【解説】技術と社会制度

前回はヘルゴラント王国建国の歴史を解説しました。今回は社会制度や技術にフォーカスしたいと思います。


万人が使える工業、科学技術の発達はパワーバランスの維持を目的とした勅令により制限され、一見するとヘルゴラント王国は中世に近い世界に留まっています。しかし、魔導という便利なツールが発達、発明の必要性を低下させていることも忘れてはなりません。支配階級は魔導の使用で技術革新を必要とせず、一般階級は技術の発展を禁じられている状況です。

技術発達の抑制は貴族にとって都合の良い制度でもあります、魔導の力で平民を押さえつけることができ、安定した支配体制を確立できます。魔導宗教信仰による民衆の求心から魔導を使った圧政に姿を変えました。農奴階級にとってこれはあまり喜ばしいものではありません。ヘルゴラント王国の平和は農奴の犠牲の上になりたって言っても過言ではないでしょう。


政治という面から見るのであれば王から与えられた領地を貴族が治め、農奴による賦役が収入源という統治制度です。これは地主小作人制度への資本制、貨幣経済の発達を阻害しています。耕助が導入しようとしている自由農民制は地主制度への転換でもあります。伊藤は地主制による農民の不公平感を利用し革命を起こそうと画策しています。


貨幣の利用頻度は低く、都市部でしか流通していません。転移魔導により物流網が整備され、貨幣の発達を待たず、高度な物々交換が主流になった為です。貴族は賦役による収入が主ですから、貨幣の価値は低いのです。更に付け加えるのであれば貴族が身分により所有できる金属が限られるという事も配慮にいれるべきでしょう。鉄が高価であると同時に鉄家でしか所有できません。貴族の大半を占める金家は鉄の所有を禁じられており、安定した価値を持つ硬貨を生み出すこができません。

この世界では魔導の源となる魔導波を閉じ込めた石が貨幣です、転移魔導をつかった商人が主に用い、都市間の流通を担っています。


もっとも都市は限られています。領主による城塞の建設は禁じられ、城下町というものが存在しません。これは内乱を防ぐための政策であると同時にスミナの輪作の禁止など農業生産が抑えられた結果商人、職人といった町人を支えるだけの食糧がないのも原因です。


言ってしまえばヘルゴラント王国は『どこも農村』なのです。領主は自分と騎士団の編成の為食糧確保には熱心で、鉱山や特産品を有する領主以外は農奴の確保を主要目的としています。血の連盟による平和の強制により、領地拡大を目指せぬ領主にとって現有の土地でいかに収益を上げるか、そして政略結婚による序列の向上が繁栄の道です。但し、品種改良などの技術は未発達、輪作を禁じられた状況では農奴の酷使が手っ取り早い政策になります。


農業以外に必要な産業、例えば鉱山、鍛冶集団、貴族に重用される陶磁器の産地などは都市を築く傾向にあります、食糧は領主による現物取引と貨幣による購入に頼っています。

因みにアノン家は飛び地で鉄鉱山を占有しています、ハニガンドと言う名です。鉄は血の連盟よる諸国統一に際し異世界召喚されたもので、ヘルゴラント王国が自然に有するものではありません。

鉄鉱山ハニガンドは一大工業都市です。また同時に諸侯の占領を防ぐ為、城塞化されています。統一戦争において他領主の占領を防ぐ為、四方を山に囲まれた僻地に召喚されました、後に述べる転移魔導を有効活用し物流網を確保しています。


そして社会、技術の停滞による平和の強制、ざっくりとした社会の説明をしました。長くなっても読みにくくなるだけなので一旦ここで区切りとします。次回は軍事と兵站、食糧について解説したいと思います。

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