解説

【解説】ヘルゴランドの歴史

 今回は解説回です、というか丸々一章使って解説を行いたいと思います。ヘルゴラント王国と我々の社会、歴史を比較し、分析をするつもりです。自分の勉強(世界観の再構築、これから展開する農政、そしてジャガイモの普及が終わった後の魔王戦、伊藤が企てる革命)も兼ねています。恐らくこの最新話まで読まれた方は『リアルな世界観』、『筋道のたった理屈のある設定』がお好きだと思いますので考察という形で公開しようと思った次第であります。小説で描写するには余りに説明的すぎ、展開に支障をきたすだろうとも判断しました。そんなの興味ないと言う方は飛ばしてくださって結構です。


 今回はヘルゴラント王国の歴史と現状を説明しましょう。耕助の視点からは農業以外の社会の描写が不十分に終わります、耕助は政治に関わるのを避けており小説内で語るのも難しいのです。


『チグハグな世界』で耕助が悟ったように、ヘルゴラント王国の発展は現実社会と大きく異なる形で進んでいます。魔導という特権的な力をもった為政者、技術者の存在。そして技術発展によるパワーバランスの変化とそれに伴う争いを予防せんとする『血の連盟』の影響を受けています。


 先ず歴史から取り上げましょう。現在の王家、鉄家御三家からなる血の連盟は当時栄えていた豪族を成り立ちとします。魔導を崇拝する宗教小国家群が大陸にひしめいていました。しかし宗教国家と言っても現実のそれとは様相が異なります。死後の世界における救済を約束しユダヤ、キリスト、イスラムとは異なり、魔導は現世における救済でしかありません。それも魔導師の体力、人数の少なさから魔導を使う機会は限られます、当然民衆が直接魔導により救われることはまれでした。従って魔導で直接民衆を束ねることは困難でした。そのため魔導を使い戦争を行い、敵国から略奪、民衆に還元することで魔導宗教の影響力を民衆に広め、統治するという統治が行われていました。民衆は魔導戦争による恩恵により、信仰を深めました。


 しかし、略奪し平民に還元、支持を獲得制度には限界があります。略奪した地域の生産能力は奪われ、再び侵攻したとしても得られる物は少なくなります。手近な地域を略奪し終えると新たな略奪先を見いだすのは困難でした。また侵攻を行っている間、防衛は薄くなり、別の豪族や蛮族に襲われるリスクも高まります。また魔導を使用した戦争は被害も甚大であり、マンパワーはどんどんと減っていきます。国家が安定して栄えるのは困難な時代でした。


 この欠陥を先んじて察知したのが血の連盟の豪族です。当時、最も栄えていた彼らは今後の衰退を予測し、魔導宗教、収奪戦争に頼らない政治制度の確立を目指すことになります。彼らは同盟を結び、統一国家の建国を誓いました。ちなみに王家はくじ引きで決まりました。


 魔導の世俗化、小規模な独立国家を束ねることで平和な世界を生み出すことを目的に、血の連盟は統一戦争を繰り広げました。作中のヘルサの説明の通りです。



 統一戦争は世界の転換期となります。アノン家が異世界より召喚した鉄を用いた強力な軍勢と同時に、小国の各個撃破、連盟におもねる貴族への優遇政策の約束が決め手となります。

 優遇政策とは鉄家、青銅家、金家の序列において青銅家の地位の約束です。

 青銅家と金家では王家への納税、与えられる荘園、要職への登用などで格差があります。更に、戦争が横行していた当時、青銅の武器を得られるという魅力は捨てがたいものに映りました。統一国家建国後も戦争が続くだろうと予測したのです。

 血の連盟が小国家群を順々に討ち滅ぼし、その戦力を知らしめると青銅家として血の連盟に加わる貴族が増えました。小国家の君主は魔導を使う聖職者であると同時に為政者でもあります。宗教を捨て、政治を重要視するものは青銅家になる事が今後の安定をもたらすと判断したのです。青銅家を迎え血の連盟は加速度的に勢力を伸ばしました。



 統一戦争は血の連盟の勝利に終わります。無論、小国家群も同盟を結び対抗した勢力もありました、が違う宗教を信仰する者同士ではうまく協力ができず破れました。血の連盟は敗者を死か、金家として従属するか迫りました。魔導の力を滅ぼすのにはためらいがあったのです。作中で述べたように未来視の魔導国家は死を選びました。しかしそういったケースは少なく、金家として王家に仕えることとなります。そして王国が建国、豪族達に貴族と領主の地位を与え封建制度を敷きました。内戦を禁じ、魔導の世俗化を実行しました。建国初期は青銅家の一部が金家を襲いましたが、鉄家による武力介入を受け敗北しました。今回はヘルゴラント王国の建国の歴史を振り返り、終わりとしたいと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る