第5話Regrets - 未練
5.
"知らなかった夫の顔5"
== 樋口眞奈 ==
ここのところ夫のことを極力避けてるし食が進んでないのを
感じてる夫はすごく私のことを心配している。今夜は夫の方が
先に帰っていたこともあり、ご馳走を作って待っててくれて
たくさん食べろよってやさしい言葉をかけられた。
今までだったらうれしくその言葉が胸に届いたのに今はもう
駄目だわ。白けてしまってどっちらけもいいとこ。
急に悲しみに襲われて涙が出そうになるのを止めるので必死。
読んで目に入ってきた彼らの交わした言葉の羅列が頭からこびり付いて
離れてくれない。全てにおいて連絡を積極的に取っていたのは
夫なのが、もう痛いの何のって!
女性側から誘われて誘惑に負けたっていうのではないから、よけい
腹立たしくて、なさけなくて自分の存在意義って何なのだろうって
悲しくなる。
スマホを見て夫の本当の姿を知った日から、私は毎日が苦しくて
苦しくてたまらない。夫は出張先でも親しくしている女性を呼んで
デートしているみたいだった。
ってハートマーク付きのLINEが入ってたっけ。
あーっ、思い出してイライラするぅ~。
私は寝ても覚めてもこれからの方針を決められず悶々とするばかり。
自分がこんなに優柔不断でヘタレだったとは、情けな過ぎる。
もちろん夫に問い詰めたりもしていない。
その後も夫は相変わらずいろいろと場面場面で私にやさしく気遣って
くれ、私の実家の両親にもやさしく接してくれている。辛い・・。
・・・
こんな暮らしの中で私は学生時代の友人の話を思い出していた。
大学の同級生の話を聞いていると信じられないくらい悲惨だった。
小さな子が2人もいて、同級生が風邪で寝込んでいても旦那さんは
前からの約束だからと、とっとと彼女と小さな子をふたり家に残して
スキーに行ったらしい。彼女は泣くほど悔しかったと言ってたっけ。
そしてその上彼女の夫は職場で隣の席になる女性と浮気までして
いたのだとか。
私の夫は私が風邪や体調不良で寝込んだりすると食事のことから
何から何まで、洗濯だって掃除だってしてくれる。実は氷や薬とお水
の用意までしてくれて、いつも心配そうに声かけをしてくれる。
だから゜彼女の話を聞いた時、私は恵まれているのだと実感した
んだけど、今となってはどうなんだろう。恵まれているというのは
すごく微妙だな。あの時は何て彼女は不運で気の毒な人なんだろう
って思いながら話を聞いてたけど、私も気の毒な人の仲間入り
しちゃったよ。 アハハ....
そんな風なことを考えていたらポロリと私の目から涙が零れ落ちた。
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