第24話「頼もしいですね神様!」
若干パニックになりかけていたゆうは、高速で迫る小さな影を見た。それは一直線に、ゆうに群がっていた骸骨たちの頭だけを弾き飛ばしていく。
飛び掛かる骸骨たちを相手にしているゆうにその詳細は見えなかったが、影は上空へと飛び上がり旋回し始めた。
『今だ飛び上がれ!』
「ミ、ミカくん!? たすかりましたー!!」
群がっていた骸骨たちの力が抜け、崩れ落ちた隙をついてゆうは飛び上がる。旋回していたのはミカの扱う折り紙で出来た蝙蝠だった。
「危なかったです。本当助かりました」
『いやいや迂闊過ぎだろー。それよりどうなってんだ?』
「人形付近の骸骨だけ全く動かなかったので、私が追加の囮に!」
『……っと、こっちも戦いながらなんで。ちょっと反応鈍い。悪いな』
「はい。ってああ、まずい戻り始めてます! どうしましょう!!」
『ゆう、とりあえず頭を吹っ飛ばせ! 骨が集まっているだけだから、意外と首が脆い!』
「わ、わかりました!」
ゆうは眼下、例の建物へと戻り始めた骸骨たちの前方へと降り立ち、大剣を振るう。狙うは首か頭。取り回しの悪い大剣ではやりにくいが、この形態のゆうが力の形としてイメージしたのが“勇者の大剣”で、そのまま固定されたので仕方がなかった。
『この蝙蝠は連絡用に追尾させとくぞ。さっきの攻撃でだいぶ摩耗したから、手助けは期待しないように!』
「は、はい! そちらは大丈夫なんですか?」
『いや結構……、押されてる。数が多過ぎる。人形の接触はまだかー!』
ゆうの振るった大剣は先頭横一列の骸骨を打ち砕く。個体差や姿勢の差はあったが、首や頭を砕かれた一群は力なく崩れ落ちた。一体一体を狙うのではなく、群れのだいたいの頭の位置で横一閃が良いようだ。
再び飛び上がったゆうは宗たちとは反対側に降り直し、大剣を振るいながら少しずつ後退していく。
この骸骨たちはミカの囮にも、建物の外に立った自分にも食いつかなかった以上、人形の異変を察知したら戻るかもしれない。そう考えたゆうはなるべく距離を離そうと行動していた。
そのゆうの行動を上空で観測し、全体を俯瞰する目となっていた蝙蝠たち。その情報を頭で受け止めてパンクしそうになっていたミカは、一時的に情報を遮断した。
戦闘中にやるものじゃない。もう少し意識して訓練しなければ危ないな、と目の前の戦闘に集中しなおす。
一度に飛び掛かってくる骸骨の数は限られるとは言え、次々に湧き出て来るうえに、吹き飛ばしたものも復活してくる。
囲まれないよう下がりながらの攻防では結界に逃げ込むほどの痛手はなかったが、振り返れば丘が見える位置まで押し込まれていた。
『ミカ、私はだいぶ回復出来たわ。無理はしないで頂戴』
「無理は、してねぇけど! 数が多過ぎ。あと、向こうもうまく行ってないみたいだ。ここでこいつらが引き返しちゃまずいでしょー」
『……ああ、これが正念場という奴なのね。本では知っていたけれど、はじめて実感できたわ』
「いやアオ、こっち真面目に戦闘してるんで。そういうのは勘弁っとあぶな!」
連絡用として飛ばした蝙蝠から、それぞれとミカとの会話は出来ている。本当は宗たちの方にも飛ばして状況を確認したかったのだが、人払いの結界に阻まれてか位置がわからなかった。
アオの方は通行許可のようなものを仕込んであるから通るのだが、その場で手軽に発動できる分、人払いの結界に細かい選別機能はないらしい。
もともと隠密行動で接触するのが目的なのもあって、下手に蝙蝠で探し回って刺激してはまずいと捜索を中断していた。
とはいえ事がぎりぎりとなってくると向こうの情報がどうしても欲しい。ミカは迫って来る骸骨をナイフで捌き、海を振り回しながらも、蝙蝠一匹を慎重に進めて行った。
骸骨たちの居なくなった部屋を抜け、地下へと降りる蝙蝠。折り紙の身体を壁へと貼り付け、なるべく見つからないようゆっくりと進むその姿は、何だか虫のようだ。
「こいつは、やばいんじゃ……」
ミカは蝙蝠を通してみた光景に、思わずそう漏らしていた。
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