第24話「イーター! (霊体食らい)」

「あかーん!フィニッシュできへんとか負けフラグやー!」

 

 だが奔流を放つ勢いは止まり撤退の隙が生まれたのは代わり無く、パルドのRCトラックはユナとカンチョウを乗せて祠がある野原から安全が確認出来そうな距離を稼ぐ。

 

 「野原を抜けたら住宅跡を盾に逃げ回るんだ!奴はよく見ると移動をしているからね」

 

 カンチョウの冷静な対処は見事的中、巨大霊体はその後も移動をしながら横殴りの雨の様に溶けた鉛を飛ばしていた。

 

 「ニガサヌ!」

 

 溶鉛の保持の為に周囲に熱量が集まり始める、それにはロボットからの爆発の熱量も含まれる。

 

 パルドのRCトラックが住宅跡に逃げ込む前に、巨大霊体はポルターガイストで溶けた鉛(以下溶鉛)を再び体内で加熱し操作して、弾幕を張る準備をしはじめると。

 

 今度は散水の様に上空に溶鉛を撒き散らす!

 

 逃げ切る直前でユナ達に溶鉛の弾幕が降り注ぐ!

 

 「ひゃあああ!無理無理無理!」

 

 慌てて回避をするパルド、ジグザグに移動したくらいでは回避にはならない。

 

 「ヤバイ!ユナ達が!」

 

 自身の防御一徹のザジではこの状況に対応出来ず、ユナ達に向けて高熱の溶鉛が直撃するかと思った瞬間…!

 

 「ファントムパージ!」

 

 上空から飛び込んできたねぱたが、ユナを庇う!

 

 付けていたアーマーを外して飛ばし、飛んでくる溶鉛の塊にぶつける!

 

 アーマーが身代りになって溶鉛を浴び、発火したのち飴細工の様に焼け溶ける!

 

 「すいません!ねぱたさん、助かりま……!!」

 

 しかしユナは庇ったねぱたの姿を見て驚く!

 

 「すまんな、ちょっと…やらかした…わ…」

 

 ねぱたの特撮フィギアは片足と腹に溶鉛が付着していたのだ!

 

 キックの際に反撃を受けてバイクと右足が熱と溶鉛で焼かれ、アーマーパージでは防ぎきれなかったのか抜けてきた溶鉛攻撃で腹部が発火し焼け付いていた!

 

 「アカンな、あのキックで大分霊力使うたわ…もうバリアも出来へん」

 

 「そんな…」

 

 ねぱたの様子にユナが心配な眼差しをする。

 

 ボディの過剰なダメージにより霊体の欠損が起きており、ねぱたの霊体が揺らいでいるのだ!

 

 「ウチ、…ザジみたいに器用違うから…な…」

 

 「すんなりボディ変えるにはレストルームの近くまで…行かなアカンねん」

 

 「!!」

 

 ユナが発火したプラスチックを鎮火させたが、付着した溶鉛はかなりねぱたの特撮フィギアのボディを焼いたらしく、内部からの霊力漏れが確認される。

 

 「言うの…忘れてたけどな、ウチらノーマルボディ…はボディ内部の空洞が緻密なほど霊力保持…しやすいんよ」

 

 ねぱたの声がたどたどしい。

 

 「だから大きい穴…空いたりしたらな…ホンマに内蔵潰れたみたいや…痛み無いけど……なんか怖いわ」

 

 「ねぱたさん…!」

 

 RCトラックの上でユナが心配そうにねぱたを抱えると、トラックに付いていたファントムニードルの砲塔を操作して反撃する。

 

 「うあああああ!畜生おお!こっちに来るなあ!」

 

 乙女の吹き飛んだユナの叫びは虚しく、反撃も効果が確認出来ない。

 

 飛ばしたニードルはあっさり巨大霊体のバリアになってる霊糸の布に弾かれている。

 

 (!)

