第9話「この後滅茶苦茶胃カメラ飲まされた」

 

 「この拳銃、随分変わった物だね‥‥」

 

 キャンパーの方では奪い取った拳銃をカンチョウとフォッカーが内部に引き込んで回収していた。

 

 「後でドクに調べて貰うけど、コレ使える弾は幅広いんじゃないかな?」

 

 ちなみに今回回収された拳銃はドイツ製でスカイマーシャルリボルバーというもの、短い銃身にはレーザーポインターを嵌め込めるレールが付いている未来的な短銃のリボルバーだ。

 

 正直かなり格好いい(モデルガンで出る事を希望されるリボルバーである)。

 

 「ザジ君はこの弾丸を一発持っていったのかね?」

 

 シリンダーに入っていた弾丸を見ていたカンチョウがふと気になった事を言った。

 

 「ザジ君は知らずに持っていったかも知れないね、こういう弾丸は威力高いモノだと思うんだ、彼が過去に撃った経験のある日本の警察官の拳銃弾とは訳が違う」

 

 言葉通り、良く聞く警察官の38口径ニューナンブは威力を抑えた拳銃であり、ザジが持っていったのは強力な9㎜パラベラム弾である。

 

 当然反動が段違いだ。

 

 「ザジ君がちょっと心配だね、勢いで吹っ飛んだ時の回収プランも考慮しておくかね」

 

 カンチョウの言葉通りならお迎えもある、そう思ったフォッカーは準備を始める。

 

 「一旦レストルームに行ってからドクに乗り換えるボディを選んでもらって来ます。」

 

 そう言うとフォッカーはラジコン飛行機をエレベーターに格納し、中央階層のレストルームと呼ばれる場所へと運んでいった。

 

 「ドクにザジ君のボディの修繕依頼もよろしく。」

 

 「オッケーカンチョウ!」

 


 そして視点は再びザジの元に戻る。

 

 

 

 キャンパーと黒服達のカーチェイスはどちらにせよキャンパーが街から離れた時点でもう敗北である。

 

 そろそろ進入禁止の看板が見えてくる頃合いだ。

 

 「奴等は人気の少ない逃走経路を予め想定しておったのじゃな、知恵が付きすぎてもはや魑魅魍魎とか言えん!」

 

 頭目はザジのプラモデルボディが弾丸を先端に装備してライフルを構える様に、感服していた。

 

 「じゃが…その弾丸で何を狙う!式神か!それともわらわか!」

 

 頭目の式神はザジの射撃で潰れるだろうが、まだ式神を別に出して隙を狙う事も可能。

 

 もし頭目を直接狙うなら防弾チョッキを着た助手席の黒服が身代わりでカバーする寸法だ。

 

 少しザジが頭目を狙う様な仕草をする

 

 「食らえ!」

 

 ザジが狙いを決めたのか銃弾に霊力を流す、直接着火した弾丸が火を吹いた!

 

 乾いた音が鳴り響く!破裂音に近い!

 

 助手席の黒服が咄嗟に頭目を覆い隠す構えで視界が遮られたが…

 

 黒服にも頭目の女にも銃弾が命中した反応は無かった!

 

 「…」

 

 「ええい!のけ!」

 

 頭目はちょっとビビったが何てことはなかった的なドヤ顔で黒服を蹴り剥がすと、待機状態の式神を再び操った。

 

 「奴め、しくじりおったわ!好機!」

 

 視界がザジに向くとザジのボディは体勢を崩し、ドローンの隅っこに捕まり操作がギリギリ出来る位の状態になっていたのだ!

 

 「なんだ!この反動!ビックリした!ライフルのパーツがブッ飛んじゃったよ!」

 

 9㎜パラべラム弾の強烈な反動は想定以上だったらしく、ライフルのパーツは完全に折れてしまっている。

 

 幸いドローンから振り落とされる瞬間に器用に霊体の手で掴み、地面に落下するのは免れたがドローンにぶら下がっている状態である。

 

 「これでは自慢の剣も使えまい!」

 

 式神鳳がザジに迫る!そして完全に射程に捕らえる!

 

 「捕まえた!これで詰みじゃ!陰陽師を舐めるでない…ぞ!?」

 

 式神はザジを覆い被さるように張り付く!

 

 だがその瞬間!

 

 「ほあああああああ!」

 

 黒服達の車がスピンを始めたのだ!、後輪が激しくへこみ車高が下がって火花を散らす!

 

 「マズイ、頭目様を守れ!」

 

 スピンした車は手がつけられず、投げ出されないように黒服達が頭目を抑えてしがみつく。

 

 そしてなす統べなくそのまま横転、綺麗にひっくり返ってしまう!

 

 「無事ですか?頭目様」

 

 放り出される寸前だった頭目の女は涙目で叫ぶ。

 

 「してやられたあああ!」

 

 そう、ザジが撃ったのは後輪だったのだ。

 

 「おおおう…ちょっと派手にひっくり返ったな、死んでないよね?」

 

 ザジは横転する程だと思って無かった様だが、タイヤが激しくバーストしたのでドン引きしていた。

 

 「交通事故って怖いな、俺達も気を付けよう…」

 

 式神鳳の火に覆われていたザジだが、実は霊力でガード出来る事を隠していた。

 

 「残念でした!ちょっと焼けた程度だよ…」

 

 式神に覆い被さったままザジは体勢を立て直す、そしてドローンの上に再び乗った。

 

 「あらよっと……せい!」

 

 プラモデルの腕を回し式神の札に剣を突き断つ、式神鳳の火も吹き消える様に消えてしまい、破れた和紙の札に変わった。

 

 「ぐえええええ!胃が!キリキリする!」

 

 横転してひっくり返った車の中で頭目の叫び声が木霊する。

 

 「頭目様!はいこれ胃薬です!応援呼んだらすぐ病院行きましょう!」

 

 部屋ごと横にながら食事するドリフのコントの様に(古いから解らないかもしれないが)含んだ水を吹き出す頭目が、涙ながらに憤慨しつつ叫ぶ!

 

 「クソガキいいいい!覚えちょれよおおお!!祓ってやるからなあああ!」

 

 魑魅魍魎もビックリな形相で頭目の叫びが虚しく響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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