女モ子モ討タレタ!」
暴れる様に喋る首、その内容は過激である。
(今なら色々聞けそう)
「悔しいのは解った、けどなんで地上に上がってきたの?復讐のため?」
ここでザジが首に語りかける。
「違ウ!ソンナモノ当ニ…カナワヌ」
「ダカラ!多ク御霊ヲ集メテ、我々ハ古ニ聞ク″天″(アマ)ニ至ル、ソノ身ヲ龍ト成リテ飛ブ!」
「飛ぶって…ファントムブースターで?空の何処に行くんだ?」
「天(アマ)ニ…」
「…!」
その時…突然!
首のボディである土偶に、埴輪が武器にしていた銅矛が落ちてきて!
首の入っている土偶ボディを砕いた!!
「うわ!」
ザジ達は周囲を見渡す!
「誰だ!何処にいる!」
「いました!あそこです!」
ユナがキャンパーの端に居る埴輪を見つけ出す!
「家臣が王を討ったのかね!偉大だとか言ってたのに、もう手のひら返されてるぞ!」
討った埴輪はあの顔が少し付いている側近らしい埴輪だ!
そしてキャンパーから飛び降りると何処かに消えてしまった。
「くそ!逃げられた!」
「何て事だ!ユナ君の事も聞けそうだったのに…」
キャンパーの屋根に銅矛で砕けた土偶の破片が散らばって、土塊に還っていった。
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