 

 その様子に反応したのはザジだ。

 

 防戦一方だったがフォッカーの移動のフォローを受けて、ボディダメージを軽減。

 

 一部の装甲パーツの熱による変色と僅かに溶けたディティールで済み、事なきを得ていた。

 

 (チェインガンの弾丸は強度に干渉してノーガード…)

 

 (飛ばした時の霊力が付着したユナのファントムニードルは威力に関わらず霊糸でガード?)

 

 (もしかしたら…) 

 

 「ねえフォッカー?、ロボットの残骸はどう?鎮火してる?」

 

 ザジの問いに対しフォッカーはドローン内部のカメラのズームでロボット残骸を確認、鎮火しているのかもう残弾の暴発は起こってない。

 

 「以外に火の手が収まるのが早いみたいだな、もしかしたらあの霊体は熱を吸い上げていったりしてないか?」


 巨大霊体の標的がこちらにシフトしたのが確定した様で、ロボット自体は破壊されたものの…

 

 爆散した際の燃料の火の熱を巨大霊体が吸収し、攻撃に再利用したのでパーツが燃え残っているのだ。

 

 「行けるぞ!二手に別れよう!フォッカーはロボットからチェインガン残弾を回収して!一発でいいから欲しいんだ」

 

 ザジの急な気転にフォッカーも何か気がついたらしく、すぐに犬モードを展開して駆け抜けていった。

 

 「解った、持ちこたえろよ!」

 

 「うん!頼む!」

 

 フォッカーを見送るとザジはファントムブースターを吹かしながら、フワリと上空に上がりグライダーの様な軌道で巨大霊体の周囲を飛び攻撃を開始。

 

 雨霰の様に撒き散らす溶鉛の弾幕を掻い潜り、ファントムニードルで巨大霊体を角度を変えて数回攻撃。

 

 巨大霊体は霊糸の布を使って最初の針を弾く。

 

 すると今度は大きく拡げて薄い花弁のように形状を変えると、ふわふわした霊糸の布が別のファントムニードルを受け止めて改めて弾く。

 

 「薄い布にしちゃあ、随分頑強に弾くバリアだな…」

 

 ザジがバリアの強度と範囲を確認している様子で、それを見るや巨大霊体もザジの存在を軽視出来なくなったのかザジの方に顔を向けた。

 

 「埴輪トハ違ウ、新タナ御霊カ?」

 

 「オマエモ、体ノ″クニ″ニ放リ込ンデヤロウ」

 

 「は?クニって?」

 

 ザジがふと巨大霊体の首から下の部分に目を向けると…

 

 巨大霊体の体らしき部分、今だその一部も出ていないその中身がやんわり見えてくる。

 

 首だけならまだしも体は大きさが半端無く、一部であるにも関わらず周囲を埋め尽くしているのだが…

 

 その体からは異様な霊力を放出しておりそしてやや透明な中身のからは…

 

 大量の霊体の気配と伸びた霊体の手が見て居るのだ!

 

 「オイ…クニってまさかこれの事?」

 

 体は正に霊体のコロニー、いったい幾つの霊体の気配があるか想像が付かない。

 

 「…!」

 

 中にはまだ気配も新しいモノも紛れていて他と違って、そう…

 以下にも腹のなかで消化している途中のエサにも見える。

 

 「″クニ″デ何年デモ掛ケテ民ニナルノダ」

 

 巨大霊体の声が恐ろしく甘美にも聞こえてくる。

 

 「ソウ…」

 

 「オマエタチガ求メル天の霊国ダ」

 

 その巨大霊体の言葉はザジの恐怖心を煽ったが、同時に大きく怒りの念を燃え上がらせた!

 

 「クニ?大層なこと言いやがって!、何人も食らって天国気取りか!」

 

 

 「その土いじりの不細工なボディ、ぶっ壊してやる!!」

 

 今宵

 

 沢山の霊体を食らい続けた巨大な霊国の主に向けて

 

 

 小さな亡霊、ザジの宣戦布告が言い放たれた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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