隠された謎と巨大帝国

夜月 朔

『帝国に隠された謎』

 <帝国暦1700年>


「全ての国が帝国の元へ降って、1700年経ちました。各地では帝国を基本とした交通の整備を行っています。」


「そのまま続けなさい。」


「はっ。」


 この帝国をたった一人で治める女王。女王は現在、各地の治安向上と交通整備をしている。


 帝国には貴族制度が存在しているが、入れ替わりが激しい。王家は貴族制度が腐敗するのを防ぐ為に数年に一回、大整理を行っている。


 その大整理が昨年行われた。家の取り潰しなどが去年から今年に掛けて行われている。


 この女王は『女帝』と呼ばれ、厳しい政策と厚い保障を国民に適用させた。決して重税は強いない。税金は基本、変化しないため国民から安定した金額が入る。お陰で財政も悪化しない。


 その巧みな政策に国民からの賞賛と貴族からの皮肉を込めて『女帝』と呼ばれるのだ。


「私は政務室へ行ってくる。」


「はっ。お供します。」


 現在でもクーデターを狙う貴族は少なくない。よって忠臣を常に隣に控えさせているのだ。


 女王は政務室へ入った。身辺警護の兵士は、部屋の前で待つ。


「はぁー大変だわ。」


 女王は政務室に入ると呟いた。


「そろそろ皇帝一人に頼る政治も変えた方が良いかしら。」


 現状の女王のみによって動いている政治は、安定していて乱れが無いのだが、政府なのである。


 前々から少しずつでも変化させようと試行錯誤を繰り返しているが、どうにも上手くいかない。どうやらこの国の国民や女王の臣下らは、女王の政治に満足しきっているようである。


 一度、政治を放棄してみるのも手ね。


 などと考える女王であった。


 女王は政務室にいつも籠る。その理由は、一人で考えたいからであり、それが女王一人に権利が集中している原因でもあるのだが、本人は気付いていない。


 治安向上と交通整備は、各地の国民に呼び掛けて手伝ってもらっている。割にあった給料も与えているから心配無いわ。後は休暇を適度に与える事ね。それも後で命じるとしましょう。


 治安向上の為に新たな組織を結成するつもりだけど……国の組織とするか、それとも独立組織とするかだけど……。流石に出来たばかりで独立は無理よね。最初の数年は、国の指揮の元……要するに私の指示で動かさせましょう。


 治安維持組織の名前は何が良いかしら。……それは私が考えるより組織の人達に考えてもらいましょうか。


 さて、これで今の政策の今後の方針は決まったわ。いつものように過去の資料を読むとしましょう。


 女王は政務室に籠り、政策方針を立てると過去の王家の資料を読むのだ。温故知新を大切にしている。


 これは、お父様の時代の資料ね。帝都を中心に進めた改革だったわね。クーデターが起こって大変だったと聞いたわ。急速な革新もダメだという事ね。失敗には学ぶべき事が沢山ある……ね。これもお父様の受け売りだわ。


 次は……これは?……私の曾祖父様の時代?まだ見てなかったわ。見てみましょう。


 女王の曾祖父の時代。これは時代の転換点ターニングポイントであった。腐れきった貴族制度を改革する為に反対派を押し切って、新貴族制度を確立させた。


 この新制度には、貴族からの猛烈な反対があったが、時の皇帝は聞き入れなかった。だが、この新制度は、国民に大いに賞賛され、貴族らも引くしかなかった。


 但し、それは表の話である。裏では、貴族達の指示した暗殺者アサシンの者が皇帝を常に狙っていたのだ。


 時の皇帝は一人も身辺警護を付けていなかった。この理由は国民にも知れ渡っており、そう簡単に暗殺者アサシンも手を出せないのであった。


 その理由とは、単に皇帝が魔術と武術に長けていた、という理由だ。武術による稽古で手に入れた反射神経は、暗殺を職とする暗殺者アサシンにも匹敵し、多くの暗殺者アサシンが返り討ちにされたのだ。


 返り討ちにされた暗殺者アサシンの中には、当時の名の知れていた実績のある暗殺者アサシンも多くいた。


 これらを撃退した皇帝は、その指示した貴族を己の<精神魔法>で暗殺者アサシンから聞き出し、罰したのだった。全員が全員、終身刑という訳ではなかったが、ほぼ九割は終身刑にされた。


 これにより、現在の王家の権力はさらに盤石なものとなった。


「────現在の王家の体制を作ったのが、私の曾祖父様と言う訳ね。」


 勿論、女王もこの話は聞いたことがあったが、詳細は知りえなかった。この話を聞いたのが、皇帝になる前だったからである。


 女王は、毎日政務室にいる時間があるが、流石に第45代皇帝である彼女は、44代分の政策を覚える事は出来ない。だからこそ、毎日政務室に行くのだ。


 今日は次の資料で最後にしましょう。


 こう思った女王は、資料が置かれた棚を見て行く。すると、資料の中から落ち掛けている一枚の報告書レポートがあった。


 ……これは?


 それは、について書かれたものであった。


 今から23代前の皇帝。第22代皇帝ね。何をしたのかしら……。


 その政策は、非公式に行われたものであり、国民の一人とて……臣下さえも知らなかった政策であった。


「 何よこれ……。」


 女王が見て驚く。その原因は、他でもないこの報告書レポートである。


 この報告書レポートに書かれた内容は以下の通りであった。


『帝国に隠された謎について迫る』

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